第七話 一旦撤退する
僕と橘先輩は、ゴブリンを狩りながら、布の切れ端を探すことにした。
ゴブリンを倒すのは慣れたもので、二人で効率的に攻撃を加えて倒していく。
「それにしてもドロップはするんだけど布の切れ端が落ちないね。後三枚ならすぐに集まるものだと思ってたけど」
「そうですね。これまで合計十体は倒してるのに……」
「ここは気分転換にステータスやスキルを確認してみるのはどうだい?」
「それいいですね!」
名前: 青井 仁
年齢:十八歳
職業: ダンジョンアナリスト(解析士)
Lv: 10
HP: 180/180
MP: 160/160
STR(筋力): 10(ちょっと強くなった)
DEX(敏捷): 20(回避力とスキル捜査の制度UP。バド部経験が活きてる)
VIT(耐久): 10(一般人レベル)
INT(知力): 50(ダンジョンに対する知識と考察能力が向上)
WIS(判断力): 30(状況把握・思考力ともに成長。スキル精度UPに関与)
LUK(運): 12(少しだけ上がった)
スキル
《模写》
•自分で見た風景を模写可能。
精度が上がり、戦闘中でも“視界の一部だけ”模写できるように進化。
→ 敵の陣形・トラップ位置など、瞬間スケッチが可能!
《瞬間記憶》
•見たものを即座に記憶できる。
記憶の保持時間が延び、複数の情報を同時に保持できるようになる。
→ 再解析や仲間への共有に使える。
《解析》
•まだ核心には届いていないが、一部の簡易解析が可能。
→ 敵の属性傾向、トラップの起動条件などが読み取れる。
•???
•未知のダンジョンに挑むほど真価を発揮するスキル。
所有物 アナリストのメモ帳 万年筆(アナリスト専用)
スライムジェル 二つ 稀少ジェル(青)一つ
布の切れ端 二つ
「敏捷と知力と判断力が上がってるのが嬉しいですね。スキルは色々成長してるけどまだうまくいかせてないから頑張りたいな」
横で僕のステータス画面を覗いていた橘先輩はふむふむと頷きながら同意していた。
「橘先輩。ここは気分を変えて二階に行きませんか?」
「うーん。そうしたいところだけど、長良川ダンジョンは夜間閉まっちゃうから帰らないといけないよ」
「あ、確かにもうそんな時間ですね。帰りましょう」
「ダンジョンはまた明日潜ろう。焦ることはないよ」
「そうですね」
二人で喋りながら長良川ダンジョンの入り口に向かい、そのまま脱出する。
「お客さん、もうちょっとダンジョンに居たら出れなくなる所だったね。時間管理はしっかりしないとね」
「そうですね。気を付けます」
渡し船をこぐおじさんと喋っているうちに岸まで着き、そのまま歩いて岐富探索者支援センターに向かった。歩きで大体十分くらいだ。
「最近、遥ちゃんとはどうなんだい?」
橘先輩が話しかけてくる。
「あんまり連絡とってなくて……」
「それは由々しき事態だね。喧嘩でもしたのかい?」
「僕から避けてるんですよね。あいつに僕という存在が枷になったらいけないと思って」
「それは遥ちゃんに言ったのかい?」
「言ってないです」
橘先輩が考え込んだ表情を見せながら僕を見る。
「それはちゃんと話すべきじゃないのかい? 遥ちゃんがかわいそうだよ。あんまり恋敵の応援はしたくないんだけどね」
途中から小声で聞こえなかったけど確かにそうかもしれないと思った。けどなんか遥とは顔を合わせづらい。前は鬼のようにガラケーに電話がかかってきてたけど今はかかってこなくなった。
「遥ちゃんは仁君を枷のように思っていないと思うよ。それにあの子のお兄ちゃんは……いや私がいう事じゃないか」
「お兄ちゃん?」
「いや私から話すことではないかな」
そんなことを話していると岐富市探索者支援センターに着いた。
「隠しルートのことは探索者支援センターに話した方がいいと思うよ?」
「そうですね。一応話しておきますか」
ポニーテールで長髪をまとめた笑顔が素敵な受付のお姉さんに、長良川ダンジョンの隠しルートについて聞いてみると……。
「隠しルートですか? もうこのダンジョンは十年存在していますがそのようなものは聞いたことがないですね。失礼ですが、職業は?」
「ダンジョン・アナリストですね」
「その職業は、これまでで初めてのものですね。ちょっと上司に相談してみますね」
受付のお姉さんはポニーテールを揺らしながら奥の方に行ってしまった。
「仁君?」
「え? い、いや何でもないですよ?」
「私もポニーテールにすべきかな……」
橘先輩は長髪ロングの水色の髪の毛をいじりながら、ちょっと拗ねた顔を見せる。
「橘先輩は、そのままが似合ってますよ! あ、でもポニーテールもいいかも……」
「本当かい⁉」
そんなやり取りをしてると後ろから僕を呼ぶ声がする。
「仁!」
その声に振り向くと、赤髪の目つきが鋭い長身の遥がいた。最近見ていなかったけど胸がかなり大きくなったような……。
僕のあからさまな視線に気づいた遥はなぜか誇らしげな感じで橘先輩を見る。
橘先輩は、僕を絶対零度の視線で差してくる。春なのに、さ、寒い。
「俺のことは無視してるのに、まさか咲夜先輩を連れてるとはいい身分だな」
「そ、それは……」
「私から誘ったんだよ。仁君の職業にひかれてね」
「はっ! 別の女が良かったのか。そうかいそうかい。俺が悪かったよ」
「遥! 無視したのは謝る。でも僕はお前の枷になりたくなかっただけなんだ」
「地味職が枷になるわけないだろ! そんなクソみたいな職業! 俺はな! そういううじうじしてるやつが一番嫌いだ! あのクソ兄貴みたいに……」
遥は感情を暴走させているように見えた。でも僕は何も言えなかった。
遥の周りにはパーティーメンバーと思わしき女性が三人いたが、すごくおろおろした感じだった。
そのタイミングでポニーテールの受付嬢のお姉さんが戻ってきた。
「何の騒ぎですか! これ以上騒ぐなら警察を呼びますよ!」
「チッ、もういい。帰るよ」
「さあ、お二人とも。隠しルートについて上司が話を聞くそうです」
「仁君、行くよ」
「はい」
「隠しルートだと……?」
後ろから遥の呟く声が聞こえた。
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