挙動不審な帝国の恩人 4
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ライムが不可解な宣言した直後から、俄かに小屋の外が騒がしくなる。
それは迎えに来たという空気ではなく、明らかに何かトラブルでもあったかのような騒がしさだった。
『あっしが貸したのはこの小屋です。まさかとは思ってましたが、いや、まさかねぇ……』
小屋のすぐ外から男の嗄れた声が聞こえてきた。
すると今度はハッキリとした物言いをする強張った声が、男に対して返事を返していた。
『ご協力感謝致しますぞ。後の事は我々にお任せ下さい。念の為、外出を控えるように村の住民にお伝え願えますかな?』
誰かに指示を出したのだろうか? 外にいる何者かがそう言えば、誰かがバタバタと走り去って行くような足音が小屋の中にまで伝わってきた。
どうも小屋の前に複数の人間が居るような、そんな気配をエイラは感じた。
「っげ……この声ってもしかして……?」
メルが青い顔で仰け反れば、ライムが顎でメルに指示を出す。
どうやら扉を開けてこいと言っているらしく、その指示に対してメルはブンブンと首を振って拒否をしていた。
メルとライムがそんなやり取りをしていれば、殊更大きな声で、先程の男の声が怒鳴るようにこちらへ向かって話しかけてきた。
『私は、デール帝国直轄のアスベルグ騎士団第三部隊隊長ドラゴ・アダルベルト。そして第三部隊兵と夢境魔術団第五七分隊である! 貴様達が小屋の中に居るのは解っている! 大人しく出てくれば手荒な真似はしない! 無駄な抵抗はせず今すぐ投降せよ!』
ドラゴ・アダルベルトと名乗る人物がそう言えば、ライムは腕を組んだまま唸り声を上げる。
「……何故そこで末端部隊を連れて来る。あの男は馬鹿なのか?」
「言ってる場合ですか!? 一番厄介な人間が来ちゃってるじゃないですか!! どういうことですライム様! なぜ判った時点で逃げなかったんですか!!」
「判った時点で既にアレは村に到着していた。それに病人を抱えて何処へ逃げろと? 逃げた所を捕まればややこしい事になるだけだ」
「ああああああ〜……なんでこんな事に…………」
メルが頭を抱えてしゃがみ込めば、ライムもまた溜息をついた。
『アスベルグ騎士団』は、リン・プ・リエン王国の土地だったジールシード領にある、アスベルグという地方を名前の由来としている。
ジールシード領はデールの初代皇帝が幼少期に過ごした土地としても有名で、初代団長は元傭兵から英雄になった、ウルフことウォルフガングだと今日までも伝えられている。
デールの長い歴史の中、変わらずに王の近衛を務める騎士団で、『夢幻魔術団』とは長きに渡りライバル関係にあった組織だったが、『夢幻魔術団』解体後は、後身の『夢境魔術団』の監視も担うようになり、徐々に力を付け、今では国内の治安維持すらも任されるほど重要な組織となっていた。
「あの……お2人とも、もしかして何か科を……?」
「違います!! 至極真っ当な人間です!! 信じて下さい!!」
メルに縋るように涙目で訴えられれば、エイラも気圧されてコクリと頷くしかない。
ライムはそのメルを少々乱暴に退けると、エイラをベッドへと押し付ける形で強引に寝かせ、低く抑えた声でエイラに囁く。
「具合の悪いフリをしていろ」
ライムの緊迫した様子に、エイラは黙って頷き返す。
事情はよく飲み込めないが、恩人の迷惑になるのは避けたいと、エイラはライムの判断に従うことにした。
それに何より、二人が悪い人にはエイラにはどうしても見えなかった。
エイラが頷いた直後に、たいして丈夫ではないだろう小屋のドアが乱暴にぶち破られる。
それと同時にバタバタと部屋の中へ複数の人間が駆け込んでくる足音が聞こえ、更にアダルベルトの怒声が室内に響き渡った。
「隠れても無駄だ! 大人しく投降しろ!!」
「……五月蝿い。病人が寝てるんだ。静かにしろ」
ライムが苛立たしげに部屋の外へと出て行き、アダルベルトの前に姿を表せば、アダルベルトは驚愕の表情を浮かべた後、どこか嬉しそうにニヤリと口角を上げて、ライムの元へと近寄って来た。




