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暇人本棚

出会うために…。

作者: 灯月樹青

全てが必然だったなんて、俺は思わない。

俺は、君に出会う運命だったのではなく――、君に出会うために、その道を選んだんだ。

険しくも――幸福な道を――。



親友の彼女として紹介された君。

親友には悪いけど――一目で好きになったんだ。

『可愛い』とか『綺麗』って言われる容姿じゃなかった。

極々平凡な――人よりちょっと劣った顔。

でも。

俺に見せた君の笑顔が、とてもとても魅力的だったんだ。

にこやかに笑うって言葉は君の為にあるんだと思った。

けれど、君は親友の彼女。

だから俺は君を奪う気はないんだ。

本当は奪いたい。

でもさ、間に立たされる君の心境を思うと、そんな気にはなれないんだ。

こんな俺はらしくないかもしれない。

けど俺はこう思う自分を嫌いじゃなくて、むしろ好きなんだ。

君を想う、俺を。



傍にいてやりたいとこれほどまでに思ったのは君だけだったよ。

君は気付いているだろうか?

俺が君の名を呼ばないことに。

呼べないんだ。

気持ちが溢れてしまうから。

名前を呼んでしまったら君の気持ちを考えもせずに奪いたいと…、欲しいと思ってしまうから。

それだけが俺が俺に課したたった一つの枷。

きっと気付かないんだろうな。

君は俺に親友の話をたくさんするから。

君の話を聞いているとわかるんだ。

君がどれだけあいつを思っているか。

どれだけの気持ちが君から溢れているかが。

俺はそんな時、少し傷付いて。

けれど外れそうになっていた枷がまたしっかりと俺を繋ぎ止めるのがわかるんだ。

俺は君が好き。

けれど言わない。

だから言わない。

俺は君の笑顔が好きだから。

俺は君の笑顔がみたいから。

笑っていて。

隣にいるのが俺じゃなくてもいいから…なんてカッコイイ事を本気では言えないけど。

だけどそう思ってる俺がいるのも確かで。

俺から出てくる気持ちだから――。



君に出会った春。

それから夏が過ぎ、秋が過ぎ、冬が過ぎた。

大きくなりすぎた気持ちを持て余している俺は、君の傍にいられないと思うようになった。

気持ちが…溢れて。

枷が、外れてしまいそうで――。俺はバイトを始めた。

気を紛らわす為に。

そして誘いを断るための口実を作るために……。



君のいない春、夏、秋。

絶対に来いと誘われたクリスマス。

親友の隣に立つ君を見たくなくて、断りたかったけれど受け付けてくれなくて。

親友の家に行った俺が見たのは。

親友の隣に立つ――、知らない子。

新しい彼女だと紹介されたその子の顔なんて覚えてない。

君がいなかった。

会いたくて会いたくて。

けれど枷を付けてでも離れた君が――いなかった。

ポケットに入っている小さな小さなプレゼント。

君に似合いそうな可愛いブレスレット。

あいつとは親友だったから、多分受け取ってくれるだろうとこっそり買ったクリスマスプレゼント。



ごめん。

俺、気付かなかったんだ。

君とあいつが別れた事なんて。

あいつの家を飛び出した俺は携帯に入った君の番号を探す。

この小さな小さな世界が…繋がることを信じて。


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