目覚めてそれから2
1人と一頭が流されついたのは深い森の中の湖だった。
ユニコーンが足を動かし水を蹴りながら陸の方目掛けて泳いでいると森の奥からフードを被ったエルフが現れた。
エルフの1人が何やらボソボソと呟くとユニコーンの方目掛けて湖が割れる。
ユニコーンは地に足をつけると口に咥えていた男をゆっくり地面に下ろして引きずりながらまた陸を目指して歩く、するといつのまにかエルフの1人が目の前にいた。
エルフはまたボソボソと呟くと男はたちまちユニコーンの背の高さまで浮きエルフは男を引っ張りユニコーンの背に乗せるとユニコーンと一緒に歩き始める。
陸についたユニコーンは疲れたのかゆっくりとその場に座り込み眠ってしまう、それを見たエルフはそっとユニコーンの背から男を下ろして男に対してまたボソボソと呟く。
「・・・珍しいね」
エルフの1人が呟いた。
「まぁ、こんな日もあるだろう」
ユニコーンの背から男を下ろしたエルフがそう言ってユニコーンの背中を優しく撫でると男が目を覚ます。
エルフ二人は男から少し距離を取ると懐から杖を取り出し構えた。
男はゆっくりと目を開けて今の状況を確認した。傍らには馬、目の前には二人の人?フードをかぶっているため男にはなんの種族かわからなかったがおおよそ見当はついていた。
男は自分が一番あり得ないと思っていた異世界転移に遭遇していたのである。
男が口を開くと深いため息が出る。男がエルフの方を向き話しをしようと二人に呼びかける。
「あ〜、待った待った。」
男は両手を顔の高さまで上げ敵意がない事を伝えて話し始める。
「俺の名は【金糸 雀】だ、人間で転移者だ」
男はそう言うとエルフ二人は杖を男に向けたまま近づく。
「私は【クリア・フィルムロンド】だ」
「俺は【コルム・フィルムロンド】だ」
クリアとコルムは金糸に軽く一礼する。
「俺はこの世界の事情を知らん、良ければ教えて欲しいのだが?」
金糸が二人に説明を求めると先にクリアが口を開ける。
「その前に一つ聞きたいが良いか?」
「?なんだ?」
クリアは金糸の後ろで眠っているユニコーンを指差した。
「何故お前がユニコーンと一緒にいるんだ?」
「知らん」
金糸は即答した、現に金糸はこのユニコーンとは面識がないし見るのも初めてだ、知らない以外の回答がある訳がない。クリアは少し考えたがまぁいいだろうと思い頭の隅に置き金糸にこの世界の事を教える。