2話 神との出会い
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目の前の怪しさ満点の自称”神”と俺。
暫くお互いの反応に驚いていた。
いやいや、なにその神にしか見えないでしょ的な反応。
怪しいって。厳しいって。
「…その…神というか、死神の様に見えるんじゃが…」
黒フードの少女は立ち上がる。
「へぇ、世界を救った勇者様も、さすがに死神は怖いっすか?」
「怖いというか、その、ワシ文字通り”世界を救った勇者”じゃから死神とかそういうのとは無縁のはずでの…」
「でも今は“勇者”様じゃないっすよね。幽霊だから……えーと……“幽者”様、っすか? あははっ!」
「笑ってる場合じゃないわい!? とりあえずワシの美女はどこへ行った!?」
神じゃろうが死神じゃろうが王じゃろうが魔王じゃろうがこの際どうでもいい。
ワシは生前死ぬほど我慢してきた。いや死んだけど。
勇者になるまで死ぬほど努力したし、なった後も死ぬほど勇者らしく振る舞い続けた。いや死んだけど。
「死んだあとくらい好きにさせとくれえええぇ!!」
「う…うわぁー……」
ドン引きである。知ったことか。
「まぁまぁ、落ち着いてくださいっす。幽霊になっちゃったのは、いろいろ事情があるんすよ。」
「……事情?」
「はいっす。まだ、あなたには使命が残ってるっぽい、みたいな?」
「使命……?」
少女は、にっと笑った。
「これから、勇者様に改めて世界を救って欲しいっす!」
「……は?」
言葉の意味が理解できない。というか本当に幽霊なのか。
というか幽霊って魔獣とかの”ゴースト”と同じ位置付けなんじゃなかろうか。
てことはワシは魔族に転生してしもうたのか。
黒フードの少女は、人差し指を向けて告げる。
「あ、勇者様今、ゴーストと同じ扱いになったのかと思いましたっすね?」
まてまて、こやつ、ワシの心の声をきこえておるのか。
「はいっす。それもバッチリにっす!」
どうやら目の前の小娘は本当に只者ではないらしい。
容姿にして14歳ほどの背丈と言葉遣い。しかし胸の育みだけは一人前、いやそれ以上に素晴らしいのだ。そういう種族か?
「ていうか、さっき匂うって思いましたっすね。おかしいっす……一応フォブリーズしたんすけどね…」
黒フードの少女は自分の身体をくんくん臭って続ける。
「まぁとりあえずっす。その”ワシ”っていうのやめません?なんかこっちまで歳とりそうなんで」
「いやいや、ワシだってしっかりアンチエイジングはしてきたよ?!でも人間誰しも年齢には――」
怪しい黒ずくめの少女の胸に夢中になっていた俺は、正面から放たれる光の存在に気づかなかった。
光に包まれた俺は、目が覚めたら身体が縮んで――
窓に映る自分を見て、驚愕する。
いや違う、若返っているではないか。なんやて神様。
それは容姿にして20歳程。
魔王を撃ち倒した人生最高峰を迎えていた、一番パワフルだった年頃。
「うおおおお!!俺!若返ってるじゃねえか!」
まぁ、幽霊に若返りとかあるのか謎だが。
「……よし。とりあえずこれでマシっすね…本題に入りましょうっす。」
本題?何がはじまるんです?!
──こうして、世界を救ったはずの英雄の第二の冒険が幕を開ける。
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第3話に続きます。