下 (壱)「スマホと先輩」
先輩にメアドを渡され、先輩とのメールを楽しむ紅。
しかしー
『先輩の成績っていくつですか?』
帰った瞬間、私は手にスマホを持ち、メールを送った。
これがもう、最近の趣味。
というか、癒しに近いかも。
・・・・メールを送ったら
「あっ、来た」
『ヒミツだよ、教えない』
返事が来る。お悩み相談室みたいで、楽しい。
今までこんなことしたことなかった。・・・友達でさえ。
そもそもこの赤髪のせいで友達なんていない。なぜか避けられていた・・・。
・・・・・・・・・・・・・・
『ねえねえ、それもしかして、最新の服?チョーかわいいね』
『ありがと、そっちこそ』
『そお?これが普通だけど』
街中で二人の女子がきゃぴきゃぴ話してた。
いいなあ・・・私もあんな風に服の話とか、話せる人が欲しいなあ・・・
一人でもいいから・・・
『あっ、待って。あの人さ、髪、赤くね?』
『あ、ホントだ~ピエロの鼻みたい』
ピ、ピエロ・・・・
必死に髪を隠した。でも彼女らの目にはもう、その髪の色は焼き付いている。
「アハハ」と彼女らは去っていった。
・・・・・・・・・・・・・・・・
本当にこの髪の色が嫌いだ。
必要はないけど、横の髪を触って、目の近くに持ってくる。
もう、この髪は切ってしまったが、また伸びている・・・。
その髪の色は前よりも、もっと明るい赤になっている気がする。
もはや、赤自体が嫌いになっている・・・。
『紅は?何点?』
『教えませんよ、ヒミツです!ヒ・ミ・ツ!』
先輩のおかげで、文字を入力するのが、とても早くなった。
話題に上手くついていけるようになった。
・・・・というか、メンバーは、私と泉水大輔先輩のみだが。
『あ~あ、もう葉が落ちてしまいましたね・・・』
中学校に入ったばかりでびくびくしていた春。そんな月日は過ぎ去っていき、もう十月。あと少しで十一月だ。自分の家の木々の周りには次々と葉が落ちていっている。
もう、大輔先輩とのメールのやり取りはとてもとてもたまっている。
先輩とも学校で仲がいい。次第に私は・・・・好意を抱いていた。
『そうだね』
それなのに・・・・・
「・・・・」
私はスマホをじっと見つめる。
『全く、あの子はまんまと落としたね、楽勝だよ。』
落とした・・・、それは恋に落ちた、そういうことだろう。
それにしても意味不明・・・。落ち葉のことを話したと思ったら・・こんなことを書くなんて・・。
「よっ、いちご」
瞬が前と変わらず、手を頭付近に添えて言う。
この学校は、スマホ持ち込み可能。かなり校則はゆるい。
いつもはあまりスマホは持ち込まないけど・・・・
「なんだよ、訂正しないのか?」
「え?ああ・・・」
私はスマホから顔を上げ、瞬の顔を見て、またスマホに目を通す。
そうだ、いつも私「紅」って訂正してた・・。
でもそんな余裕、私にもうないし・・・。
と、言いながらずっと同じ文字を見てるけど。
ー『楽勝だよ。』
この文字がずしんと響く。
それに『あの子』って誰だろう?なんだろう?
「何、見てんの?」
「うわああっ」
いつの間にか瞬が私のスマホを見ていた。・・・なんてプライバシーがなさだ・・・。
そして、私は思わず大声で叫び勢いよく、席を立ったので、教室のみんなに注目された。
・・・ちなみに今は休み時間。
みんなの冷たい視線に失笑しながらゆっくり席につく。
瞬のとの仲が小学校からでも、さすがに先輩とメールのことは言っていない。
瞬なら笑い飛ばしかねないだろう・・・・それが怖くてしょうがなった・・・。
ふう、大丈夫・・中は見ていないはず・・・
「へえ、メールしてんだ、紅って」
ゲッ・・・!
ばれた・・・。
・・・・・・・・なんで私、スマホ持っていこうと思ったんだろ・・・?
・もうすぐこの物語は最終回に差し掛かります!