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第1章「動物に好かれすぎてる男と謎の夢」3



ここは何処だろう?


薄暗くて、全てが石で出来た部屋に、通れそうなのにギリギリ通れないような鉄格子がある。

その部屋にあるベットに座りながらキズキは考える。


いや、場所は大体分かってるんだけどね。

あの時にすぐに連れてこられて入れられたのがこの部屋だ。てゆーか牢屋。俺は犯罪者か何かかコラ。


「━━━なんで俺捕まってんだよ…」


何故この様な状況になったかは、今から話そう。


あれは、俺が街に入った時だった…━━━



『やっと街にとうちゃーく』


あの馬鹿でかい森を抜けて、街にやって来たキズキは見た事のない街並みに興奮を抑える。


「うぉ〜すっげぇ何これマジで異世界って感じじゃん!」


街は結構広い感じで、街の住人らしき人達が建物の前に出ているお店で買い物したりしている。


建物はレンガや石を積み重ねて建てた様な、例えばドラ○エとかのRPGでよく見る街並みだ。例え上手すぎ俺


街の中心には大きな山があり、山の頂上には城の様なものもある。


「うわぁ〜………亜人は居ないな…。この世界にはいないのかな?あ、馬車だ。む〜竜が見たかったけど仕方ないか…」


どんどん異世界の理想が無くなっていってキズキは少しショックを受けている。


「あぁ観光してる場合じゃなくてと、何かないかな?夢……って言っても分からんだろうしな…」


謎の夢。いつも『助けて』と言って来て最後は怒鳴るという一見わけのわからん夢を、街の人達に訪ねても分かるというのは少し無いと思う。


「まぁ一応聞いて見るか…」


お祭りみたいにお店がいっぱい出ている商店街の様な所で物知りそうな人を探す。


商店街の中を歩いていると、コソコソと周りがキズキの方を見て何か喋っている。


そらそうだ。だって俺今着てる服制服だし。夏服だしカッターシャツだし。

そんな見た事ない服を着た男が歩いていたらなんだ何だとなるわな。


「そこの兄ちゃん!旅の人かい!?珍しい服を着てるね!果実買ってかない?新鮮で美味しいよ!」


街を歩いていると果物屋さんのおばちゃんから声が掛かってきた。店の前の棚には見た事あるのと見た事無い果物がたくさん置いてある。

おばちゃんはりんごの緑色…ナシかな?ナシを手に持って元気な声で言ってくる。


「まぁ旅人の様な感じだけど、ごめんおばちゃん今お金持ってないんだ。また今度買ってくるからさ、ちょっと教えて欲しいことがあるんだよ」


「そうかいそりゃ残念だ。なんだい?」


「この街ってなんて名前?」


「知らないでこの街に来たのかい?この街の名前はクラウド。精霊王様が居る街でのどかな街だよ」


「精霊王?」


「そうさ、あの城が精霊王様が祀られてる城さ。この街はあの山を囲うように出来てるのさ、これは他の大陸では珍しい事なんだよ」


「へぇ〜…」


精霊王。クラウド。大陸があるのか。


てゆーかこのおばちゃんめっちゃいい人じゃん。商売人だからもっと無一文には何も教えねー的な事を言われる覚悟はあったんだけど。他の人もこんな感じなのかな?


「この街、この国、この大陸はその精霊王様が護ってくれているんだ。精霊王様には一般人は会えないんだけどね。特別な人だけが会えるのさ」


「ふ〜ん。その特別な人って?」


「魔術師と呼ばれる、特殊な力を使う人達さ」


「………魔術師…………………………………………………!」



キタァァァァァーーーーーー!!!!

魔術師!!遂に!念願の!ほとんどの人達が一度は願ったであろう魔術が!あの魔法を!操れる世界に俺はやって来たのだぁぁぁぁぁぁ!!!


もしかして俺も使えたり!?するのかなぁ!?


「ちょっと兄ちゃん大丈夫かい?変な顔して。ちょっとふらふらしてるし、少し疲れてそうだね?ほれ、このネシをやるから。向こうに椅子があるから、そこで休んでおいで」


ネシって…やっぱりそれナシだったか。


「え、あぁありがとう。じゃあちょっと休んで来る。おばちゃんありがとう。今度はちゃんと買いに来るから」


「あいよ!またおいで!」


おばちゃんの店から離れ、おばちゃんが言った通り、ちょっとした広場があった。噴水があって、たくさんの人がいた。


木下にある良さそうなベンチがあったのでそこに座ろうとすると、


にゃあ〜


「━━━ん?この世界にも猫がいるん………え、」


足元から猫の声がして、頬をキズキの足に擦り寄せてくる感覚があったので足元を見ると、元の世界にもいる猫の大きさなのだが………


「あ、赤い………」


毛が赤い。全身真っ赤。まず元の世界では見た事がない色をしている猫がキズキの足にスリスリしている。


「さ、さすが異世界…猫も違うってか」


ちょっと驚きつつも猫を撫でると甘えて来たので抱っこして、ベンチに座り膝の上に座らせた。


「うん、でも普通の猫と一緒だな」


猫を撫でると、ゴロゴロといいながら手にスリスリしてくる。


豆知識を言うと、猫は自分でかくことが出来ない所、つまり顎や後頭部などをかいてあげると気持ちいいらしい。


「ここか?ここがいいのか?ん?」


猫を撫でてると、


にゃあ〜


ニャー


にゃおー


「おっ、おっ、いっぱい来たいっぱい来た。すげーみんな色が違う」


青や緑やピンクの猫もやって来た。


「はいはいちょっと待て重い重いって」


他の猫も膝とかに乗ってきて全員に撫でてると、キズキはある事に気付いた。


「……なんか、猫しかいなくね?」


さっき見た馬は普通の馬だったが、ペットとして飼われている動物が猫以外見かけない。犬は散歩しててもいいはずだが…


「鳥もいねぇ、さっきチラッと見た肉屋に豚の丸焼きがあったからいると思うだがな…?てかあの豚の丸焼き超美味そうだったな」


そんな事を独り言で言っていると、向こうから白い猫が走って来るのが見えた。


「あ、見た事ある色」


その白い猫がやって来てキズキの膝の上に飛び乗ると、他の猫が譲ったかの様に膝の横のベンチの上に寝た。


「お前可愛いな。あ、首輪付いてる」


白猫の首に銀色で真ん中に白い宝玉のような石が嵌められた首輪をしていた。


白猫を撫でてると、


「━━━すいませ〜ん!その子私の子なんですけどぉ!?」


ピンクの髪をした女の子がこちらに走って来たと思えば、キズキの今の状況を見て驚いて立ち止まった。


まぁそうなるわな。だって日本に居る時だって男の周りに猫がいっぱい集まってたらそら一度は驚くよ。


でもそのピンク髪の女の子は信じられないものを見た様な顔をして、こちらを見ている。


「この子君の子?ほれ」


キズキが女の子に白猫を抱っこして渡そうとしたら女の子は白猫を受け取りながら、


「あ、あなた何者…?」


「え?あ〜俺ちょっと昔から動物に好かれやすい体質?でな。外に出たらこんな感じさ」


「いやこの子、その子達もそうだけど…この子達は精霊よ…?動物じゃない」


女の子からのまさかの発言に、



「━━━━━━なぬ?」



(遂に俺は精霊さえも好かれてしまう体質になってしまったのか…)


「━━━マジか。この猫達精霊だったのか。どうりで色が違ったんだな」


「━━━精霊と気付かないで撫でてたの?見たところ見かけない顔と服装で怪しいけど…本当に何者?」


「さぁな?東の方からやって来て、動物と精霊に懐かれやすい体質を持った人間に何者って問われてもなぁ」


「それ充分怪しいわよ…」


(確かにそんな気がする)


「まぁ怪しくはねぇよ。ここ(この世界)に来たのは、ちょっとやらなきゃいけなさそうな事があるからだ」


「何よその変に曖昧な理由………それにこの子達もあなたを少しも警戒しないですぐに懐いたし…」


(精霊は清い心を持たないと懐かない…ましてや男に懐くなんて滅多に無いことよね…)


「…わかった。とりあえず警戒は解いてあげる」


「警戒してたのか」


「当たり前よ。自分の精霊が他の人に懐いてたら誰だって警戒するわよ」


「そんなもんなのか」


「そんなもんなのよ」


ピンク髪の女の子がため息をつきながら、自分の契約精霊を抱っこしながら撫でている。


「そういや、自分の精霊って事は君は精霊使い的なものなのか?」


「そうよ。正確には精霊魔術師。普通の魔術師は精霊を使役しないのだけど、私達は精霊王に選ばれた特別な魔術師なのよ」


「へぇ〜そうなのか。じゃあ俺は精霊に懐かれやすいから選ばれてんのかな?」


「それはちょっとわかんないけど…あなた、名前は?」


(ここは自分から名乗るべき感じだな)


よくあるシーンで、相手に名前を聞く時はまず自分から言うのが常識じゃないかと言うセリフがあるけど、


(今めっちゃ喉まで出掛かってたけど、この場合は俺からだな)


変に気を使うキズキ。


「俺はキズキ、高橋キズキだ。さっきも言った通り俺は動物と精霊に好かれやすい」


「本当に変な体質ね…私はリリア・システルよ。よろしくね。この子はワイト、本当の姿はもっとカッコイイけど、今は見せられないわ」


「なに?真の姿があるだと?」


「あなたさっきからキャラが変じゃない?まぁいいけど…真の姿って言うか今この姿が仮の姿って感じね」


「さすが精霊だな。姿が変幻自在とは」


「ちなみにレイピア型の精霊装になるわよ」


「マジかスゲー!」


「魔術学園に行けばもっとたくさんの………あれ?」


「………ん?」


そんな話をしていると、リリアがキズキの後ろからやって来る風紀騎士団(シルフィード)の姿を発見した。


「風紀騎士団が何故ここに?」


「風紀騎士団?」


風紀騎士団は五人でやって来る。全員が女性で、それぞれ軽い甲冑を着て、腰には剣を携えている。


「………え?」


風紀騎士団はキズキの前で止まり、戸惑うリリアを他所に、リーダーの様な人が唐突に言い出した。


「━━━貴様か。貴様には我々と同行してもらう」


「え?」


「え、ちょ、キズキ何したの!?」


「いや何もしてないよ!?」


「貴様は確かリリアだったな。この男と知り合いか?」


「え?いや、その、さっき会ったばっかりで…」


「そうか、なら関係ないな」


すると、風紀騎士団はキズキを取り囲んで、


「もう一度言う。我々と同行してもらう。貴様には拒否権はない」


「人権を訴えたい気分」


「さっさと行くぞ」


「え!いやちょっと待って俺が何したって言うんすか!?」


「それを今から学園で聞くんだよ」


「ええぇ…そんな無茶苦茶な…」


「あの…」


リリアが呆然としていると、気になる事が出来たので風紀騎士団に聞いてみる。


「なんだ?」


「それは、学園長からの命令ですか?」


「そうだ」


「ならキズキ大人しくついて行きなさい」


「え!?ちょ助けてくれるんじゃなかったの!?」


「大丈夫。学園長の事だから大丈夫よ」


「何が大丈夫なんだ!何が!?」


「ほら大人しくしろ」


すると、風紀騎士団の二人がキズキの腕を掴み、無理矢理連れていこうとする。


「うわぁぁぁ!助けて!殺される!!」


「人聞きの悪い事を言うな!殴るぞ!?」


「ひぃ!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」


「あ、いやそこまでビビらなくても…」


リーダーの人が少し傷着いたが、キズキがビビって大人しくなり、連れていかれる時に、


「大丈夫よキズキ!運が良ければまた会えるわ!」


「へっ!人は生きてたらいつでも会えるわ!」


「なんで急にえらそうになんのよ…」


「俺を一体何処に連れていく気だぁぁぁーー!!」




そんか感じな事があって、キズキは今牢屋に居る。


「俺が何したってんだぁぁぁ!!?」


「うるさい!静かしろ!」


「ううーくそ!」


なんで異世界に来て早々牢屋に入れられなきゃいけねーんだよ。


大体俺の異世界転移何かおかしくない?

転移した場所がはるか上空でいきなり人生初のスカイダイビングするし。

街まで一時間、森の中を謎の青い光が案内人で歩くし。

そしてやっと街にきたと思ったらこれよ。

人生初の牢屋よ。

さすが異世界。元の世界ではそう簡単に出来ない事がほんの数時間で出来ちまうんだからな。

ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ


「…………………………………帰りたい」


ふざけた異世界転移にガッカリしていると、


「━━━おいお前、出ろ」


「………はいはいわかりましたよーだ」


人生初の牢屋から出て、風紀騎士団と思しき女性について行く。


「………なぁ、今どこに向かってるんだ?」


「学園長の所だ。くれぐれも失礼のないようにな」


「………学園長ね、なに俺転校すんの?」


「それは知らん、ただ学園長がお前を連れてこいと命令されたのだ。私達はそれを従ったまでだ」


「…」


(何故学園長は俺の事を知っていたのだろう?)


ほんの数時間前にこの世界にやった来た人間を知っているのは誰もいないはずだ。


(学園長は何か知っているのか?とりあえず会ってみるか。それで質問出来たらあの夢の事を聞こう。知ってるとは思わんが…)


キズキはそう思いながら、風紀騎士団の人に案内され、学園長室と書かれたプレートのある部屋までやって来た。頑丈そうな扉をしている。


「………わー立派な扉」


「開けるぞ」


団員の人が、扉をコンコンッっとノックすると、中から「入れ」と聞こえたので、


団員の人が「失礼します」と言いながら扉を開けた。


扉が開いて部屋に入ると、中は広くて本がぎっしり詰まった本棚が両サイドにある。

そして正面には、


「━━━ようこそ、我が学園へ」


そう言って、銀髪の女性がデスクの上に腰掛けながら言ってきた。



第3話です。

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