第二十八話 ダンジョン料理と咲夜先輩の告白
僕達は匠屋に似た料亭で戦った後、三回くらい、別の料理屋やチェーン店で戦った。
ゴストやモックに咲夜先輩の希望で高そうなイタリアンのお店でモンスターと戦った。なんかこういう店に行くのが憧れらしいよ。
僕を見ながらずっとそれを言うので、連れて行ってほしいのかな? ってちょっと考えたのは内緒だよ。遥はそれを若干いらいらしながら見てた。
戦って分かったことは料理屋によって完全に違うモンスターが出る訳ではないこととその料理屋の値段によって強さも上がることだった。
オムライスバードやスパイスバタフライはゴストやイタリアンのお店でも出てきた。
だが一々戦う相手が美味しそうな匂いをさせているので僕達はおなかがすいた。
「仁君、休憩にしよう。もうお昼の時間だよ。おなかがペコペコ」
「橘先輩の言うと通りだな」
「でも休む場所はどこにするんだ?」
徹さんがもっともなことを言う。
「それは解析で見つけてあるんですよ!」
僕は料理街の中心地に向かいながら意気揚々と言う。
「……流石アナリスト」
透子さんがほめてくれる。
「あたしもずっと見てたけど仁はんの分析力は本物や。悔しいけどな」
琴葉さんがそういう。
呼び方は自分だけ苗字呼びはいやや! って言われたので下で呼ぶことになった。
咲夜先輩が、私も先輩ってつけなくていいんだよって言いながら、圧を掛けてきた。
咲夜先輩はまだ隠していることについて話してくれないからって言うと不満げな顔をしながら今日の夜、話すよって言ってくれた。
「遥ちゃん以外には内緒だからね」
「わかりました。咲夜先輩」
「……夜にはちゃんと言い方を改めるんだよ?」
ちょっと不満そうな咲夜先輩は非常に可愛かった。
色々と話しながら料理屋の中心地に行くと屋根付きの屋外の調理場が用意されていた。
「仁はん、こんなんも見つけれるんか⁉ 屋外ってことを除けばそこら辺の厨房と変わらへん!」
琴葉さんはずいぶんと嬉しそうだ。
「……キッチン、何個もある」
透子さんは何故かキッチンをすんすんと嗅ぎながら嬉しそうに言う。
料理場を見回しながら、仁がふと尋ねる。
「ところで徹さん、透子さん。二人とも結構この商店街のこと詳しいですね」
「……ああ、ちょっとした縁があってな」
「縁、ですか?」
徹さんは少し照れくさそうに、でも懐かしむように語り出した。
「昔、岐富に引っ越してきたばかりの頃、ここらの学校でもちょっと浮いててさ。最初に優しくしてくれたのがこの金ヶ瀬商店街の人たちだったんだ」
「屋台の兄ちゃんにおごってもらった焼きそば、めっちゃ美味しかった……」
「透子、あれ三杯くらい食ってたよな」
「……四杯」
みんなが笑い出す。徹は肩をすくめて続ける。
「そんな街が寂れていくのを、ただ見てるのは性に合わないってだけさ」
「“恩返し”なんですね」
「……うん」
僕達は様々なダンジョン食材が入った冷蔵庫を見つけた。どうやら土地神様からの贈り物らしい。メモ書きがマグネットで張り付けてあった。
「何々、ダンジョン内でしか使えん冷蔵庫じゃ。持ち運びは無理じゃが食材は自然に補充される。屋台とかに使ってもいいんじゃぞ? か」
このダンジョン内で料理街以外にも屋台が並んでほしいと思っているんだろうなと思わせる内容だった。
「よし、あたしが匠屋直伝のオムライスを作ったるわ!」
「僕も焼きそばくらいは作れるよ」
「私はタコ焼きくらいならできるかも」
「俺は仁と橘先輩を手伝うぜ!」
「俺は食う方に回ろうかな」
「……私も」
琴葉さんがオムライスのオムレツを固めに焼きながらチキンライスを載せてきれいに包んでいる。
「トントン、じゅう……はい完成や!」
僕は鉄板の熱さにおびえながらも麺をほぐして悪戦苦闘中だ。
「あちちっ! でもちょっと楽しいかも」
咲夜先輩はタコ焼き機でたこ焼きが綺麗に丸にならないことに苦戦していた。
「うわ、全然真ん丸にならない……」
横で遥が器用にクルクルとたこ焼きを回して手伝っていた。
「こうやって、くるっとな。橘先輩、こうやるんだよ」
完成したのでみんなでテーブルの席について手を合わせる。
「「「「「「いただきます」」」」」」
「琴葉さんのオムライスうまっ! お店の味だよ、これ」
「当たり前やろ! 匠屋の一人娘なんやからな」
「仁君の焼きそばもちょっと焦げてるけどいい感じだね」
「……いっぱい食べる」
「透子は食べすぎだ」
「たこ焼きもうまいこと焼けてるぞ!」
遥に手元にたこ焼きを運ばれ、口に入れられるとカリカリで中はとろっとした最高のたこ焼きだった。
遥は幸せそうにたこ焼きを運んでくる。ちょっと目つきがきつくなった咲夜先輩が負けじと焼きそばをスタンバってる。
い、いやそんなに食べれない……。琴葉さんは何気に徹さんにオムライスをアーんとしていた。あれあれ?
透子さんは手元が分身してるのかと思うくらいの速さで口いっぱいに焼きそばを頬張っている。
だがフードを下ろした透子さんはピンク色の髪でくりくりとした目が特徴的なかわいらしい少女だった。
「……仁、食べる?」
「う、うん」
何故か、透子さんにも餌付けされて僕はもう無理! と言っても食べさせられ続けた。
咲夜先輩と遥が何かを目線で合図しているのが印象的だったよ。
冷蔵庫の中を覗くと新たな食材が補充されていた。土地神様も見てるのかな。
金ヶ瀬ダンジョンを通じて、商店街に笑顔が戻ってくるといいなあって思った。
僕が用意していたアイテムボックスから出した大きいテントで寝ることになった。
「……仁、こんな大きいテントどこから出したの?」
「仁君、それは俺も疑問だな」
「は、ハハハ、勿論バックパックの中から出したに決まってるでしょ?」
うまくごまかして、見張りの順番を決めて、食後の自由時間とする。
僕と遥と咲夜先輩はテントから少し離れて、話をすることにした。
「橘先輩が仁とおれに話したいことって何なんだ?」
「うん、それはね……私がソロで探索者をしていた理由につながるんだけど」
咲夜先輩がためらいながらもそっと口を開く。
「橘家の決まりとしてね。パーティーの一員として認められる異性と組んだ時に、その異性を橘家の婿として引き入れるって風習があるんだ」
「な⁉」
「え?」
そ、それってどういうこと?
「橘家の長女としてね、仁君を婿取りしたいんだよ」
え、えぇえええ! これは逆プロポーズ?
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