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「「本当にすまなかった!」」
「「「「え?」」」」
今、オレ達の座っているパイプ椅子の通路側、ノエルの向こうでは先ほどまで青井さんの背後で立っていた二人の自衛隊員が土下座をしている。
テントの中とは言っても病院の駐車場に立てられただけの地面はまんまコンクリートだ。
とても硬くて冷たい。
そこに大の大人が二人も額を地べたに擦りつけている。
話をしていたオレ達4人を置いてけぼりにして……。
唐突過ぎる言動に青井さんを始め、オレ達はぽかんと口を開けていた。
「青井三佐は、ここに来るまでに九州のいくつもの協力者を回り、不慮のケガや親御さんの拒絶などにより、そのすべてが失敗に終わりました」
「皆さんもご存じの通り、今現在日本中……いや、世界中で今この時、この瞬間にも多くの者がモンスターに襲われ命を落としていますッ!」
大柄で年配の隊員の言葉を若い隊員が引き継ぐ。
この二人は元々この病院で防衛戦をしている隊員ではなく、青井さんの部下として共に行動している精鋭の隊員らしい。
「大型モンスターを討伐したという絶大な戦力を持つ若者を、我々は何が何でも協力者として確保しなくてはならなかったのですッ!」
「そのためには多少泥を被る覚悟で、そちらの少女を引き合いに出してでも、断れなくする必要がありました」
今度は若い方の隊員の言葉を年配の隊員が引き継いだ。
お、おぉ……。
打ち合わせなしの息ぴったりの掛け声に震え上がるオレ。
これが鍛えられた精鋭……。
「お、お前達……」
部下の勝手な行動に青井さんが感極まった声で立ち上がり、すぐに二人の間に座った。
「影山くん、左雨くん、そしてノエルくん! 我々の事情とは言え、護るべき国民、しかも将来ある若者に半強制的な頼みをしなければならない自分達の不甲斐なさは重々承知している。卑劣な手を使ったこと、本当にすまなかった」
恥も外聞もかなぐり捨てて額を地面に擦りつけた。
「そして願うならば、日本を、世界を、どうか救ってほしい!」
その言葉に、オレ達は顔を見合わせて立ち上がった。
「「「よろしくお願いします!」」」
◇
「本人の了承を取れたところで、未成年なので一応親御さんの了承も必要になるんだけど……、無事は確認できているかい?」
少し今更な気もするが大事なことである。
「オレは眠っている間に連絡があったそうで無事みたいです。今は連絡手段はありませんが、まぁ基本的に自由にさせてくれるので大丈夫だと思います」
「私も停電前に連絡は取れました。反対されるかもしれませんが……、その時は何とかします!」
言葉の途中でノエルをチラリと見た左雨さんが力強く答えた。
「そうか……、すまない。」
青井さんも再び先ほどのやり取りを思い出したのか、もう一度謝ってくれた。
「では、二人の親御さんとは再開できた時に改めてということで、なるべく早く再開できるように尽力を尽くさせてもらうよ」
「「よろしくお願いします」」
こちらのことを色々汲んでくれて、部下の信頼も厚い、そして行動として自らもいち学生のオレ達にまで頭を下げてくれた、この人は信用しても大丈夫だろう。
そう思ったオレはポケットからある物を取り出した。
「青井さんこれを……」
「これは……、魔石だね」
手に取り、光に翳す青井さん。
「はい、昨日倒したモンスターから出た物です。何かに使えるかもしれないので調べてもらえないでしょうか」
「東日本支部ではいくつか確保されているが、西日本では初めてだ。わかった。技術班に回しておくよ」
青井さんはニコリと笑ってそう言った。
オレが持っていても仕方ないしね。
「では、僕からはこれを──」
青井さんが鞄から黒い布を取り出し、オレ達の前に並べていく。
生地は警察の日章のマークと『ZERO NO.4』と記されていた。
「この腕章は、ゼロの協力者と認められた人に支給される物でNo.4という数字は、君達が4番目の協力者またはチームということを示している」
それぞれ手に取って左腕に取り付けた、安全ピンに戸惑っているノエルの分は左雨さんが付けてあげた。
「ちなみに先に協力者となった3つのチームは、東日本担当で全員が関東にいる。これはプレイヤーの人口が関東圏にだけに密集していることが理由なので仕方ないけど、西日本では君達が初めての協力者だよ」
オレがゲームをプレイしていた当時で1万人ほど居たのを考えるとあまりの協力者の少なさに青井さんの苦労を垣間見た気がした。
そして、青井さんがにこやかに宣言した。
「それじゃ早速で悪いけど、準備が出来次第ヘリで君達の学校へ移動するよ」