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マルシさん何やったんですか!

 灰臭い袋に詰められてからどれくらい時間が経ったのかはしらないけどやっとアジトについたようで袋から乱暴に出された。出されたのは光もなにも見えない真っ暗な部屋で唯一私をここまで連れてきた人が提げているランプの灯りしか見えない。

 ここまで私を連れてきた男の人はずいぶん雑に私を扱ってくれた。馬でここまで来たんだけど地面でズルズル引きずられたせいで服も破れたし擦り傷や切り傷もたくさんできて体のあちこちがヒリヒリする。

 体を起こしてあぐらをかいて座ると私をここまで連れてきた男は部屋から出ていった。外側から鍵がかけられる音がする。男はランプまで持っていったので部屋の中は完全な暗闇になった。

 じっと静かにしていると鍵がかけられたドアの向こうから怒鳴り声が聞こえてきた。


「なぜもっとあの男が不利になるような条件を取りつけてこなかった!」


「す、すみません。」


「これだから貴族のお坊ちゃんは嫌なんだよ。まったく使えねぇ。」


 どうやら私を連れてきた男が彼よりも上の男に叱られているみたいだ。

 あらためて思うけどマルシさんって前は何の仕事をしてたんだろ?こんな乱暴な人達と繋がりが出来る仕事なんだろうから盗賊とか?でもマルシさんって優しいしなぁ。あんまりそういうことしてるイメージが湧かない。どちらかというと騎士とか?剣を握ったら強そうだしなぁ。チョイ悪騎士的な?

  マルシさんの前の仕事について考えながら手を縛っている縄を外し始める。マルシさんが教えてくれた忍者みたいなことがこんなところで役にたつとは。やっといて損はないね。

 それにしても私を連れてきた男の人、縄の縛りかたへたくそだな。マルシさんに縛られた時の方がもっときつかった。お陰ですぐに外すことができる。


 私が手の縄を外し終わった時、隣の部屋にいる人達がざわめき始めた。


「見張りのヤツがマルシが馬でこっちに向かって来ているのを確認した。お前ら。マルシが部屋に入ってくると同時にあいつが身動きできないようにしろ。あの時稼げるはずだった分をぼったくってやるぞ。」


「「「「おう!」」」


  何人いるのだろう?大人数の男達の声がこの部屋まで響いてくる。

 いくら強いといってもこんなに多くの人達相手じゃ流石のマルシさんも敵わないだろう。私が捕まったせいでマルシさんを危険にさらすなんて……。私のせいだ。何か出来ることはないかな。

  そう思い考え始めた私だったけどこの真っ暗な部屋に男達が数人入ってきた。何をするんだろう?男達が持ってきたランプで一気に明るくなった部屋で思わず目を細めた私だったけど慌てて壁際まで後退する。手の縄を外しているのがバレたらまずい。

  男達は急に壁まで下がった私を見てニヤニヤと笑いだした。その中でもとくに体のごっつい男がおもむろに話し出す。


「坊主。怖いのか?あのマルシの子供がこんなだとはなぁ。父親ががっかりするなぁ。お前の父親は強かったからなぁ。可哀想な坊主におじさん達が何するか教えてあげようか?これからマルシのやつがここまでたどり着く前にお前をぼこぼこにするんだ。もしかしたらうっかり殺しちまうかもなぁ。恨むならお前の父親を恨むんだな。金の恨みは深いんだよ。」


 ニヤニヤ笑いが増す。でも目はまったく笑ってなくて殺す気満々なのがよくわかる。マルシさん、本当に何やってたの?こんなおじさん達に喧嘩なんて売っちゃだめだよ。マルシさん若かった頃はやんちゃだったのかな?今はすごい落ち着いてるけど。(もちろん今も十分若いよ?)


「やれ。」


  さっきまで話していた男のかけ声と同時に他の男達が腕捲りをしてさらに距離を詰めてくる。刃物とかじゃなくて殴り殺そうとしてるみたいだ。4歳児になんてことしてくれるんだ。まあ中身は4歳児じゃないけどさ。

  どうやって抵抗しようか。逃げても力で敵わない。せいぜい追いかけ回されて遊ばれるだけだろう。

 魔法はこの世界にあるみたいだけど私使えないし……。どうしよう。

 そうこうしているうちに目の前の男が腕を振り上げた。私の顔めがけて降りおろされた拳を横にすっとよける。


「へぇ。よく避けられたな。ビビって動けないと思ってたが。」


 さっきからよく喋る男だ。口疲れないのかな?


「お前ら日頃の鬱憤張らしに思いっきり殴ってもいいぞ!この坊主の体をマルシに渡せばいいんだからな!」


  今まで遠巻きに見ていた連中もよってきて周りをぐるっと円形に囲まれる。4歳児相手にここまでしなくても……本当に大人げないなぁ。

 一斉に私を殴ろうと拳を振りおろした彼らを私は彼らの頭上から見下ろしながら思う。

  天井の梁に掴んだ私は梁の上に登ると部屋の隅まで移動して部屋の隅に置いてあるランプの火を息で吹き消す。その途端に部屋は再び真っ暗になってしまう。男達は梁の上を走る私を見て唖然としていたけど火を吹き消した途端に周りが見えないと騒ぎだした。

 私はランプの置いてあった近くにドアがあることを確認していたから近くの壁を手探りでトントンと探っているとドアの取っ手が手に当たる。そのまま向こう側に押して素早く部屋を出てドアを閉める。せっかく逃げたのに追いかけられたらたまらないもんね。


 男達から逃げられたことにほっとしたのもつかの間のことだった。なぜなら目の前にはさっきの人達よりももっと屈強そうな男の人達がたくさんいてみんな私をじっと見ていたから。

 その人達に守られるように真ん中にずっしりと座っているおじさんは私が出てきた部屋の方を見て


「こんな子供に撒かれるとはな。後であいつらをしごいておけ。おい餓鬼。お前が何をしたのかは知らないが大の大人から逃げきったことは褒めてやろう。安心しろ。先ほどの大人のようによってたかって殺そうとはしない。お前はお前の父親にとって大事な存在のようだからな。」


 お?なんか話が通じる人でよかった~。殺されないみたい。


「だからお前の父親がこの部屋に着いたときに一瞬で殺してやろう。」


 デスヨネーー!やっぱり殺されますか!マジでマルシさん何やったんですか。もう泣きたいよ……。


 なんとか生き延びれないかと必死に考えだしたところでこんこんとドアがノックされた。


「隊長。マルシを連れてきました。」


 開いたドアの先には今まで見たことのないような恐い顔をしたマルシさんが二人の男に連れられて立っていた。

 私の後ろに立っている男が剣をすっと抜く音が聞こえる。人生終了のゴングが鳴り響く音が聞こえた気がした。



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