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第71話 スパイ?です

身支度を終えた彼女を待っていたのは豪華な昼食だった。


「ミズキちゃんは寝起きだから、無理に全部食べなくていいからね」

「は、はい・・・じゅるり」


そうは言われたものの、目の前の宮廷料理に彼女の食欲はしっかり刺激されていた。

あの虫に比べれば診療所の食事も充分においしかったが、これは格が違う。

ミズキは手始めに、スパイスの香り漂う鶏肉に勢いよくかぶりついた。


(うんうん、元気になったみたい)


その豪快な食べっぷりにマユミは満足そうに頷いていた。

やはり子供が元気が一番だ。

そんなミズキとは対照的に、ミーアはお行儀よく綺麗に食べていた。


「こうして見るとミーアちゃんは本当に凄い子だね・・・」


そんなマユミのつぶやきが聞こえたのか、ミーアは得意げな顔で料理を取り分ける。


「はい、これマユミの分」

「ありがとうミーアちゃん、ミズキちゃんの分もお願いしていいかな」

「わかった」


マユミに言われてミズキの分を取り分けるミーアだったが・・・


「はい、ミズキの分」

「え、これだけ?」

「・・・」


不満を口にしたミズキにミーアはイラッとした。

無言でスッ・・・と取り分けた皿を戻す。


「ちょ・・・待ってよ」

「文句言うなら、あげない」

「ごめんごめん、謝るからそれ食べさせて」

「だいたいミズキは食べ過ぎ、太るよ?」

「ううっ・・・」

「こらー、二人とも仲良くしなさい」


喧嘩を始めそうになった二人を窘めるマユミ。

同年代だからといってすぐに仲良くなるものでもないらしい。


(どちらかと言うとミーアちゃんの方がお姉さん感があるかな)


まるで母親のような気分で二人を見守るマユミだった。


もぐもぐもぐ・・・

ミーアから皿を受け取るとミズキは食べるのを再開する。


(本当においしい、いくらでも食べられそうで怖いわ・・・)


三人は同じ皿から料理を食べている、ミズキを毒殺するつもりはなさそうだ。

ならばあるいは自分を丸々と太らせようという罠なのだろうか?

とろりとしたチーズがミズキの口元から糸を引いて伸びる、これもおいしい。

美味しい料理の魅力には逆らえず、ミズキは夢中で舌鼓を打っていた。


「ふぅ・・・食べた食べた、もうお腹いっぱいよ」

「ミズキお腹おっきくなってる、もう太った?」

「こ、これくらいちょっと運動すればすぐ消費できるわよ!」


そうは言ったものの、しばらく動きたくないミズキだ。

お肉が多少増えるのは避けられないだろう。


(あいつらもこれくらい料理が出来ればいいのに・・・)


心地よい満腹感の中で彼女は魔族達の事を思い出していた。

彼らの料理といえば虫の幼虫を串に刺して火で炙る程度の代物だ。

彼らには現状維持を命じてある、今もひっそりとサバイバル生活を続けているだろう。


(あいつの傷はもう治ってるかしら・・・)


ミズキを庇って傷を負った魔族・・・あれは軽傷とは思えない。

この世界には回復魔法の類がないというのは誤算だった。

これからはもっと慎重にならねばならない。

情報を集め、人類の、英雄マユミの隙を突かねば・・・


「ねぇ、ミズキちゃん」

「は、はひっ?!」


不意にマユミに声を掛けられミズキの声が上ずった。

まさにこれから隙を突こうという相手に隙を突かれてしまった。


「まだ何も思い出せないかな?」

「・・・はい」

「あ、無理に思い出そうとしなくてもいいからね」

「あ、ありがとうございます」


記憶喪失・・・名前以外何も思い出せないという設定だ。

敵側のキャラが潜入してくる場合の王道の一つとも言えるこの設定をミズキは使っていた。

これで家族の一人もいない事を始め、不審なあれこれをうやむやに出来る・・・はず。


しかしマユミは時折、まるでミズキの正体がわかっているかのような言動を見せている。

・・・うまく騙せているかどうかは自信がなかった。


「ミズキちゃん、これから私達と劇場に来てもらえるかな?」

「?!」


劇場・・・おそらく『魔王の襲撃』があったあそこだろう。

犯行現場に容疑者を呼び出して推理を語る探偵・・・そんなシーンが思い浮かんだ。


「あ、やっぱり怖いかな・・・何か思い出せるかなって思ったんだけど・・・」

「だ、大丈夫です、行けます」


ミズキの表情が恐怖に引きつるのを見てマユミは取り下げようとする。

ここで行かないのは逆に疑惑を肯定してしまうと思ったミズキはついて行く事にする。


(本当にどっちなのよ・・・)


やはりマユミは自分が魔王だとは気付いていない・・・素直にそう判断していいのだろうか。

マユミの一挙一投足を見極める必要があった。


「どうやら彼女にすっかり懐かれたようですね、英雄の人徳の賜物でしょうか」

「や、私はそんなのじゃないから・・・」


外に出ると待機していたセルビウスが関心しながらマユミに話しかけてきた。

・・・マユミを見つめながら、その後ろにぴったりとついてくるミズキ。

傍目にはすごく懐いているようにしか見えなかった。


(バルエルにやられてた雑魚騎士・・・こいつは気にする必要はないわね)


一方ミズキはセルビウスに対しては一瞥しただけで、すぐにマユミへ意識を向ける。

彼の事はあの戦いでだいたい把握していた・・・取るに足らぬ雑魚だと。


自分が雑魚認定されているとも知らずに、セルビウスは目の前の微笑ましい光景に目を細めていた。



大帝都劇場は復旧作業が進んでいた。

魔王のイビルレイによって弾け飛んだステージは真新しいものになっている。

客席の方の被害は見た目程ではなかったようで、椅子の交換だけで済むとのことだ。



「これなら練習が出来そうだね、ミズキちゃんは客席の方で待ってて」


これから歌の練習でも始めるらしい。

マユミに言われた通りに通路を通って客席へ向かおうとする。

この劇場はマユミの為に一流の職人が集まって作った、とても豪華な建物だ。

もちろんその通路も豪華で、何枚もの絵画が飾られている。


(ふーん、すごいものね・・・)


ミズキは物珍しげにあちこち装飾を観察しながら歩いた。

こういった建物は現代でもなかなかお目にかかれるものではない。

飾られた絵画も幻想的で・・・亜人や魔物なども描かれている・・・さすがはファンタジー世界だ。


(・・・へぇ、この世界にはファフニールみたいなのもいるんだ)


その中には、彼女の作品に出てくる魔物によく似た魔物も描かれていた。

マユミと思しき少女ともう一人の少女が聖剣によってその魔物を討伐する・・・そんな絵だ。


(聖剣・・・なるほどね、あの英雄様はこんな物を使うんだ・・・ってあれ)


よく見るとそれらの絵画は全体で一つのストーリーを描いた作品のようだ。

その内容は、主役がマユミに置き換わっている点を除けば・・・まるで・・・


(これ『ロリ婚』じゃない!なんでこの世界に『ロリ婚』が・・・)



マユミが語った『異世界ではロリ婚は合法です!』を元にパンプルが描いた作品。

・・・それが今、他ならぬ『原作者』の目に触れたのだった。

著作物の無断二次使用が原作者に発覚してしまいました。

果たして異世界に著作権はあるのでしょうか?

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