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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第一章 バイト戦士と私の王子様
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ページ40 祝詞と浄化の光

 沈黙。


 その呪文には聞き覚えがあった。


 ゆっくり頭上を見上げる。


 そこには満天の夜空に巨大な魔法陣があり、そこから突き抜けて来る校庭にあるサッカーのゴールポストぐらいの大きなの大岩が、大気を切り裂いて目前にまで迫っていた。


 ふ、ふざけんな!!


 オレ達まで巻き込む気かよ。


「ノエルッ掴まれっ!」


 オレはノエルに手を伸ばした。


「ぎゃあああああああああああああっっ」


「シャドウウォオオオオオオオオオクッ!」


 オレとノエルの叫び声が木霊する。


 ノエルを抱きかかえ、影の中に逃げ込んだ。


 次の瞬間。


 ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴオオオオオン。


 ──台地が揺れた。


 激しい衝撃波は小学校の窓ガラスを粉砕し、校庭の木々が仰け反る。


 そして、校庭の傍で一人の男が仰向けに倒れた。


「短剣使い、後は任せた……」


 オレとノエルはその少し離れたところで影から姿を現した。


 目の前には焼け焦げて蒸気を上げる大地と膝をつき、満身創痍のテーバイの姿。


 たった今までそこにいた大量のスパルトイ達は、見る影もなく文字通り散りとなって消え失せていた──。


 そして、隕石の直撃を受けても、尚も生き残っているテーバイはさすがボスモンスターというべきか。


「後は任せたじゃねーよ。オレ達まで殺す気かよ?!」


「生きてるではないか」


 はっはっはと笑うウィザード。


 こいつ、後で覚えてやがれ……。


「ノエル、ここに居ろ」


 そう宣言したオレは一歩踏み出した。


 ここまで来れば後もうひと押しだ。


 ──その時だった。


 ダッダッダッ。


 どこからともなく足音がした。


 一人じゃない。複数人だ。それも多い。


 ──新手?!


 オレもノエルも身構える。


 一瞬ヒヤッとした後、顔を出したのは迷彩服を来た人間(・・)だった。


「おーい、影山くーん」


 その中の一人、青井さんがこちらへ手を振りながら駆けて来る。


「愛もいるの!」


 ノエルが手を振り、それに気づいて左雨さんが振り返す。


「よかった無事だったか、凄い地震だったな」


「ど、どうしてここに……?」


 オレが驚いていると青井さんが苦笑した。


「偵察の割りに戻りが遅いから、左雨くんが様子を見に行くと聞かなくてね……。一人で行かせるわけには行かないから、ある程度戦力を残して様子を見に来たんだよ」


「愛ぃ怖かったのおおおおおおおお」


「ええ?! 何があったのノエル?」


 左雨さんに抱き着くノエル。


 一人であれだけ大量のスパルトイに追い回されたらトラウマもんだよな。


「それでさっきの隕石はいったい何だったんだ」


「青井さん、話は後です……」


 オレは視線をテーバイにやる。


 未だにまともに立ち上がれず、剣を杖代わりにしてよろめいていた。


 青井さんも頷く。


「オレが止……」


「私がやりますっ」


 え?


 オレの言葉を遮って、ノエルの頭をポンポンッと叩いた左雨さんが声を上げた。


「うん、僕もさっき聞いた左雨くんの攻撃魔法とやらを見てみたい。撃ち漏らしたら影山くん、頼むよ」


「え、あ、はい……」


 左雨さんからノエルを引きはがし、気合いを入れる左雨さん。


 ふんす! と可愛い声が聞こえて来た。


「待てッ。そこな魔法少女よ」


 あ、居たんだ。


 というような、みんなの視線がウィザードに注がれる。


 ウィザードは大の字で仰向けになったまま、左雨さんに告げた。


「何でも良い、祝詞を唱えるんだ」


「祝詞、ですか……?」


「あぁ、魔法の力が格段に跳ね上がる」


 マジか!


 さっきのはただの厨二病じゃなかったんだ。


 ごめん、実はあんまり期待してなかったとか言えない。


「う~ん、恥ずかしいけど、やってみますっ」


 左雨さんは少し頬を紅くして答えた。


「すぅ~~~~~~~~~はぁ、よしっ」


 大きく深呼吸した左雨さんが一瞬オレの方に振り向いてニコリと笑った。


 こちらも頷いて合図する。


 オレの心の準備も整った。


 魔法少女愛ちゃんによる初の魔法演唱だ。


 これはオレも耳に焼き付けておかなくては──。


「現世を迷いしその魂」


 涼やかな唱が夜の風に舞うように始まった。


「聖なる光の導き手よ」


 先ほどのウィザードの時と同じように、辺りから冷気が集まって来る。


 この感覚が魔力の高まりなのだろうか……?


「在るべき場所へ還り賜え」


 テーバイの頭上に魔法陣が現れ、左雨さんが最後の呪文を告げる。


「ターンアンデッドッ!」


 天から降り立った聖なる光が、魔法陣を突き抜けてテーバイに降り注ぐ。


 その暖かな光は大きく広がっていき校庭全体を包み込む。


 それはまだ残って居たのかもしれない、スパルトイ達の人間だった時の魂も一緒に浄化していった気がした。


 どうか彼らに安らかな眠りを与えんことを──。


 光が去った後にはテーバイの姿はどこにもなかった。


 パタン。


 遣り切った顔で倒れる左雨さんにオレは声を掛けた。


「お疲れさん」




 ◇




 高校の校長室で一人、夜の月を見つめる人影があった。


「人は一人では生きていけません。仲間と協力し、互いに助け合うことで人は成長して行くのです。彼らはまだまだその成長過程、……励みなさい若者よ」


「理事長、青井氏より無線が入りました。モンスター討伐、成功だそうです」


「ええ、そのようですね」

ウィザード「ふはっはっはー、我の活躍はどうだったかね?」


影山「どう考えても過大戦力だろ。遺骨まで散りにしやがって……」


ウィザード「フッ、愚か者め、我が力にひれ伏すがいい。メテオストライク!」


影山「ちょ?! 上、上ッ?!」


ウィザード「ふはっはっはー、主人公の座は頂いたぞ! 我の活躍が気になる者は『評価』と『ブックマーク』をクリックするがよい」

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