表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/48

猪の丸焼きは美味しい!

 あ、やべ。殺しちゃった。なんかあのブスの目線がムカついたから手加減間違えてあのブス死んじゃった。あれ?なんか転生しちゃってる。転生って時間かかるのになぁ。ま、いっか。あんな女どうでもいいしね。次は誰と遊ぼうかな♪



*************************


 何かに肌を擦られている感触で目を覚ます。目を開けると私は温かい布で顔を拭かれていた。私を拭いてくれているのは大きな植物の葉を持っていた男の人。私が目を覚ましたのを見て


「泣くなよ~頼むから泣かないでくれ~ガキの泣き止ませ方なんて知らねぇんだからなぁ~」


  私を抱いている腕をゆっさゆっさと揺らしてくれる。oh!振動がヤバい!この人巨人だから私が小さすぎて赤ちゃんとでも思ってるのかな?一応花の17歳だよ?一応、ね。だから布で優しく拭いてくれるのは嬉しいんだけどね?その……胸のところとか拭かないでほしいんだけど。思春期の女子としてどうかと思うんだけど。

 でもそれを訴えようにもアウアウとしか言えないから大人しく全身を吹かれた。お嫁にいけない……


 巨人の男の人は私を柔らかくて大きな布の上に仰向きに寝かせるとどこかへ行ってしまった。う~なんか手足がうまいこと動かない。やっとのことで寝返りをうってうつ伏せになってはう。全身の筋肉をフルに使って大きくて柔らかい布の上をはっていく。数回立とうとしたんだけど足に力が入らなくって結局立てなかった。病気にかかったのかな?怖いんですけど。

 何はともあれやっとこさ布の端までたどり着いたようで布の切れ目が触れる。大きな布の前にはこれまた大きな鏡があった。うわ~おっきいなぁ!

 でもこの鏡は少しおかしい。だってどこにも私が映っていないの。周囲の大きい景色は一緒なのに私がいる位置には赤ちゃんが一人。

 私が右手を上げれば鏡の中の赤ちゃんは左手を上げる。そんな風に私と同じ動作ばかりするのだ。

 変なの。ずっと鏡の中の赤ちゃんと遊んでいると巨人の男の人がやってきて


「おっとあぶねぇ。ベットの端から落ちそうじゃねぇか。やっぱりガキからは目ぇはなしちゃいけねぇな。ん?鏡が気になるのか?よっと。」


  そう言って私を抱き上げると鏡の前まで近づける。私の姿はどこにもなくて代わりに赤ちゃんの姿が鏡に近づく。


「ほ~ら。これがお前の手だぞ。ちっちぇなぁ。」


 私の手をつかんで巨人の男の人はひらひらと私の手を振る。え……?なんか小さい。それにさっきから思ってたけど私の手ってこんなにむっちりはしてない……

 もしかして、この鏡の中の赤ちゃんって……私?私なのね?赤ちゃんになるとか聞いてないわよ!あの不審者めっ!


「そういやお前赤ん坊の癖にちっとも泣かねぇな。将来凄い男になるかもなぁ。」


 えへへへ!褒められちゃった♪え?ちょっとまって。凄い男……?私は女なんだけど?ん?なんだろ?この股の間の違和感は。気持ち悪っ。


「ん?ウンコか?あれ臭いから嫌なんだけどな。オムツを替えてやらなきゃな。」


 そう言って剥がされたオムツの中にはウンコと……変なモノが私の股の間にあるんだけど。男の人がお尻を擦ってウンコを取ってくれたんだけどその際に変な棒状のモノはとれなかった。これってあれ?あれなのか?…………


 どうやら私は男に生まれ変わってしまったらしい。うん。なんだろう。この気持ち。なんか……残念。



  私が男の子に生まれ変わっていたことに気づいてから早4年。私は拾ってくれた男の人の元ですくすく育っていた。

 今の名前はサラル。男の人がつけてくれた。男の人の名前はマルシ。喋れるようになって名前を聞くと教えてくれた。

 マルシさんは仕事をしてないみたい。いつも家の中にいるか、近くの森に出かけている。私が今過ごしている家は小さい木の家だけど住み心地はとてもいい。でも家の周りは森で囲まれているせいで他の人間とは会ったことがない。でもマルシさんがいるから退屈に思ったことはない。

 マルシさんは私にいろいろなことを教えてくれている。

 字、解錠の仕方、剣、料理、野宿の仕方……などなど。他にもたくさんあるけど字以外は自然界を生き抜くぜ!っていう人達がするようなことばかりだった。忍者みたいな感じだね。凄いハードです。はい。毎日体の節々が痛いよ。でもちょっとだけ慣れてきたけど。

 ちょっと気になったから休憩中のマルシさんに


「なんでこんなことするの?絵本の中の子達はこんなことしてないよね?」


と聞いてみると、


「俺がいなくなったらお前生きていけないだろ?そうならないためだな。」


 そうだけど、解錠の仕方なんて生活していくうちのどこで使うんだよ(^-^;


「へぇ~そっか。じゃあもう一個聞いてもいい?」


 子供っぽく喋らなきゃね。もうマルシさんから私は拾い子だと言われている。あれは3歳の誕生日の日だったな。美味しいお肉を食べていたら急に言ってきた。前から知っていることだったから『ふ~んそうなんだ。』って言ったら驚いてた。そりゃそうだよね。普通はもっとびっくりするよね。でもお肉に夢中なせいだと理解してくれたみたいで苦笑いをして頭を撫でてくれたっけ。


「サラル?どうした?聞きたいこと聞いてもいいんだぞ?」


 心配そうな顔をして顔をのぞきこまれていた。


「えっとね、マルシはなんのお仕事してるの?」


「前まではしていたが今は何もしてないな。前までやっていた仕事で金はたんまりあるしもう仕事はしたくねぇんだ。」


「どうしてお仕事やめちゃったの?」


「お前が捨てられてるのを見て自分の仕事が嫌になってな。お前にはまだ早い話かな。気にすんな。」


  えー。私のせいですか。仕事やめたの。


「よし。休憩は終わりだ。お前はあと百回素振りし終わったら晩飯だ。」


「今日の晩飯何~?」


「猪の肉だ。」


「やった~!」


  おっしゃぁぁぁぁ!猪の肉は私の好物なんだよねっ!俄然やる気出てきたわ~!

 晩飯の話を聞いた途端にやる気を見せて木刀を振る私と横目でそんな私を見てニヤっと笑いながらすごい速さで剣を振るマルシさん。平和な日常が過ぎていく。


 その日の夜、猪の丸焼きをお腹一杯食べた私は布団の中に幸せな気持ちで寝転がっていた。二人で猪の丸焼きを食べるので量がたくさんある。今日食べきれなかった分は明日に回すことになった。

 マルシさんと一緒の部屋で寝ているから隣のマルシさんはスカーと小さくいびきをかいている。私はお腹一杯すぎて寝られない。いいなぁマルシさんは。大人だからあれは適量なのかな?まだ私4歳児だしね。

 ウンウンとお腹を抱えながら横になっていると家のどこかからカタリと物音がした。この家には私とマルシさんだけしか住んでいないから物音がするなんておかしい。またあの不審者の時みたいな二の舞にならないように急いでそっとマルシさんを起こす。

 マルシさんはなかなか起きてくれなかったけどしばらくしたら起きてくれた。


「どうした?小便でもしたいのか?」


 寝ぼけ眼でポリポリと頭をかくマルシさんに一生懸命物音のことを話す。私の話を腕を組んでじっと聞いてくれたマルシさんは


「わかった。じゃあちょっと家の中を調べるか。いい子で寝てろ。」


 え?ちょっと待った!置いていくつもりかい!コエーよ!ぎゅっとマルシさんのシャツの端を掴みうるうる目をマルシさんに向ける。こういう攻撃は使えるの子供のうちだけだし。有効活用してやるのみ!

 私のうるうる攻撃は功をなしたのか


「俺の後ろで静かにしてるんだぞ。」


 クシャクシャっと髪を撫でられる。作戦成功(?)


 そろりそろりと部屋を移動していくと案の定誰かがいるみたいでランプのオレンジ色の灯りが二階から漏れていた。どうやら複数人いるらしく二階の部屋に近づくにつれ話声が聞こえてくる。


「本当にあいつはここにいるんだろうな?」


「へい兄貴。昼前にガキと素振りをしてやした。」


「わざわざ二階から入る必要はないんじゃないか。」


「一階のドアの鍵が開けられなかったもんで。」


「……そうか。まあいい。さっさとあいつを捕まえよう。」


 二人の男の声の一方がそう言うとランプの灯りが私とマルシさんのいる廊下の方へ近づいてくる。慌ててマルシさんを見上げるとマルシさんはいつもの顔でその場に立っていた。なんでこの人こんなに余裕ぶっこいて立ってられるんだろう。

  そう時間が経たないうちにランプを持った二人組に見つかった。すると


「お、おいっ!マルシの野郎が起きてる!ヤバいぞ逃げろ!」


「ヒィィィィィィッッッッッッ!」


  ダッと二人の男は私達と反対方向に逃げていく。マルシさんはあっという間にそんな二人の襟首をガシッと捕まえると


「おいお前ら。俺の家になんのようだ?俺の睡眠を邪魔したんだからそれなりの理由なんだろうな?」


  一人の男はそれを聞いた途端に気絶してしまった。マルシさんってすごい人なのかな?顔は見えないけどそんなに怖くない声なのに。


「ボ、ボスがお呼びだ!お前が抜けたせいで大損だったんだぞ!」


「しょうもねぇ話だな。じゃあもういいよn」


「じゃあ取引といきましょうか。」


 その声が聞こえた瞬間、私は一瞬のうちに背後から両手を縛られて袋に入れられてしまった。


「サラル!!」


「やはりあなたがた二人では無理でしたね。来ておいてよかった。探したのですよ?マルシさん。」


「お前いつの間に後ろに……。早くサラルをこちらに渡せ。」


「ですから取引をしましょう。」


 袋の中は灰臭くて苦しい。他に袋はなかったのかね?


「貴方が私達のアジトに来て下さればそこでこの子供をお返ししましょう。」


「本当だろうな?」


「アジトの場所はそこの二人に案内させてください。ではまた後で会いましょう。」


 そう言うと私を袋に詰めた声の持ち主はずるずると私の入った袋を引きずって移動し始めた。あちこちがぶつかって痛い。

少し破れた袋の穴からこちらをじっと睨むマルシさんが見えた。ちなみに部屋に二人組の男達はなぜか気絶していた。なんでだろ?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ