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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第一章 バイト戦士と私の王子様
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ページ37 スパルトイ

 昼過ぎには、今度は篠崎さん達の班が巨大カメを発見し、オレとノエルがデリバリー戦力として駆けつけ、これを撃破した。


「おー、だいぶ出来上がって来たなぁ」


 屋上から見える校庭の姿はすっかり変わってしまっていた。


 空が夕焼けの茜色に染まり、建物の最終点検が行われている。


 とは言っても、青井さん曰く、水道もガスも電気も引く必要がないので本当に組み立てて置いただけらしい。


 トイレは校内で済ませるし、食事は食道で、風呂もシャワー室で事足りてる。


 ただ、完成後は付近の小規模避難民を集めてまとめて管理するらしい。


 各地に散っている自衛隊の人を一カ所に集められるから、人手も増えて効率がいいらしい。


 今はご飯や掃除などは、遠藤先生(スズちゃん)を始めとする先生達が中心となり、生徒が当番制で頑張ってくれている。


 ただ、今後避難民が増えて来るとなれば色々問題なども起きやすくなる。


 そういった点をどうするか現在理事長達と検討中だそうだ。


 ちなみにオレ達No.4のメンバーは、他の学生がやらされている雑用は免除されている。


 その分、戦力として期待されているからだ。


「今日はよく働いたし、腹減って来たなぁ。今日の晩飯は何だろう……」


 ぼんやり暗くなりつつある空を眺めて居ると、ふと路上で何か動くモノが目についた。


 今のオレの視力は結構高いと思う。


 測ったわけじゃないから詳しくはわからないけど、眼を細めるとかなり遠くまではっきり見ることができる。


 これもゲーム世界のステータスのおかげだろう。


 オレは学校をぐるりと囲むフェンスの外、細くて動くモノに目を凝らした。


 …………!


「スパルトイだ! まずい、校門に向かってる」


 スパルトイは、人型の骨でできたアンデッドモンスターだ。


 強さはゴブリンより少し強いぐらいの雑魚。


 それでも一般人には充分脅威になりうる強さを持っている。


 校門にいる二人の見張りはまだ気づいていない。


「おーーーいっ!! モンスターだあああああ」


 ダメだ。気付かない。


 オレは校門へ向かって屋上から飛び降りた。



「うああああああああああああっ」


 ドサッ。


「「うお?! なんだなんだ?!」」


 怖ェ。


 だいぶ慣れたとは言っても、屋上から一気に地面に降りるとやっぱ焦るな。


 登りより落ちる方がよっぽど恐怖あるわこれ。


「い、今空から降って来たよな……?」


「お、おい、大丈夫か?」


「あぁ、驚かせてすみません。バイトの影山です」


 軽くお辞儀をする。


「なんだ、バイトくんか。モンスターかと思ったぞ」


「あははは、すみません。あちらからスパルトイが来てます。オレが片付けて来ますので周囲の警戒をお願いします」


「うわっ、が、骸骨が動いてる?!」


「……わかった。三佐には連絡をしておく」


「よろしくお願いします」


 踵を返してオレは駆け出した。


 校門からは一本道の細い通路が長く続く。


 その先の十字路からスパルトイが2体こちらへ歩いて来ていた。


 武器は持っていない。丸腰だ。


 オレはその2体に駆け寄り、サクッとみぞおち辺りを蹴り飛ばし、あっけなく崩れた(・・・)


 カタカタカタ。


「──なっ?!」


 見ると崩れた骸骨が勝手に動き出し、骨同士がくっつき出したのだ。


「おいおい、嘘だろ……」


 くっついた骨が次々と繋がっていき、元の人型に戻る。


 立ち上がった2体のスパルトイを再び蹴り飛ばし、周囲に骨が散らばる。


「ダメだこれ、キリがない」


 どうすっかな。


 一匹一匹はそう強くはない。


 ただ、死なないのだ。


 それにしてもこの骨、よくできてるなぁ。


 まるで本物の……。


 そこまで考えて、オレは連想した。


 午前中に見たあの骨の山のことを──。


 嫌な予感がする。


 第3ラウンド目で立ち上がったスパルトイ達を再び蹴り飛ばして、オレはいったん校門に戻った。



「とりあえず、これでよしっと」


 校門に戻ったオレは、見張りの二人からロープを借りて来て、スパルトイの骨の部位をまとめて縛り上げた。


 カタカタカタ──。


 縛られた骨はどうにかもがいているように見えるが、まぁこれなら人型に戻れまい。


「なぁ、これどうすんだ……?」


 不気味そうに骨を見つめる隊員さんにオレは笑顔で告げた。


「オレちょっと青井さんのところに行きますので、しばらく見張ってて下さい」


「「え?!」」


 顔を青ざめる二人。


「無理無理無理っ。俺こういうの苦手だから、田中頼むぞ」


「ダメですって先輩、俺はすでに腰が抜けて動けません!」


 何やら楽しそうな会話をしている二人を残してオレは職員室に急いだ。



 がらがらがらっ。


 職員室のドアを開けて叫ぶ。


「青井さんっ!」


「あぁ、早かったね、連絡は受けてるよ。スパルトイが出たんだって?」


 会議でもしていたのか、職員室の中には自衛隊の人が何人も居て、篠崎さんや菊池さんを始め、知ってる顔もちらほらいるような気がする。


「はい、ただ普通のスパルトイじゃないみたいなんです」


「と言うと?」


「何度倒しても死なないんです」


 青井さんが眉間に眉を寄せた。


「今までのモンスターは倒すと黒い霧となって死体を残さずに消え去っていました」


 青井さんを始め周囲の人達が頷く。


「ですが、今回現れたスパルトイは倒すと骨がばらばらに崩れて、その後独りでに骨同士がくっついて元の人型に戻るんです。ゲームだった頃はこんなことはありませんでした」


「そんなのどうやって倒すんだよ?!」


 一人の隊員さんが声を上げた。


 周囲に不安の色が広がっていく。


「とりあえず、校門に現れた2体は、人型に戻れないようにばらばらの状態で骨をロープで縛って見張ってもらってます」


「行動不能にはできるというわけか」


 青井さんがマスクに手を当てて呟く。


「あの、質問なんですが……」


「うん? 気が付いたことがあれば何でも言ってくれ」


 オレは胸の内に芽生えた不安要素を思い切って聞いてみた。


「小学校で見つけた遺骨ってもう回収済みですか?」


 青井さんがハッとした顔をして頭を抱えた。


「あー。なるほど、そこに繋がるのか……」


 そして、オレの疑問に答えてくれたのは青井さんの隣にいた菊池さんだった。


「バイトくん、すまない。……実は、仮設住宅の設置やら掃討戦に人手を割いた為に、遺骨の回収は仮設住宅の設置が終わった明日の午前に予定していたんだ」


 最悪だ。


 もし、あの骨の山がほぼ無敵状態で動き出したら、さすがにオレ一人では手に余る。


「僕も間違いないと思うが要約すると、校門に現れたスパルトイはただのモンスターではなく、何らかの影響で動き出した遺骨ではないかということだね?」

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