第1章「動物に好かれすぎてる男と謎の夢」7
授業初日━━━
キズキは、とんでもないほど大ピンチに陥っていた。それは、
「━━字が読めねぇの忘れてた〜………」
そう、黒板の字が読めない。この世界の言語は日本語ではない。その事はあの街で知ったはずだったがすっかり忘れてた。オーマイガッ
キズキは一応、元の世界での成績は優秀な方だった。テストの平均が高いだけであって全ての教科がわかるという訳では無い。
だが異世界に来たら教科自体が無かった。
あるっちゃあるが、国語とか数学とか社会などの教科ではなく、ほとんどの時間が魔術についてだった。まぁ魔術学園だしね
他は元の世界にもある体育があり、家庭もあって正直驚いた。異世界で家庭って、なぁ?
そんな大ピンチの状況をなんとか防いでいる方法はただただディアル先生が言った事を全部書いてるだけ。後はサウスに貰った紙に黒板に書かれた魔法陣を写している。
これがさぁ、ちょ〜疲れるの。わかる?わかる人いる?魔法陣描くの超大変。コンパス欲しい。なんでみんなそんなすらすら書けちゃうの?慣れ?慣れなの?あ、慣れだわこれ。
そしてサウスに教えて貰いながら大乱闘?を繰り広げている内に教室での授業が終わり、次は外で魔術の実践をするらしい。
「ついに〜魔術を使える時がやって来た〜…!」
キズキ達は芝生が敷き詰められた運動場らしき広場にやって来た。
「嬉しそうねキズキ?」
サウスがキズキに聞いてきた。
サウスはこの世界に来て初めて出来た男友達だ。オカマだけどね。授業で紙とかペン貸してくれたり、色々と教えてくれて本当に助かってる。
「そりゃ〜そうだろう?だって魔術使うんだぜ?嬉しいに決まってんじゃねーかよ〜」
キズキがニヤニヤしながらサウスに返す。
「なにキズキ、魔術使ったことないの?」
一緒に来たリリアが期待に満ち溢れたキズキの顔を覗いてくる。
「そうだよ?魔術使うの初めてっすよ?」
「そうなんすか?てっきりキズキさんは経験豊富なのかと思ってたっすよ」
マリアが意外そうに聞いてきた。
「いやいやまだ俺未経験者っすよ」
「じゃあわたくしが手取り足取り教えてさしあげますわ」
「おおほんとか?じゃあ手取り足取り教えてください」
メアリスのありがたい申し出にキズキがお願いするとリリアが、
「メアリスだけじゃなくて私も教えてあげるわよ」
「ああ、ありがとう。助かるぜ」
「なんですかリリア?わたくしだけでは教えられないと?」
「別にそんな事言ってないでしょ」
「まぁまぁお二人共落ち着いて。キズキさんも飽きてしまうっすよ?」
「飽きるって何に飽きるのよ?」
「お二人の漫才」
「「だから漫才じゃないわよ!!」ですわ!!」
「毎回このノリなんだな」
「そうね?だいたいいつもこんな感じかしら?」
サウスや他の生徒達からしたらもうこの漫才が日常になっているのだろう。そんなふうに感じる。てかぶっちゃけ飽きてるだろ
「あ、先生が来たみたいですよ」
ハイネラが校舎からやってくるディアル先生に気付いた。
「ほらさっさと並びますですわ」
「………?「ですわ」の使い方おかしくね?」
「う、うるさいですわ!」
メアリスが顔を赤くしてさっさと行ってしまった。今確実に「ですわ」の使い方おかしかったよね?
「あ〜たまに下手な時があるんすよ」
「やっぱり?」
「メアリス、昔はあんな喋り方じゃなかったのに」
リリアが呆れた顔をしていた。
「そうなの?」
「そうよ。いつからかあんな話し方になったの」
「そういえばリリアとメアリスは幼馴染みなんすよね?」
「そう、腐れ縁よね…」
「へ〜幼馴染み………」
(━━ゆずはは元気だろうか?)
頭痛が起こった瞬間に異世界への入り口の様な場所にいたから、その後の事が気にならないと言えば嘘になる。
(でも今はこの世界でやらなきゃならない事があるからな、今は置いておこう)
自分の契約精霊になる予定の精霊がピンチに陥っているのだから、今はそっちに集中する。
「━━━キズキ?大丈夫?」
「━━ん?あ〜いや大丈夫だ。行こう」
「…?ええ」
ディアル先生がもう既にやって来ていて、
「じゃあ授業始めるわよ。今回はキズキ君もいるし、とりあえず基本を復習しようか」
「「「はいっ」」」
(あれ?まだあれから二日も経ってねーじゃん)
長く感じる時間
(あーもういいよ!授業に集中しやがれぃ!)
「じゃあリリアとメアリスはキズキ君に魔術の使い方を教えてあげて。
他の人は教えてあげてもいいし、自分の復習しててもいいわ。私はちょっと学園長に呼ばれてるから、あと頑張って」
先生が生徒に丸投げした…。
「まぁいいか。学園長の呼ばれてるしな」
「よくある事だからあまり気にしない方がいいわよ」
「そうですわ。それにキズキは初心者でしょ?わたくし達がきっちり教えてさしあげますわ」
「おう!よろしくな二人共!」
「じゃあわたし達は見学でもさせてもらうっすか」
マリアがハイネラとサウスにサボるのを誘った。
「じゃあお邪魔にならないように」
ハイネラがリリア達に軽く手を振ってマリアについて行った。
「ちょっとあなた達ね〜…」
「━━━リリア」
「わっ!?アメリシアか…びっくりした…」
「キズキにはきちんと教えた方が良い」
「え?どうゆうこと?」
「キズキはいずれ大物になる。今まで魔術を使えなかったのが不思議なくらい」
「え?もしかして何か見えたの?」
リリアがそう言い終わる前にアメリシアはハイネラ達のとこ行ってしまった。
アメリシアには特別な眼を持っている。何かよく分からないけど、たまにさっきみたいに何かを言ってくるのだ。
「……まぁ、言われなくてもきちんと教えるわよ」
リリアはアメリシアの言葉を心の中に入れ、キズキに魔術を教えてるメアリスの方へ向かった。
「キズキ、魔術はイメージが大事ですわ」
「イメージっすか師匠」
「ええ、魔術を使うには魔力を使うってさっきの授業で先生が言っていたのを覚えているかしら?」
「ああなんかそんな事を言ってたような言ってなかったような」
「言ってたわよ!ちゃんと聞いてなさい!」
「すいません師匠!」
「いいですか?魔術はほぼ全てにおいてイメージが肝心ですわ。魔力は全身に流れていますからその流れを集中して魔法陣を構築するのですわ」
「おーそれは確かにイメージが肝心っすね師匠!」
「……なにこれ…?どんな関係になってんのよ…」
「それとキズキ、イメージして魔法陣を構築したら今度は詠唱よ!詠唱をする事によって魔法陣が反応し、魔術が発動するのですわ!」
「おおなるほど!全然わかりません!」
「なんでわからないのよ!?」
「いやだからなにこれ…?」
「もうリリア!さっさとこのドアホに魔術のやり方を教えてくださいな!」
「ド、ドアホ……」
「あ〜はいはい。キズキ、魔法陣を組み立てるのは自分の魔力を使って構築するの。そして詠唱を行うことによって空気中にある自然の魔力反応して、その魔力が構築した魔法陣に反応して初めて本物の魔法陣が完全するの。これを最初に覚えて。わかった?」
「わかったような?わからなかったような…」
「まぁとりあえず実践してみましょう」
「おう」
「じゃあまず簡単な…メアリス、風属性の魔法陣の絵を見せてあげて」
「わかりましたわ」
「見ててねキズキ」
「ああ」
ついに魔術が見れる。ついに見れる!
「コホン、いきますわ」
そう言ってメアリスは手を前に突き出した。するとメアリスの手の前に小さな緑に光る魔法陣がゆっくり現れ、ゆっくりと構築していくのがわかる。
「おお………」
ゆっくりと、絵を描いていくように次々と浮かび上がってくる。
「そして次に詠唱を唱える」
「"吹き飛ばせ"!ウインディ・ブレス!」
詠唱を唱えた途端に魔法陣が大きくなって、魔法陣の中央から風が勢いよく出てきて向こうにあった物が一気に吹き飛ぶ。
風が収まってきたとこで、
「…………………………………………すげぇ」
キズキは感動していた。鳥肌がもう全身に立ってる。魔術、一度は夢見た魔術・魔法をリアルで見たキズキはただただ感動していた。
感動している隣で、
「…………………………………………」
「…………ねぇメアリス?」
「…………………………………」
「どうして物が置いてある場所に魔術を放ったの?」
「……………だって…」
「だって?」
「だって風属性だから見てもわからないと思ったから………」
「なるほど…確かにわからないかもだけど。あれ、ちゃんと片付けてね?」
「………はい」
ある意味台無しになった…。
「後で俺も片付けるからさ、見せてくれてありがとうメアリス、凄かったぜ?」
「…うん」
(キャラの事は気にしなくていいのだろうか…?若干変にキャラ崩壊してる気もしないが…)
「はぁ、まぁこんな感じでほぼイメージで魔力を操ってると言っても過言でもないわ」
「魔力を操る、か…」
かっけーなおい
「でも魔術を使ったら魔力も消費するから、そこは気をつけてね。完全に無くなったら最悪死んじゃうから」
「マジか、この世界では死ぬ感じか。チャクラみたいな感じだな」
「チャクラ?」
「いやこっちの話」
「じゃあちゃんと最初から詳しく話すわね、ほらメアリスも落ち込んでないで」
「だっ、誰が落ち込んでるんですのよ!?」
「いやお前だよ」
「ほらさっきみたいに、魔法陣を構築する時とかキズキにちゃんと教えてあげて」
「わかってますわそんな事!わたくしに命令しないですださいな!」
「はいはい」
そう言って、二人は一から魔術をキズキに教えていった。
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木の影にサウスとアメリシアが座っていた。
「━━━彼がどうかしたの?」
サウスがアメリシアにそう問いかける。
「━━キズキから見たことのないオーラを感じる…」
「みた事がない?」
「うん」
アメリシアがコクンと頷いた。
「何のオーラかわからないの?」
「うん」
サウスの質問にまたコクンと頷いた。
「それと、恐らく"精霊の夢"を見てる」
「━━!男が精霊に?しかも魔術を扱ったことがない人間に?」
「うん、"精霊の夢"のオーラが見える」
「………何だか、おもしろくなりそうね」
「………」
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リリアからまた魔術について聞かせてもらい、メアリスに魔法陣の構築するのにも手伝ってもらっていると、
「……あ、ディアル先生が戻ってきましたわ」
メアリスがディアルに気付いた。
「あ、ホントだ」
「キズキ君、学園長がお呼びよ。すぐに行きなさい」
「えー」
「えーじゃない、ほら早く」
大事な用なのだろうか?
「わかりましたよ。じゃあ二人共また今度教えてくれ」
「わかったわ」「わかりましたわ」
「じゃっ!」
二人と別れて、木の影に座ってる四人に手を振って、向こうもマリアが手を振り返して別れた。
「なんだろうな?夢について何かわかったのかな?」
なんの用事か気になりながら、学園長室に向かって小走りで行った。
7話です。
ラッキースケベを入れようか悩んでます(≧∇≦)/