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第4話 生まれ変わっても声優です

PiPiPiPiPiPiPiPi・・・


目覚まし時計のシンプルな電子音が鳴り響く・・・


私、山田真弓の朝は早い。早朝からバイトがあるからね、しかたないね。

・・・とは言え、もうずっと同じような生活を何年もやってきていると、すっかり慣れてしまって「朝早い」なんて思う事はすっかりなくなっている。


・・・だが、それも「冬」となると話は別だ。


冬場のこの時間は日が昇らない・・・空は真っ暗、もはや早朝と言うより深夜だ。

そして寒い、とにかく寒い・・・おそらく一日の中で最も寒い時間なのではなかろうか・・・

こんな環境で「朝早い、どころじゃなく早すぎるだろ!」と思わずにいられようか・・・

今朝は特に寒いようで、身体が布団から出るのを拒んでいるようだ。


(まぁ布団から出られない分、冬は早めに目覚ましをセットするんだけどね・・・ってあれ・・・)


違う・・・今日はアニメの・・・「ロリ婚」の収録があって・・・バイトは休んで、いつもより遅い時間に起きるはず・・・

スタジオ入りは昼過ぎである・・・いくら万一の遅刻も起こさない2時間前行動とはいえ、けっして早朝起床ではないのだ。


(・・・この時間になんでこんなに寒いの?大雪?寒波?・・・うぇぇ・・・電車止まらないと良いけど・・・)


いざとなれば例え家から歩いてでもスタジオに行くつもりだが・・・さすがにそれだと2時間前行動でもあやしい所だ。

ともかく、まずは起きよう・・・もはや布団でぬくぬくしていて良い状況ではない。

こういう時はダラダラせず一気に、布団を弾き飛ばすくらいの勢いで起きた方が良い。

さぁ起きろ真弓、寒いのが何だー・・・


・・・


あれ・・・


・・・


身体が、動かない。


なんだこれなんだこれなんだこれ・・・


身体が・・・手足の一本すら自分の意思で動かせなかった・・・けっして寒くて布団から離れられない、なんて生易しいものじゃない。

ひょっとして、これが金縛りというやつか?心霊現象?

今までそんな心霊体験、一度もしたことなかったのに、よりによってこんな日に霊感が目覚めちゃった?


部屋の窓からは暖かい日差しが差し込んでいる・・・快晴だ

外は大雪でも寒波でもなかった。


・・・なら、この全身が底冷えするかような寒さはいったい?


気が付けば、目覚まし時計のアラームは鳴り止んでいた・・・このタイプは時間が経ち過ぎると止まるのだ。

少なく見積もっても1時間・・・真弓は一歩も動けずにいた。


本当に何が起こっているのだろうか・・・頭の中は真っ白だ、何も考えられない。

意識だけはしっかりしているのに身体は全く動かない・・・そしてまるで長時間正座をした後の足のように、全身が痺れていて感覚がない・・・

どうやらそれは身体の内部にも及んできたらしい・・・自分が呼吸出来ているのかどうかもわからない。


(ああ・・・これ、しんじゃうやつかな・・・)


事ここに至って真弓もようやく事態を察する・・・

心霊現象でも何でもなく、身体が深刻な異常をきたしているのだ、と・・・

やはり無理をし過ぎたのだろうか、でもここが頑張りどころではあった。

ただ少し、少しだけ・・・限界を超えてしまったのだろう。


(あともう少し・・・もうちょっとなのに・・・動いて、動いてよ・・・)


翌日はオフだった、そこで1日ゆっくり休むつもりだったのだ・・・なのにどうして・・・

どうしてそこまで身体が持ってくれないのか・・・


ブルルルルルル・・・携帯が震える・・・マネージャーだろうか・・・

どうやらスタジオ入りの時間になってしまったらしい。


(うわぁ・・・最悪だ・・・遅刻だけはしたくなかったのに・・・共演者にスタッフの皆さんに・・・マネージャー・・・ごめんなさい・・・)


もはや遅刻どころの問題ではない・・・ここで自分が死んでしまったら、この後どうなるんだろうか・・・


(まぁ代わりなんていっぱいいるか・・・一話もやってないなら違和感とか出ないしかえって助かったかも?)


やってる最中に倒れでもしていたらもっと大変なことになっていただろう。

・・・アニメ自体が制作中止になりかねない。

ならばこれでよかったのだ、このタイミングが一番マシなのだ。

真弓はそう思うことにした・・・もうそう思うしかない・・・もう自分には何も出来ないのだから・・・

だんだん視界が暗くなってきた・・・そろそろ「お迎え」が来るかもしれない。


(でも悔しいな・・・私、結局何も出来なかったんだ・・・)


自分の人生がまるっきり無駄だった・・・そんな絶望感を抱いたまま死んでいくのだろうか・・・


(ダメダメ、そういう事考えてたら悪霊になっちゃうよ・・・何か前向きなこと考えなきゃ・・・)


真弓の中の何かが、思考が絶望に落ちるのを食い止める・・・無理矢理にでも前向きにならないといけない・・・なぜかそんな思いがこみ上げてきたのだ。


(ええと・・・そうだお父さんとお母さんに手紙書いたのは我ながらGJだわ、きっと遺書みたいな扱いで届くよね・・・両親にごめんなさいって伝えられるのは良かったわ)


「勝手に家を出て連絡もなくごめんなさい」が「先立つ不孝をごめんなさい」になってしまったが。

・・・でもこれで両親に関しては想い残さずに済みそうだ。


(ああそうだ生まれ変わり、輪廻転生?・・・そう、これは終わりじゃない、次の人生が私を待ってる)


特にそういう宗教観を持った何かを信仰してきた事はないのだが、この際どこの神様でもいい。

生まれ変わってもう一度がんばろう・・・次はきっとうまくいくさ。


(でも私、生まれ変わっても声優になりたいな・・・また声を武器にして生きていきたい・・・出来たら声も幅があって、色々な役を演じられるような・・・七色の声とか言われてみたい)


持って生まれた声質は重要だ、また幅が狭くて出来る役が少ない、というのは勘弁してほしい。


(次こそ声優として栄光を手にする、歌の仕事とかも出来るといいな・・・ファンがたくさん出来て、ファンクラブとか自分の名前の王国とか出来たりして・・・)


ベテラン声優や売れっ子のアイドル声優を思い浮かべ・・・次こそはあんな風になるぞと強く思う。


(どこのどんな神様でもいい、お願いします・・・私を声優に・・・s・・・い・・ゆう・・に・・・)


・・・


・・・その願い、聞き届けた・・・


・・・そんな声が、聞こえたような気がしたのは幻覚だろうか・・・自身の願望が、そう聞こえたように錯覚させたのだろうか・・・




この日、山田真弓は自宅で息を引き取った・・・享年25歳。

その遺体は自宅まで呼びに来たマネージャーによって発見された。



この事がきっかけとなり、新人声優たちを取り巻く過酷な環境について、数々の物議を醸すことになるのだが・・・それはもはや別の世界の話である・・・

某王国民ではありませんが、あの声優さんは好きです。

声に幅があって色々演じられて、人気があって、王国と呼ばれる程のファンクラブ・・・真弓さんの理想はあの人だったか。


自作品で主要人物を死なせるのはこれが初めてですが、転生するのが確定してると死なせるのに抵抗感が少ないですね。

異世界転生ものは人の死に対する感覚を狂わせる悪影響が微粒子レベルであるのかも知れません(何)

ようやく次から異世界です、出てくる人物の名前を考えるのが辛いです・・・

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