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どうも私が勇者代理です。  作者: ドラグマ
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異世界に舞い降りた一匹の天使

ベットの上で目が覚めた。

ひどく怖い夢を見た。

気がついたら裸にバスタオルを巻いた格好の俺が大きな部屋にいるのだ。レンガ造りで殺風景な部屋だった。まるで西洋にある廃城の一室のようだった。部屋には窓などなく、明かりといえば部屋に設置されたランプの灯りくらいだ。その薄暗い明かりが不気味さをより引き立てていた。

その部屋には俺以外にも人がいた。俺の近くに、美しく可憐な白髪でいかにも魔道士が着てますって感じの青いローブをまとった美少女。オサレ風に装飾を施した西洋の鎧を着ており、手にはまるでRPGなんかで使われるような両手剣を持ち鎧越しにも脳筋感の出ている正義感の強そうな屈強な男。姿は見ていないが、後ろからも可愛い感じの声が聞こえたからおそらくもう一人女がいた。そして目の前にはツノとかキバが生えたハロウィンのコスプレみたいな格好をした美男子。

そして俺はこのハロウィンコスした美男子野郎に殺されたのだ。

このハロウィン美男子野郎はゆっくりと俺に近づいてきた。あまりに唐突だったため体が全く動かなかった。この時周りのローブ女やら屈強男達が俺に対して何か言っていたのだが全く理解できなかった。今となっては聞いたことない言語だった気がする。

そして、ハロウィン野郎は何だかよくわからない鋭利なものを手に持つと、それを使い俺の体を貫いたのだ。貫かれた拍子にバスタオルが宙を舞う。それと同時に真っ赤な液体が吹き出すのが見えた。自分の体からあんな大量の血が出るのなんて初めてだった。その後は…その後は目が覚めて今に至るのか。いやほんと夢で良かった。

そういえばいつの間に寝ていたのだろう。学校が終わって家に帰り、風呂に入るため脱衣所で服を脱いだ、そこから記憶がない。え?まさか俺裸で寝ちゃってたの。だから夢でも裸だったのか、なるほどな。納得いくわけがない。まあいい。多分親父あたりが風呂場で寝ていた俺を部屋まで運んでくれたのだろう。

俺は体を起こし辺りを見回す。

おかしい…これは流石におかしい。俺が寝てる間に誰かが部屋の模様替えでもしたのだろうか。俺の部屋はこんな感じではなかった気がするな。俺の部屋は勉強机とベッドのみで完成する7畳ほどの簡素な部屋なはずなのだが、この部屋はやたら高価そうなツボとか絵とか飾ってある。しかも何畳あるの?ってくらいの広さがある。最近の模様替えは部屋の広さまでいじることができるのか。うん、それはないね。俺の部屋じゃないにしてもこんな部屋は俺の家には存在しない。いや、沙耶の部屋入ったことないからもしかすると沙耶の部屋なんじゃないか。いくら妹が可愛いからってうちの親はこんな広い部屋を渡すなんて甘やかしすぎだぞ!プンプン!…うん、キモい。

部屋を一通り眺めた後自分の格好をみて驚いた。いつの間にか着替えさせられていたこの白いバスローブみたいなものだ。さすがに裸ではないと思っていたが俺はこんな服持っていない。…にしても肌触り良すぎじゃないこれ?よく考えたらベッドもめっちゃふかふかするじゃん!

ここはもしかして天国なのでは。まさかお風呂で溺死したのか。お父さん、お母さん、先に旅立つような不甲斐ない子供でごめんなさい。沙耶、頭のいい兄でプレッシャーになってたよな、ごめんな。じゃあ俺は先に遠くに飛び立つからな。ん?飛び立つ?もし死んでるんだったら飛べるのでは?

俺はベッドの上に立ち上がり、飛べるかどうか確かめるためピョンピョン跳ねてみる。うーん、体が軽くなったかと言われるとそんな気がしないでもない。折角だから飛んでみよう。俺は思い切りベッドを踏みつける。ベッドはきしきし音を立てているが壊れるほどではなさそうだ。いくぞ!俺はベッドから体が出るように宙に浮いた。

あ、なんだか飛べてるような気がする。

俺は…自由だ!俺は…自由なんだ!俺はじゆっ…。

ドスッと鈍い音ともに俺の顔面に猛烈な痛みが走る。そのまま自由になったはずの体は地に引き戻され、またしてもドスッと鈍い落下音がする。

「いってぇぇぇーーー」

飛んだ先にあったドアが開かれて、顔面を強打したらしい。さらに落ちた拍子に右半身を打った。あぁ、おそらくこの痛みは死んでないことの証拠なんだろうな。まぁ死んだとは本気では思ってなかったけど。どうせ、ここもちょっと良さげな病院の一室なのだろう。

あまりの痛みで目を開けるのもしんどいが、せめてもの腹いせに俺はドアから出てきた奴を睨みつけることにした。直接文句を言いたいものだが、悲しかな俺にはそんな度胸と立場もない。どうせ沙耶か母さんだからむしろ逆ギレされるに決まっている。親父だったら文句の一つでも行ってやろう。

睨んでやろうと思い目を開けて俺は息を飲んだ。沙耶でも母さんでもない、ましてや親父でもなかった。そこに立っていたのは本来いるはずのない夢の中で見たはずのローブを着た白髪の美少女だった。


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