第2話 “稽古”
『おそい!!』
稽古場に着くなり父親に怒鳴られる。
『すいませんでした…あの、すいませんでした…』
ソルは謎に2回謝った。
『ったく、大事な話があるって言ったのによ!
ま、とりあえず来いや』
父親はそう言うと剣を構えた。
『遅れてすいませんでした。稽古の方よろしくお願いします…。』
ソルはそう言って深呼吸をした後、目つきを変えた。
『いくぜおい!!!!!』
微妙なセリフだが、そう言うと剣を抜いて父親に向かって走りだした。
「ガキーン!キーン!ガキーン!」
ソルが攻撃をするが父親は難なく防ぐ。
『太刀筋が読みやすいぞ!そんなもんかザコ!』
父親が軽く挑発する。
『息子に対してザコってあるかよ!ヒゲ剃れやクソ親父!!』
髭なんか生やしてない父親に対して何とも的外れなディスである。
「ガキーン!キーン!ガキーン!」
『ヒゲなんか生やしてねーよ!お前余裕ないだろ?』
父親はソルをさらに挑発する。
『余裕なくねーし!つかお前息くさっ!剣振ってねーで歯ブラシ振れや!』
ソルはあまりの余裕の無さに全く意味が分からないことをほざく。
「ガキーン!キーン!ガキーン!」
そこからしばらく無言で刀を交えた後、父親が口を開く。
『ん〜ダメだ。全然だめだ。おらよっ!』
「ドゴッ!」
父の蹴りがソルの腹にキマる。
『隙だらけだ。今日はここまでだな』
そう言って父は剣をしまう。
『ぢくじょーー…』
ソルはうずくまったまま悔しそうに言った。
『よし、帰るぞソル!』
そう言って父がソルの体を起こす。
『え、もう帰るの?父さん特別な話があるって言ってたじゃん!』
ソルが言った。
『今日はお前、寝坊したろ。そんな緊張感ない奴に話すことじゃない。日を改める。帰るぞ』
父はそう言って歩き出す。
ソルは寝坊したことを悔やんだ。今朝、母親が言ってた“アレ”がもらえると思ってたからだ。
『わかったよ…』
自分にしか聞こえない程度の声でそう呟くと、とぼとぼ父の後ろを歩きはじめた。