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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第一章 バイト戦士と私の王子様
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ページ17 パンに罪はない

「き、気持ちわっ、うぅ……」


 両手で口を抑えるオレを尻目に。


「わあああ! 鉄の塊が空飛んでるの!」


 オレの左隣の席で子供のようにはしゃぎまわるノエル。


「ノエル、あれが私達の学校だよ」


 ノエルの正面席で学校を指さす左雨さん。


 そしてオレの正面席には、スーツ姿にマスクを付けた気だるげな警察官がにこやかに。


「吐いてもいいけど、こっちに吐かないでね」


 オレ達は上空1000フィート付近をヘリで飛行していた。




 ◇ ── 話は少し遡る ──




「はい、これでよしとッ」


 オレの傷口が治っていることを説明すると、看護婦さんに物凄く怪訝そうな顔をされたモノの、すぐに医者を呼んで何故かあっさりと抜糸をして新しい包帯を巻き直してくれた。


 なんかもっとこう……、厳しい追及とかがあると思った。


 チョップの嵐やでこピンに身構えていたオレは肩透かしを食らったのである。


 その後は先ほどから隣でうるさいノエルのために、朝食をもらいに再び3人でシェルターを後にしたのだった。



「アイ、このパン、中が白くてふかふかなのっ!」


「え?! う、うん、ノエルこれ付けて食べると美味しいよ」


 一人一個もらえた『ロールパン』を見て感動するノエルに左雨さんが一緒に持って来ていたポーションバターを手渡した。


「ノエルの世界にもあっただろ?」


 ゲームの世界では、安いモノだとベーグルのようなパンで少し硬く日持ちする物が主流だったけど、少しお金を出せば白くて柔らかいパンも手に入る、それを思い出したオレは質問してみたのだ。


 すると、ノエルは熱心にバターを塗りながら「ん~」と少し考えて。


「ノエルはずっと里から出たことがなかったの。ファニルが作ったパンは、はむっ、いつももぐもぐ……、硬くてはむっ…、茶色かったの」


 ファニルとは里のパン職人だろうか。


 途中から塗り終わったロールパンをはむはむかじりながら語り続けるノエルに、もうこの姿も慣れて来たなと思うオレが居た。


 初めて里の森を出て旅をしたら、『異世界』に迷い込んだなんてどこのラノベ主人公だよ!


「アイッ! このバター、里の物よりずっとはむっ美味しいの。もぐもぐ……う~ん、もう帰りたくないのぉ」


 口いっぱいに頬張ってまるでリスのように食べるノエルの顔はとても幸せそうだった。


「「ぷっ、あははは」」


 オレ達は噴出して笑い合った。


「じゃあ、オレのもあげるよ」


「あ、私のもどうぞ」


 ノエルの空のお皿に二つのロールパンが乗せられ、それを見たノエルが満面の笑みで喜んでくれた。


「わあああ、ありがとうなの!」


 まったくこんな物でそんなに喜んでくれるなら安いもんだよ。


「お食事中にすみません」


 突然の声に3人揃ってそちらに目をやると強面の自衛隊の人が一人が立っていた。


 警備などの関係で自衛隊の人達が数人単位で歩き回っているのは知っている。


 でも、こうして改まって話しかけられるとどうにも居心地が悪いというか、緊張してしまう。


 悪いこともしていないのに街でパトカーを見るとドキッとするアレだ。


「食べ終わってからで構いませんので、あちらの自衛隊本部のテントまでご足労願えませんか」


 ぽかんとするオレと左雨さんは兎も角、ノエルはまた熱心にパンにバターを塗り始めた。ノエルは通常運転である。


 その様子に苦笑しながら丁寧に隊員さんはそう告げた。


「……あ、はい、わかりました」


「ではッ」


 オレが何とか返事をすると、頷いて一礼し踵を返して去って行った。


 よく訓練された滑らかな動作である。


 ほ、本物の自衛隊員だ……!


 初めて話しちゃったよ!


 男の子なら必ず一度は、あぁいうピシッとしたカッコいいモノに痺れないけど憧れるぅ!


 オレが感激に打ちひしがれていると俯いた左雨さんがぽつりと口を開いた。


「やっぱり昨日のことだよね……」


 その隣では幸せそうにパンを頬張るノエル。


「まぁ、別に悪いことをしたわけじゃないし、大丈夫だよ」


「うん……」


 気休めの言葉に左雨さんが軽く頷く。


 オレにも不安要素があったので、本当に気休めにしかならなかった。



 画面の割れたスマホを取り出して大事そうに眺める左雨さん。


「これね、壊れちゃったみたいなの」


 自虐的に左雨さんが言った。


「そのせいで電話がまだ繋がる時に番号がわからなくて、響子ちゃんに連絡取れなかったの……」


 そうか……、古賀のことも心配だよな。


 毎日学校で合える為に、必要に感じず、オレのスマホには左雨さんと古賀の番号は登録していなかった。


 連絡することがなくても、仲の良い人ぐらいは緊急時に備えて番号ぐらい聞いておくべきだった……。


 まぁ、古賀の場合は賢いから早々にうまく逃げて、今頃はどこかの避難所に避難していると思うけどな。


 返す言葉もなく、オレは夜空を見上げて溜息をついた。


「ユ、ユウト……」


「ん?」


 震えるようなノエルの声にオレは視界を正面に戻した。


「パ、パンに付けるバターが足りなくなったの……」

ノエル「評価なんて食べれないの」


愛「ねぇノエル、有名になって書籍化されたらお金がもらえるから、そのお金でパンがいっぱい食べれるよ」


ノエル「みんな今すぐ下の『評価』をクリックするのっ!!」

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