下 (弐)「放課後」
先輩のメールのことがつい、気になって、学校にスマホを持ってきた紅。もちろん、それは髪の色をからかう、瞬に見られてしまいー。
ああ、笑い飛ばされる・・・私の髪の色のことと同じに・・・。
「ふうん」
でも瞬はそれだけだった。
興味がなさそうに私の席から離れていった。
え・・?
「はいはいっ、授業始まるよ~」
先生が手を叩いて、みんな慌ただしそうに席につく。
一安心しながら、スマホの電源を切り、バックに入れた・・・・・。
・・・・・・・・・・
「ふう」
放課後の委員会の仕事が終わった。
やっぱり色々退屈だった。でも、頭をよぎるのはやっぱり大輔先輩のあの書き込みだった・・。
ー『全く、あの子はまんまと落としたね、楽勝だよ。』
あの子って誰ですか?落としたって何ですか?楽勝ってどういうことですか?まさか落ち葉のことを言っているんですか?・・・・
でもすべて、とうてい私には返信できなかった。
どうも、こんなことを聞けるような気がしないのだ・・・。
「紅・・・?」
「はい?」
私は振り返って、履き替えるために脱いだ上履きを持ったまま固まった。
それはー、
今悩みの種であった、泉水大輔先輩だったのだ。
メールでやり取りしていたとはいえ、あまり会っていなかったもんだから、じっくりと先輩を見てしまった。
整えられた、髪。太陽のようにきれいな光の宿っている、瞳。白く、そしてすこしピンク色の肌。
活気のある、爽やかな笑顔。
その笑顔で普通の制服が余計際立って見える。
変わってない、初めて会った時と・・。
「久しぶりだよね、こうやって会って話すの」
「・・・・・はい」
固まりながらも、なんとか返事をする。
「竹原紅」
「は、はい」
いきなり、先輩が私の正面に向き直った。
それに急に真顔になって、空気が変わっている。
もしや、あのメールのこと・・・?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・好きだ、付き合ってくれ」
「・・・え???」
私は唐突すぎて、ゆっくりと、上履きを落としてしまった。
しかし、先輩は「お願いします」と、お辞儀をしながら、手を差し出してくる。
ー本気だ・・・。
しかも、告白されるのは人生初。こんな赤髪少女に告る人、いたのがびっくり・・。
きっと、あのメールは間違いだよ・・・。
「・・・・は、はい、よろしくお願いします」
私は先輩の手を恐る恐る握った。
これで、カップル成立。
私もついに晴れて勝ち組だ・・!
と。
「ハハハハハハハハ」
乾いた、とても嫌な笑い。
何?この笑い・・・。もしや、誰かに噂されるの・・・?
でも、笑い声は正面。この昇降口には、私と先輩しかいない。
え・・・?
私は先輩の顔を覗き込んだ・・。
「先輩・・・・?」
先輩は顔を上げた。
・・・・明らかに、先輩は笑っていた。お腹を抱えて・・・。
「ど、どうしたんですか?」
「紅って面白いね」
「え・・・?」
私は落とした上履きに気が付かず、踏みながら一歩下がった・・。
「こんなに嘘の告白にひっかる人初めて見たよ」
目を丸くした。
最低・・!こんなに恋心を踏みにじるなんて・・!
こんな人のこと、好きになってたなんて・・・!
「じゃ」
先輩は、驚きのあまり何も言えなくなった、私を置いて、昇降口を出ていった・・。
・次回、最終話です!お楽しみに!