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ログイン ~リアルのオンラインゲームは待ったナシ~  作者: ロングブック
第一章 バイト戦士と私の王子様
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ページ14 友愛の証

「ユウト、あのモンスターはどうなったの」


 落ち着きを取り戻したノエルが真剣な眼差しで聞いてきた。


 オレと一緒に戦い、自身を自衛隊が死守するバリケードの外まで殴り飛ばしたあのモンスターのことを……。


 もしまだ暴れていたり、すでに犠牲が出て居たらオレや周りの患者さん達が呑気に話をしたり、眠っていたりはしないだろう。


 そして、先ほど話したばかりの人間の(カガク)で作られた武器でも太刀打ちできなかったのだ。


 安全が確保されたことは薄々気付いているだろうが、気になるのは当然だった。


 オレは頷いて、ズボンのポケットから魔石を取り出した。


「あぁ、もう大丈夫だ。オレも左雨さんと同じでノエル(あっち)の世界の力が使えたらしい、ちゃんと倒したよ」


 証拠の魔石っぽい石もある。


 それを見てノエルが目を見開いた。


「ユ、ユウト、すごいの! あれは里の者でも20人以上で対処する狂暴なモンスターなの!」


「え……」


 20人以上?


 今度は俺が目を見開く番だった。


 こいつ、そんなモンスターに一人で突っ込んでいったのか?!


 多くの人間を逃がす時間稼ぎのために。


 死ぬかもしれないのに……。


 いや、実際死にかけた。


 はぁ、バカというか無謀というか凄いのはお前だよ。まったく。


 オレを殺す気かよ。


「私の目に狂いはなかったの」


 自信満々に言うノエル。


 さっきのドヤ顔が再来である。


 恐らくモンスターを倒したオレを見出した自分を誇っているのだろう。


 でもノエルさん、あなたの眼には炊き出ししか映ってなかったよね?


 猫まっしぐらじゃなく、ノエルまっしぐらだったよね。


 おかわりまでして……。


 ノエルがベッドの布団の上で座りなおしこちらを向いた。


 何だか神妙な面持ちで祈るように両手を胸の前で結び、静かに目を瞑る。


 急に何だろう?


 そう思ったオレ達もすぐにその雰囲気に飲み込まれ、ゴクリと唾を呑んだ。


「シュトラスの森のノエル・シュトラスが願う。勇敢で心優しき人族の二人に心より最大の感謝を、友愛の証として二人にこれを」


 そう言い、両手に一つずつ、二つのペンダントを差し出した。


「綺麗」


 透き通るアクアマリンのティアドロップが紐で縛られただけのとても簡素な作りのペンダント。


「え、いいの?」


 いきなりのことで驚くオレ達。


 ノエルは静かに頷いた。


 受け取ってよく見ると石の中に何か紋章のような物が彫り込まれてある。


 3Dクリスタルのレーザー加工されたモノによく似ている。


 でも、そんなものがあっちの世界にあるわけがない。


 まぁわからないことは魔法で解決である。


「わぁ~、嬉しい、ノエルさんありがとう」


「アイ違うの。『ノエル』なの」


 ノエルがゆっくりと首を横に振る。


 『友愛の証』つまり、友達だってことだ。


 友達に『さん』は不要。


 左雨さんは満面の笑みで「そうだね」と言った。


「よろしくね、ノエルッ」


「オレもサンキューな」


 そう言って三人で笑い合った。


「なぁにが『オレもサンキューな』よっ!」


 その直後、背後からオレの後頭部に、チョップの嵐が降り注いだ。


「いてっ、いていていて」


 ちょっ、誰だよ!


「ここをどこだと思ってるのよ、二人の意識が戻ったら私を呼びなさいよ!」


 振り返るとチョップの姿勢のままの看護婦さんが居た。


 そして止めのでこピンを放つ。


「いってェ」


「「あはは……」」


 オレ、よく考えたらケガ人なんだぞっ!


 ジト目を送るオレを無視して看護婦さんは二人に診察を行ってくれた。


「はい、問題なさそうね。3人は念の為、今日はここで一晩休んでもらうとして……」


 ──なんだろう。


 看護婦さんがオレに振り向いて、ニヤッと頬を歪めた。


 すっごく嫌な予感がする。


「困ったわ。もうベットは空いてないみたいなの。あ、でもあなた達なら大丈夫よね、うふふ」


 ワザとらしくそう言い残し、そそくさと去って行った。


 まさに台風のような人だった。


 オレ達は台風が去った後、少し呆然として我に返った。


「「ええええ?!」」


 今、オレ達が使っているベッドは2つだけ。


 左雨さんとノエルが使っているベッドだ。


 あれ、オレのは……?


 そして思い出す、看護婦さんが言い残した言葉。


『あなた達なら大丈夫よね、うふふ』


 つまり、2個のベットを『3人』で使えということだった。


 何がどう大丈夫なのか誰か教えてくれ!


 とは言っても、まだ慌てる時ではない。


 最悪、オレはその辺で毛布に包まって寝ればいいだけである。


「じゃあ、ユウトこっちに来るの」


「「え”?!」」


 ポンポンと自分の隣に空けたスペースを叩いて、何事も無かったかのようにノエルが声をあげた。


 い、いいの? いいのか?!


 オレは慌てた。


 人生初の女の子との添い寝である。


 しかも、向こうの許可は出ている。


 よ、よーし、オレも男だ!


 覚悟を決めよう。


「じゃ、じゃあ……」


 オレが立ち上がろうと腰を浮かした直後、左雨さんが頬を紅くして叫んだ。


 それもシェルター内に響き渡るほどの大声で。


「だめえええええええええええええっっ!!」


 すぐに周囲の視線はオレ達に、というかオレに突き刺さる。


 ちょ。さっきの看護婦さんが凄い剣幕でこっちに戻って来てる!


「わ、私がノエルと寝るから、影山くんはこのベッドを使って!」


 その後すぐに戻って来た看護婦さんによって、何故かオレだけチョップの嵐に合ったのは言うまでもない。

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