第5話 結婚には三つの袋、冒険には二つの袋が大事。
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『なまえ』 :しゅせんど
『ねんれい』 :15さい
『しゅぞく』 :にんげん
『いのち』 :10(HP)
『せいしん』 :10(MP)
『たいりょく』:1(体力)
『じきゅう』 :1(持久力)
『ちから』 :1(攻撃力)
『まもり』 :1(防御力)
『かしこさ』 :1(魔法攻撃力)
『すばやさ』 :1(素早さ)
『せっとく』 :1(説得力)
『こうしょう』:1(交渉力)
『こうかんど』:1(好感度)
『あい』 :1(愛)
『しんこう』 :1(信仰)
『ていこう』 :1(抵抗力)
『みぶん』 :じゆうみん(身分、自由民)
『すきる』 :なし(スキル)
『そのた』 :なし(その他)
『もちもの』 :ぬののふく、はんずぼん、かわのくつ
『おかね』 :490イェン
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さて、これからの金策と先の予定だ。
シュセンドは目的地への道すがら、また考え始めた。
全うにやると決めてはいるが、まずは楽しくやろう。ゲームは楽しまないとね。
小目標は序盤の1500イェンで実行出来る”とあるイベント”だ。
このイベントはRPGではおなじみの”討伐イベント”、”おつかいイベント”、“わらしべイベント”に次ぐ序盤の要、”護衛イベント”の準備資金だ。
とは言え、序盤でこのステータスだ。”護衛をする”のは絶対に無理だと俺自身が保証する。”護衛をしてもらう”のだ。
1000イェンで”ある人物”にキチユシティまでの護衛を頼む。
100イェンで物を仕入れ、400イェンは自身のステータスをあげる準備金だ。
売値は50倍の5000イェンの予定。”大貧民”モードだから売値がその半額としても2500イェンか。仮に目当てのものが売れなくてもキチユシティには儲け話が山程ある。そう、山程だ。その全てが空振りと言うワケが無いだろう。
一つ問題があるとすれば、期間だ。一応、時限イベントであるため、迅速に行動するに越したことはない。
現在が8月1日。8月の終わりごろまでキチユシティで高額売却ができる。”ある人物”は8月15日〜20日までコゼニ村の宿屋に滞在するのでその間に”ある人物”の元へ通って交渉が必要。コゼニ村→キチユシティへの移動日程は約3日だから…
よし、目標は8月20日にコゼニ村を出発だ。キチユシティで宿泊は高くつく。もったいないのでこちらで粘ろう。
◇◇◆◇◇
しばらく通りを歩くと目的地が見えて来た。年季が入ったおそらく二階建てで有ろう木の建物と道具袋のサイン、そう、この村唯一の<道具屋>だ。今回は、100イェンで仕入れる予定の品___毒消しと薬草の相場確認だ。このゲームは売値と買値に”相場”システムが採用されている。この差額で儲けるのはテクニックの一つだろう。
例を挙げると、今回買う予定の毒消しと薬草は買値にどちらも4〜8イェンの間の相場があり、一週間毎に相場の間で価格変動している。他にも大収穫時の2イェン大安売りイベントが有る。これは完全に不定期。あ、暦は現代日本と全く同じだ。都合のいいことに。
さて、<道具屋>の1階部分は古き良き八百屋スタイルで店頭が見えるようになっている。お目当ての毒消しと薬草は横並びで置いてあるようで、どちらも今の価格は5イェンである。まぁ、”買い”だな。
少し遠くから眺めていると若い女性の売り子さんが駆け寄って来た。販売意欲旺盛なのか?あるいはそんなに暇なのか?それかプレイヤーだけにロックオンしてんのかよ…
茶髪のセミロングで快活な可愛い感じの子だ。15歳くらい?俺が15歳だから同い歳だ。この子も覚えてる、ゲームと全く同じ出で立ちだからだ。
『こんにちは!さっき裸でイノ一番亭の前にいた子だよね?』
「_ぶっ!」
おい、いきなり笑顔でそんなこと言うな。きゅうしょにあたる。こうかはばつぐんだ!
「…なんで分かったの?」
『ウチは道具屋だからこの村の子は全員知ってるんだ!見ない子だから、多分そうだと思って!んでんで、さっきイノッチおばさんも来て話ししてたし!しばらくドレイとして雇うって!』
女子ネットワーク早すぐる。こういうの見るとやっぱりゲームキャラより人間としか思えないんだよなぁ。
いきなり失礼な感じで畳みかけられたちょっと呆れつつ、言葉を返す。
「そっか、そういうことならよろしくね。俺はシュセンド。15歳の冒険者…見習いかな。」
『あたしはコゼニ村唯一の道具屋<テムの道具屋>の看板娘、アイちゃん!ヨロシクぅ!』
「ん、ヨロシク!」
こんなキャラだったっけ?自分で看板娘っていうな。ちゃんもつけるな。鬱陶しい感じだけどいい子そうだ。
『んでんで、今日は何しに来たの!?お買い物?』
「まぁ…そんな所。毒消しと薬草って一番安い時っていつだった?」
『ん〜とね、先々週ぐらいが4イェンだったよ!』
「そっかぁ、んじゃ…とりあえず毒消しと薬草を10本ずつ貰えるかなぁ?あ、劣化したりしないよね?」
『えぇ!そんなに!何処かで怪我した人でもいるの!!??劣化とかは…大丈夫だけど…』
「いや、そんなことはないよ。ちょっとある人が研究で使うから大量に必要で…」
嘘だ。企業秘密アルよ。
『そ、そうなんだ…でも、一つ問題があるの。』
いや、もう嫌な予感しかしない。
「…問題って何さ?」
『シュセンドくん、道具袋も金貨袋も持ってないじゃない。持ってない人は初めて見たよ。』
「…え?」
『だから、”道具袋”と”金貨袋”よ!まさか…知らないの…?』
「…俺、記憶喪失でさ…全部忘れちゃったんだ。もしかしたら袋も無くしちゃったのかも…」
最大限に困った顔でアイを見る。我ながら都合のいい記憶喪失である。
『本当に!?嘘じゃないよね!!??生まれた時に両親から貰うのが一般的だけど…』
「どどどどうやったら手に入るの!?」
『袋は伸び縮みするちょっとレアなアルミンの皮で作るのよ。』
「ふ、袋ってなかったらどうなるの!?」
『別に売れないとかじゃないんだけど、シュセンドのポッケに入るのって2個ぐらいじゃないの?』
「2個…ニコ…ハハハ…」
『袋なら、道具袋は20個くらい、金貨袋は10000イェンくらいなら入るよ!』
”MoA”で序盤に持ち歩ける道具は20個まで、お金は10000イェンだったけど…まさか”袋を持ってないとアイテムが20個まで持てない”なんて分かるか!理不尽理不尽!
そもそも”貧民”モードでもそんな理不尽なことはなかったわ〜!!最初から20個アイテムスペース有ったわ!もう”大貧民”モードはむちゃくちゃすぎんだよ悪魔!さっさとお助けしてくれ!
…まぁ愚痴っても仕方ない。追い込まれた脳が熱を持って高速回転するのが分かる。レアアルミン狩りに行くにもステータスのせいで村出れないし、戦闘はイェンで切り抜けれるがレアアルミンが出るのか?というか元手を削るのはやっちゃいけないし…護衛されて狩りに行く…のも稼ぐよりもっとお金かかる…あれ、詰んだ?
急に黙ってしまったからか、アイが顔を覗き込んで来ていた。何も言わないのも憚られるので話しかけてみる。
「………どっかで買えない?」
『無理無理!みんな大事にしてるんだから!でも、10000イェンならあたしの売ったげる!!』
あ、やっぱ詰んでた。10000イェン持ち歩けないのに10000イェン要求された。りふじん。
「じゃあ…毒消しと薬草1個ずつ下さい。」
『まいどあり!10イェンね!!』
[▲どくけし(1)をてにいれた]
[▲やくそう(1)をてにいれた]
[▼10イェンうしなった]
もう、ええわ。帰ってドレイ《バイト》しよ。
収支
[▲どくけし(1)をてにいれた]
[▲やくそう(1)をてにいれた]
[▼10イェンうしなった]
残金480イェン