第1章「動物に好かれすぎてる男と謎の夢」9
にゃぁ〜
━━━━ん?なんだ?お腹に何か乗ってる気がする……もうちょっと寝たいのに…なんだよいったい……
「━━━って猫?なに、だれ、どこの子?」
俺の腹の上に白い猫が乗っている。猫の背中を撫でると、毛がもっさりしていて、とてもふわふわだ。
猫の種類に表したらラグドールっぽいな。鼻の辺りが少し黒いからラグドールだな、お前ラグドールか。
「なんとなくだけど、この子も精霊か?でも、なんでここに?」
…まぁいくら精霊だからといっても、猫が人間の言葉がわかるとは思えなかった。
案の定、ラグドールは、俺の質問を無視して顔を洗っている。明日は雨かな?
俺は、猫を抱っこしながら上体を起こして、足を組んでその間にラグドールを座らすと、ラグドールはそこで寝転んだ。
「お前はいったいどこから来たんだよー」
そう言いながら俺は、ラグドールの頭を撫でると、ラグドールは気持ち良さそうにしながら、もっとやれと言うかのように頭を俺の手に押し付けてくる。なんで猫ってこんな可愛いんだろうな。
それにしてもこいつの毛、めっちゃふわふわしてるし、なんかいい匂いするし、ほんとにどこの子だよ。てか、どっから入ってきたの、マジで?
「はぁ〜…これが人間の女の子だったらいいのになぁ〜…」
そんなありもしない理想を妄想しながらラグドールを撫でる。
すると、
コンコンッ
「ん?」
部屋の入口の扉から、誰かがノックする音がした。
俺は一旦ラグドールの頭を撫でるのを止めて、名残惜しそうな顔をしてるラグドールを宥めて、扉を開けようとベットを降りようとすると、
「はーい、今開けま━━」
扉が勝手に開いた。
「━━入るわよー」
「何故開いてる!?そしてなに平然と入ってきてる!?」
扉から姿を現したのは、リリアだ。
あれ?ここって男子寮だよな?え、ここの女子ってそういうの関係なしで入ってくんの?寮暮らししたことないけど、え?なんか規定とかないの?
てか鍵してなかったみたい。まぁ不用心だこと。
「どうしたリリア、こんな朝早くに?」
「こんな朝早くにって…もうすぐ学園に行かなきゃダメじゃない」
「うそ!?」
リリアが、この部屋にある時計を指さしながら、衝撃発言を言って、俺は慌てて時計を見る。
だから俺この世界の時計わかんねーだってば!!
「そうじゃなくて、ここに私の…あ!やっぱりここにいた!」
リリアは、俺のベットで寝ているラグドールを指さしながらこっちまで近づいてきた。
「え?こいつってリリアの精霊?えーと、確かワイトか。でも、前に見た時は、こんな姿してなくなかったか?」
俺が街で会ったリリアの精霊、ワイトは、確かにこんな毛がもっさーってしてなかったし、街にいた他の精霊達と、あまり変わりのない姿をしていた気がする。
「あぁ、実は精霊は、姿を三段階変化することが出来るのよ。もちろん、姿だけじゃなく、力や知能、魔力量まで様々な事が変わるのよ。前にキズキが見た時のワイトは、一段階目の状態で、今この子の状態は、二段階目ってとこね」
俺のベットで寝ているワイトを、抱っこしながら、精霊について詳しく説明してくれるリリア。
「それより、精霊の話もいいけど、早く準備しないと授業に遅れるわよ?」
「おお、そうだった!」
リリアに言われ、慌ててベットから飛び降りて、昨日もらった新しい制服に着替えながら、チラリと部屋にある時計を見る。
マジで時計の見方覚えよう。
「━━よし、準備完了!…ん?」
準備を整え、学園に行こうとリリアの方を向くと、リリアが壁の方を見ながら震えていた。
よく見たら、リリアの顔が赤くなっている。
「どうしたリリア?」
「キズキ…あなたね……私がいる前でなに堂々と着替えてるのよ!?急で驚いたじゃない!!」
「━━あ」
「あって何よ!あって!」
すっかり忘れてた。つい家の感覚で着替えちまった。
リリアは顔を真っ赤にしながら怒ってくる。まぁ確かについ最近出会った男が、いきなり目の前で着替えられたら、そうなるよな。
「…………………………………………………………………いやん」
次の瞬間、目の前にグーが見えたと思ったら、鼻が潰れた。
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「━━あ、やっと来たっすかって、どしたんすか?」
「いいえ、はぁ…別に何も…はぁ…」
授業に遅れそうになっていたから、教室まで走ってきて、教室に入ったらマリアが、俺とリリアを見て疑問を浮かべた。質問したがリリアがきっぱりと答えた。
ちなみに、顔面グーされた俺は、治癒魔術で鼻の怪我を治してもらったが、リリアの機嫌は直ってなさそうだった。
別に自分の着替えを覗かれたわけじゃあるまいしねぇ?そんな怒らなくても。ねぇ?
俺がそんな事を思っていると、リリアは自分の席にさっさと座って、俺も自分の席に着く。
「何かあったの?」
隣に先にいたサウスに聞かれた。どう答えたものかと考えたが、何も隠すこともなかったので、
「目の前で着替えたら殴られた?」
「どういう状況だったの…?」
朝の出来事を話そうとした時に、ちょうどディアルが教室に入ってきて、話を中断してホームルーム的なものを始めた。
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今日の授業は、昨日と同じ魔術の使い方を教えてもらった。
どうやら、俺には魔術の才能があるっぽくて、すぐに魔術を操れた。それでもやっぱり、今までやってきたリリアや、マリアやメアリスと違って、魔術の威力が全然違ったり、魔法陣の展開の速さが遅かったりと、これらに関してはまだまだ練習しなければならない。
魔術の練習が終わり、今は昼休憩。
この学園にも食堂があるらしく、昨日はやってなかったが、みんなが食堂に向かって行っている。この光景は、現実でも似たような光景を見た事がある。
それと、食堂の他に、お嬢様やお金持ちの人達が通うようなカフェやレストランもある。
そんな朝からの授業で疲れたみんなが、食堂に移動している時に、俺は一人で学園長室に向かって廊下を歩いていた。
俺が見ている"精霊の夢"の詳しい情報を教えてくれるという、夢バアと呼ばれる謎の人物。
その人が、今日のお昼休憩に学園長室に来てくれるらしい。
普通の"精霊の夢"は、ほとんど毎回違う夢をみるらしいのだが、俺はイレギュラーらしく、ちゃんと専門家に見てもらう必要があるらしい。
夢バアか。バアって付いてるから女の人、しかも年寄りだと思うが、いったいどんなひとなんだろうか?
やっぱり魔女みたいな人かな?それとも仙人みたいな雰囲気の人かも知れない。
そんな事を考えながら歩いていると、学園長室までやっとやって来た。…廊下が長すぎて遠い……。
俺は一旦深呼吸した。なんか校長室とか職員室とか入る時って、なんか緊張しない?なんか独特の雰囲気といか、なんというか。
そんな事を後回しにして、扉をノックする。
コンコンッ
中から「入れ」と、聞こえて、学園長室の無駄にしっかりした扉を開ける。
「━━来たか、キズキ」
俺を待っていたのは、学園長であるレディアと、
「この方が先日話した、夢バア様だ」
レディアの隣に立っているのは、
めっちゃヨレヨレで、杖をついているが今にも倒れそうなぐらいふらふらとしている、腰が直角ぐらいまでの角度で折れた、おばあさんがいた。
え〜…なんか想像してたのと違うんですけど〜……
9話です。
感想やアドバイスがあれば、よろしくお願いします。m(_ _)m(^-^)/