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悪魔で堕天使

その扉を開くと七つ首のそれぞれに王冠を頂く魔獣がいた。


その姿はさながら魔王のようでありその異様に一種の畏敬すら抱くほどである。その視線はまだこちらには向いていなかった。目の前に映るのは後姿のみではあったがその巨体は約4mはあり愁はそのすべてを視界に納めることはできなかった。


その威圧感に言葉もでないでいるとグググと全身の甲殻を唸らせながら首をこちらに向けてくる。


「っ…..。」


扉の開いた音にようやく気づいたのかかつての勇者志限の配下の悪魔は愁より先に扉の方を睨み付けその視線のしたの方に小さい影があるのを発見する。


「これは主よ。いかがなされたそのようなお姿で。」


野太くしわがれた声で愁と言うよりかは志限の方に声をかける。今の俺の姿は志限ではなく俺の姿をしているのだから久し振りにあった上司が別人だと驚くのも無理はないだろう。


(いま僕は自身の意思で魔法を使うことが出来ないから実体化するとなると君が魔法を使わなきゃならないんだけど…。)


(了解した。魂の情報をもとに実体化か。一応知識にはあるけど面倒からナイトボーンでいいや。)


(え。君の体を再構成したときの知識があるんだからちゃんとやってよ!)


(仕方ないな。)


「事情はこいつに聞いてくれ。」


抗議する志限をしり目に愁が手を突きだしその掌から20cmほど先の地面からラストフレイムの様な紫炎が立ち上るとそこにはナイトボーンよりもがっしりとしたシルエットが浮かび上がった。


「ふーん。ナイトキングに僕の人格情報を移植したんだ。取り敢えず事情を説明しなきゃね。」


志限がナイトキングとして召喚されてから5分ほどが経った頃どうやら話に決着がついたようだ。終始見上げて話す志限と見下ろし頷く悪魔の図はどうも上司の悪魔に部下の骸骨が報告を上げているようにしか見えなかった。


「そうでしたか。主よ。わかりました。そちらの方が私の新しい主として新たに忠誠を誓いましょう。」


「そうか…。」


よかった。このまま認めてもらえずに力づくで認めさせなきゃならない展開に移行するかと思ったけれどどうやら穏便に済ませられそうだ。


「しかし新たな主よ。私と契約を結ぶにあたって前提条件として私が下るにふさわしくなければなりません。」


ん?どうやらいやな話の流れになってきたぞ?


「手っ取り早く私を倒していただきましょう。」


 やっぱりそうなるか。しかしそうなると未だに使いこなすとは程遠いこの力で戦わなきゃならないのかこの世界で竜と同列に居る悪魔と。


 この魔法は対軍用だけどこの巨体にどこまで通用するか。試してみるか。この世界での対竜種等の巨体種との戦闘の定石は大人数での飽和攻撃と多重防御の力押しであった。


つまり死霊を召喚しかつ魔法攻撃も可能な愁の能力は一人にしてその戦略をとることが出来る。


 さっきまで威圧されていたというのにこうして自身の力と相手の力量を刻み込まれた知識から手繰り寄せ勝ちをものにしようとする志向の切り替えの早さは前世でそういったものを愛読していたが故だろうか。それとも単純に知識欲から来るものであろうか。


 悪魔という種族は竜やもう一つの種族とは違い個体の能力差が激しくおいそれと手を出してよい相手ではない。彼らは他の2種族と違い体が魔力によって出来ている。そのため存在自体が魔法のようなもので当然魔法の扱いにも長ける。


 「準備はよろしいか新たな主よ。」


 「よろしいです。」


ある程度作戦が決まった愁だが、自身のなさから訳のわからない文法を使う。その様子に不敵な笑みを浮かべる七つ首の化け物。


自分を目の前にして多少不格好ではあれど逃げ出すことなく戦いを受けた愁に長年娯楽のなかったこの悪魔にはとても心躍る状況であった。


「いざ!」


そう叫ぶと開始早々悪魔はその巨体を生かしその巨大な腕を薙ぎ払う。それだけでこの限られた空間を占領するかのように愁の視界いっぱいに腕が映る。その攻撃は単調。しかし悪魔の持つ巨体と振られる速度がその攻撃を範囲攻撃魔法のそれに匹敵させる。


だが単調がゆえにその巨体ならばそうしてくるのは想像に難くない。だからその攻撃に対する対策も構築済みである。


「そんな分かりやすい!」


 こちらも叫び全力で上方向に飛ぶ。この体は再構成したとはいえ勇者の身である。その能力ゆえに横幅3m程度までのハードルならば全力で飛べば超えられることは道中で確認積みである。


 やばい。やばいなにこの風圧。そもそもなんで重力下でその巨体を維持できるんだよ。全く理不尽だ。


風圧のみで若干後ろに流されながら前世では決して味わうことのない驚異と威圧感、画面越しにしか無かった死の恐怖が愁にぶち当たる。


内心最初の攻撃を避けただけで誰かに誉めてほしいくらいの頑張りを見せたと自負する愁は死の恐怖の中にありながら待ち望んでいた世界の実感に震えていた心が自然とひきつった笑みを浮かべさせた。


その笑みは悪魔にとってどうとられたかと言えば


「その笑み、真に戦いを楽しんでいるな。」


え、いや、なんですか。そんな人を戦闘狂みたいな言い方しないでもらえますか。よゆうが無くてテンション可笑しくなってるだけだから!


豪風を伴って振り上げ、払い叩きつける悪魔の腕をすんでのところで転がり跳び、跳ね避ける様は不格好で余裕など微塵も見えなかったが悪魔は気にしていないようだった。


愁の体術よりもそんな状況のなかでひきつりながらもなお笑っている愁に感心していた。


その実余裕のなさと勇者の体があるとはいえ前衛職ではなかった志限の体は悪魔の一撃を耐えしのぐだけの耐久性はない。


 「くそっ」


 最初の目論見ほど余裕が出なかったことで|仕掛け(...)を急ぐことにした愁は先ほど志限を召喚した時と同じ「(ナイトキング)」を5体召喚する。それを部屋の壁際に展開し悪魔を囲むように配置する。そこからナイトキングは中心の悪魔に向かってそれぞれ魔法を放つ。一体はここに来るまでの道中愁が使ったラストフレイムを放ち他の4体は悪魔が邪魔になって見えなかったが黒い爆発数度響き渡りその爆発によってあたりに煙が立ち込める。


その煙が晴れるとそこにはおよそ爆発の規模からして明らかに軽傷な悪魔が立っていた。


ちっ。高位の悪魔や竜なんかは魔法を緩和する結界を展開しているんだっけか。俺ともう一人の放ったラストフレイムもすぐに鎮火させられているしな。傷口も塞がってきてやがるな。再生速度も半端じゃあないからそれで酸化が止まって炎が消えたのか?


だとすると生半可な攻撃じゃあ結界と再生で無意味だな削るだけの消耗戦もできなくはないがこの限られた空間じゃあ一方的に攻撃できるだけのレンジも取れないしな。


 だったら、アレをやるか。あれはまだ発動ができるだけで使えないんだよな。


「そろそろ準備運動は出来ただろう?」


七つ首の中でも他よりも一回り大きな頭が口角を上げ鋭い歯を見せびらかしながら愁に告げる。


「はっ…。」


愁の体に刻まれている知識にある悪魔とは基本的に体を魔力で構成され魔法の扱いに長ける種族だった。にもかかわらずこれまで悪魔は一度も魔法を使おうとはしなかった。


しかし、志限の知識の中には悪魔がこれだけの巨体を持ってることは珍しいはずだから魔法戦が得意ではないと言う可能性を少なからず期待していた愁はこれから苛烈さを増すだろう戦闘に冷や汗を止めることが出来ない。


「お手柔らかにお願いします。」


「それはどうですかね?」


その言葉と同時に七つ首の悪魔の巨体がのけ反る。


のけ反る一瞬ちらりと見えた悪魔の複数ある口腔農地の一つの内側から漏れでる赤い光を見た。


おいおいまさかブレスか!?


愁の中にある志限の知識の情報が喚起され同じように放たれる地上最強三種族のひとつ竜種の“竜の吐息(ブレス)”と呼ばれる広域殲滅技を想起させる。


刹那の後七つの頭のそれぞれに違う色の光が溢れる。それは一瞬で極光を通り越してまばゆい白い光の波頭となって辺りを飲み込んだ。


煙が晴れるとそこには、肩で息をし、走りやってくる愁の姿があった。


 「シャレになってねーよ。」


 愁の背後は白光の持つ熱量によって大きくえぐれていた。


 悪魔は自身の狙いがずれたことに驚愕していた。いくら長期間戦闘をしていないといっても悪魔であり悠久の時を生きる自分にはたびたびある程度の期間でしかないのにそれで感覚が鈍ることはない。


 実際悪魔の狙った位置の地面は無傷でいるのだから愁が悪魔の技を躱したということはないはずである。不自然な事態に動転しているわけにもいかず一直線に突っ込んでくる愁を追うため首を回そうとする。


 だがその首が回ることはなかった。バキバキと何かが砕けるような音を悪魔の頭の直下から聞こえた。


 「さすがは主です。」


 愁は物理的に首の回らない悪魔の懐で魔力を練りあげる。愁の背後には魔法発動前にもかかわらず真っ黒の靄が立ちこめる。


 「まだまだ熟練度が足りないこの能力じゃああんたを倒せる技がこれしかなくてな。」


 愁の後ろから立ちこめる靄が渦まき黒色のローブを形成する。そのローブにあるフード内部で不気味に光る二つの光点怪しく赤く光る。その外套の中身が持つのは柄だけで3m刃渡り1.5mの巨大鎌。


 「致死の一刈(デスサイズ)


 全長約4.3mの大鎌が悪魔の巨体の上半身と下半身を両断する軌道で振られる。斬線が黒い染みとなって破裂音と共に空間に描かれる。あまりの切れ味とあまりの腕力に数瞬の間悪魔の胴体はつながっていたがその後に真空状態となった奇跡に空気が流入し悪魔の後ろ方向の力が加わる。


 するとそれまでつながっていた胴体が二つに分断する。その体は光の粒子となって空間に溶け込んでいく。その様は周りが無骨な土の壁であってなお幻想的でさぞ美しい光景だった。だが愁はそんな光景に目をくれる間もなく意識を手放す。



 *



 目を開けると天井は相変わらず見飽きてきた土の天井。これまでの道のりが夢でなかったと実感するとそれを振り払うように二度寝を刊行する愁。


 「あ、おはよう愁。」


 その様子に気が付いた頭上に王冠を頂く骨太な骸骨が話しかけてくる。その横には銀髪の切れ長の目を持った細身で黒い装束をまとった流麗な女性が立ってこちらをじっと見ていた。少しうつむいた顔から見える切れ長の目は視線だけで万物を切断できそうなくらい鋭く威圧感を放っていたがそれすらも霞むほどその女性に目を奪われていた。


 呆けたように隣の女性を見ている愁に何かを思い出したように話し出す骸骨改め志限。


 「ああ!この娘はフレンチキス・アルトリアル。さっきの七つ首の悪魔だよ。」


 その言葉に驚愕する愁はあからさまに顔をゆがめる。最初はhな試合でどうにかなりそうな雰囲気であったのにいきなり物騒なことを言いだし最初の一撃から面攻撃という「性根がゆがんでいるんじゃないかこいつ。」と心の中で思っていたえげつない悪魔が実は絶世の美女だったことに愁はその感情を言葉にできないでいた。すると今度はアルトリアルと紹介された悪魔が口を開く。


 「私の名前はフレンチキス。」

 

 自身に言葉をかけられたことにどこかに飛んでいた意識を戻すことに成功する。しかし意識が戻ってきたのはフレンチが言葉を発し終えたところでなので何を言ったのか愁にはわからなかった。


 愁が何を言われたのかわからず冷や汗をだらだらたらしとりあえず愛想笑いを口角をひきつらせながら無言の拷問を受けているとスッと手を差し出してくるフレンチ。


 これは何か紹介とかこれからよろしくてきな会話だったのかな?とりあえず握り返そう。


 友好のあかしにと手を差し出す愁。その所作に表情を変えないが何も言い返したりしてこないのでこれでよかったのかなと少し安堵した瞬間


 「死ね。」





 


思い付きで展開変えて書いくとボツるからやめろって言ったのに。ごめんなさい。これからは各週火曜あたりに投稿できたらいいなと思っておりますはい。

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