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「Re:members」  作者: 夏宮 琉辰
1/2

Prologue

年内に連載終わらないかもです。

二部構成作品の第一部となります。

どうぞよろしくお願いします。


懐かしい夢を見た。


久しぶりに、このまま目が醒めなければいいと思える、そんな温かな夢だった。


目を開けると、そこはよく知っている場所だった。

風に舞う桜を、眼下に広がる夕焼けに溶けた街を、群青と茜の曖昧な境界線を、僕はよく知っていた。


この夢はどうしようもなく居心地のいい、途方もなく遠い場所。

追うものでもなく叶えるものでもない、ただ醒めるための夢。

きっと、ゆりかごに揺られる赤ん坊がその手足で初めて大地に触れる為の、一種の通過儀礼のようなものだろう。


目の前に佇んでいる少女は、よく知っていた少女だった。

風になびいて茜色に染まる髪を、今にも消えてしまいそうな儚げな笑顔を、頬を伝う一筋の光のその輝き方を、僕はよく知っていた。


あの日の僕らはどうしようもなく孤独だった。誰かに縋らなければ自分を愛することが出来ないほど、無知で滑稽で、不器用だった。

けれどそれは、僕らがまたあの場所で出会う為に、必要なものだったのかも知れない。

0だった僕が一度失った1を取り戻す為の鍵だったのかも知れない。

1だった君が何の残懐もなくもう一度0を迎えられる為の扉だったのかも知れない。


僕はもう一度記憶する。

もう二度と失うことのない様に、何時だってその笑顔が僕の中にあり続けるように。


目の前の景色が白に落ちる。

彼女はそのまま淡い影になる。


ああ、そろそろ目を覚ますとしようか。

また君に会えて良かったよ。

これから先、少し不安だったからさ。

それじゃあ、また。

いつになるかは分からないけれど、今度は僕の方から会いに行くよ。


最後に影に触れようとして、僕の意識は光の中へ取り込まれた。


****


目覚まし時計がけたたましく鳴り響くのを片手で止めると、僕は重たい瞼を上げた。



眠い目を擦った手の甲を見て、僕らしいやと笑った。

その手に少しの熱を感じたのは、きっとただの気のせいだろう。


ベッドから立ち上がり遮光カーテンを開ける。

眩い光が僕を容赦なく照らしつけ、思わず顔を顰めてしまう。



これからまたいつもの日常が始まる。

僕は生きていかなければならない。



君と生きた時間がくれた、僕が生きる理由を胸に。

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