第三話 一方十ちゃんねるでは……
僕は朝目覚めると家に一台だけあるデスクトップのPCを起動する。いつも通りウィーン、ウィンドウズとよくわからない起動音が鳴り、十分くらい放置して立ち上がるのを待つ。
まず調べたのは僕の職業についてだ。公式の職業一覧サイトを見たが、やっぱりダンジョンアナリストはなかった。仕方なく、英和辞典でアナリストの意味を調べると一番近いのはアナライズ、つまり解析という意味が一番近かった。
「ダンジョン解析者ってことなのかな? 他に情報はないかな」
僕は十ちゃんねるを覗いてみることにした。
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探索者板【速報】新職業「ダンジョンアナリスト」爆誕! 藁藁藁
1 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 1012:34
ダンジョンアナリストって何? 公式サイトにも載ってねーぞ(笑)
2 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 10:13:12
また変な職業増えたな藁
3 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 1013:45
どうせハズレ職だろ藁藁藁
↑
すまん藁藁
5 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 10:14:28
つーか、職業診断テストの最底辺じゃね?
昨日診断受けたやつが引いたらしいぞ
7 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:15:01
うわぁ……(合掌)
むしろ逆にすげえわ
10 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:16:14
殴れるの?戦えるの?
12 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:16:57
>>10 いや、無理だろ藁
14 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:17:38
えっ……(絶句)
もう探索者辞めた方がいいんじゃね?
15 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:18:02
いや、でも情報系の職業って意外と強くね?
実は解析職最強説とかないの?
17 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:18:40
そもそも解析職がほぼない藁
↑
すまん藁藁
18 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:19:07
つーか「アナリスト」って何やる職業なん?
説明すらないんだが?
20 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:20:10
公式「ダンジョンアナリストの詳細は現在調査中です」
公式すら知らなくて草
22 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:21:55
【悲報】ダンジョンアナリスト、謎すぎる
23 :名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:23:14
そいつ、ダンジョンにも穴はあるからって言って会場を沸かせたらしい藁
24:名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:26:27
おい、やめれ藁藁 もうそいつお笑い芸人になれよ藁。
25:名無し探索者 :200X/XX/XX(水) 16:28:15
ダンジョン穴掘り氏爆誕藁藁。
↑
ウホッ!
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僕は乾いた笑いを浮かべる。
「まあこんなもんだよな」
ほぼ予想通りだった。ネットの連中ってこんなもんだよ。
「それより公式が調査中という文が面白いな」
つまり僕が初のダンジョンアナリストってことになるなあ。ある意味、自分がこの職業を一から解明するチャンスだとポジティブに考えられる。
「むしろ面白いな。それにしてもダンジョン穴掘り氏はおかしいだろ」
僕は普通に笑いながらもちょっとワクワクしていることに気づいた。
「まあ僕はこの職業をなんだかんだ気に入っているってことだね。とりあえずステータスと職業の説明を見るか」
僕はステータスオープンと唱える。「ダンジョン診断テスト」を受けると自分のステータスとスキルを見られるようになる。
「これも謎だよなあ。ステータスオープン」
名前: 青井 仁
年齢:十八歳
職業: ダンジョンアナリスト(解析士)
Lv: 1
HP: 100/100
MP: 50/50
STR(筋力): 5(一般人レベル)
DEX(敏捷): 10(ちょっと素早い)
VIT(耐久): 5(打たれ弱い)
INT(知力): 25(知的才能あり)
WIS(判断力): 30(解析特化)
LUK(運): 10(普通)
スキル
《模写》
•自分で見た風景を模写可能。
《瞬間記憶》
•見たものを即座に記憶できる。
《解析》
•???
•????
•未知のダンジョンに挑むほど真価を発揮するスキル。
所有物 アナリストのメモ帳 万年筆(アナリスト専用)
「《解析》が良くわからないけどそれ以外は結構いいかもな」
ステータスやスキルはあまり人には見せないという風潮があるので、ほかの人の情報はわからなかったが、僕は悪くないスキル構成だと思った。攻撃スキルがないのは痛いと感じたけど……。
「それにしてもアナリストのメモ帳と万年筆は何なんだろうな」
メモ帳と万年筆を出してみるもそこまで凝ったものではなく書店や文具用品店で売られているものと一緒だった。安物ではないけど高級品でもないという感じ。
「ダンジョンで使えば何かわかるのかな」
メモ帳と万年筆は置いておいて、現状どうすればいいか考えてみる。
ダンジョン・アナリストは攻撃スキルが存在しない。そのため、ホームセンターに行って武器になりそうなものを買って戦って成長するしかない。
「うーん、でもメモ帳と万年筆があるってことはメモを取ることが結構重要そうだよな」
「それにシルクハットおじさんが言っていたことも気になる」
RPGの始まりの地は謎に満ち溢れている。二ホンのダンジョンの始まりの地は……。
「長良川ダンジョンだね」
川の中州にできた二ホン最初のダンジョン。
ダンジョン庁が専用の渡し船を業者に頼んでいる。
雨が降っていて増水しているときは入れないダンジョンでもある。
難易度は初心者向けでダンジョン死亡率は一番低い。
岐富市の最初のダンジョンはここがいいとおすすめだ。
「問題はパーティーだよね。最初の探索は強制パーティー攻略だからなあ……」
一瞬、遥にパーティーを組んでくれないかと頼もうかと思ったが、僕の意地がそれをやめさせた。
「はあ、どうしようなあ……」
いい考えが浮かばず、その日は頭を抱えることになった。
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