第二十七話 オムライスバードとスパイスバタフライ
僕はまずオムライスバードをクロノグラスの照準スコープで覗き込む。スキル解析も併用する。
■オムライスバード(幻餌系魔獣)
危険度ランク:D
▼ステータス(観測照準より)
•HP:980
•STR(筋力):35 ※体当たり・急降下攻撃に注意
•DEX(敏捷):40 ※飛行速度と空中制御に優れる
•VIT(耐久):25 ※翼は硬めだが胴体は柔らかい
•INT(知力):12 ※単純な戦術パターンを理解する
•WIS(魔防):10 ※魔法・属性攻撃に弱い
•LUK(運):22
▼行動傾向
•空中遊撃:高所からの急降下体当たり。素早く上下に動き、前衛を翻弄する。
•
•巻きオムウィング:翼を巻き込むように広げ、ケチャップ状の粘液を飛ばしてくる。視界を遮り、足元をベタつかせるデバフ効果あり。
•極熱ブレス(低出力):短距離に火の玉を吐く。見た目に反してそこそこ熱いが、香ばしい卵の匂いが立ち込め、集中力を削る。
▼弱点部位
•胴体下部:装甲が薄く、打撃や火属性に特に弱い。
•左翼付け根:射撃・爆破系攻撃でバランスを崩しやすい。
《解析結果:オムライスバード》
金ヶ瀬ダンジョンに出現する幻餌系魔獣の一種。
外見はふわとろオムライスそのものの体躯を持ち、翼を広げて飛翔する中型飛行型。
本来は土地神に供されていた料理の“記憶”が魔力災害を通して魔物化したものとされる。
機動力に富み、空中戦では厄介な相手だが、魔法防御が低く、冷静に対処すれば脅威度は中程度に留まる。
ごくまれに「黄金卵」をドロップし、これは高級料理店で供される。極めて価値が高い。
なるほど、こいつの名前はオムライスバードというのか。金色の羽がそれっぽいな。もはや自分からオムライスになりたいのかもしれない。ステータスは結構柔らかめだから大鬼スライムほどの脅威ではないかもね。
胴体下部や左翼付け根は狙い目だな。
■スパイスバタフライ(幻餌系魔獣)
危険度ランク:D
▼ステータス(観測照準より)
•HP:720
•STR(筋力):18 ※物理火力は低いが油断は禁物
•DEX(敏捷):55 ※飛行速度が高く、回避行動が素早い
•VIT(耐久):15 ※全体的に脆く、打撃に弱い
•INT(知力):20 ※戦況に応じて行動パターンを変える程度の知性あり
•WIS(魔防):28 ※属性耐性があり、特に火属性には強い
•LUK(運):30 ※状態異常の発生確率がやや高い
▼行動傾向
•スパイス鱗粉散布:羽ばたきと同時に範囲内に香辛料の混ざった鱗粉を撒く。命中した対象は【目の刺激】【くしゃみ】【涙】などのデバフを受ける。
•催涙飛翔:一定時間、前方に煙のような粉塵を放ちながら飛翔。視界妨害+行動遅延効果あり。
•ペッパーラッシュ:低空を旋回しながら小型の“粒状スパイス”を連続で飛ばす物理魔法攻撃。命中すると痺れ+味覚異常の効果あり(軽度)。
▼弱点部位
•腹部の下翼膜:薄く透けた構造で、風・雷属性に弱い。爆発系にもダメージが通りやすい。
•胸のスパイス核:羽をたたんだ瞬間に見える核状の器官。命中すれば大ダメージを与えられる。
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▼《解析》表示:モンスター紹介文
《解析結果:スパイスバタフライ》
金ヶ瀬ダンジョンにて観測される幻餌系魔獣。
鮮やかな鱗粉をまとう大柄な蝶のような魔物で、その体内に“香辛料エネルギー”を蓄えている特殊個体。
飛行能力に優れ、鱗粉を介した状態異常攻撃に特化しているが、打撃耐性は低く、爆破・風圧系の魔法に弱い。
素材としては「香る鱗粉」「乾燥ハーブの羽根」などが採取可能で、食材というより薬膳・香料の用途に適する。
やはりスパイスを利用した目潰しやしびれが厄介なモンスターだね。火属性に強いのは意外かも。でも透子さんは色々な属性を使えるからここは対応できそう。先にスパイスバタフライを狙うのはいい判断だったな。
分析を追えた一秒後にはスパイスバタフライが香辛料の混ざった鱗粉を風と共に飛ばしてきた。広範囲に飛ばしてくる。これは厄介だ。
「まずい。透子さん!」
「……私の爆発はすごいよ?」
透子さんの持っている石造りの杖の先の透明な宝石に緑色の光が纏わりつき、幾何学的な魔法陣が宝石の先に輝く。
「渦巻く風の爆弾!」
スパイス鱗粉がこちらに届く前に回転する渦巻く風が前の空間に発射され、空気の弾ける音と共に風爆弾が作裂する。
「……ほら、言ったでしょ?」
透子さんはなんか変なテンションになっている。
気になるがここはスルーする。
オムライスバードが空中から不規則に飛びながら僕に向かって体当たりしてくる。
「徹さん!」
「俺に任せろ! 挑発陣形!」
一定範囲の敵を強制的に徹さんに向かわせるスキルだ! 左手に大盾を構えて佇む姿は小さな城壁そのものだった。
「続けて城壁化!」
ガンッ!
短時間、VITが1.5倍に上昇するスキルも併用している。
オムライスバードは徹さんに吸い寄せられるように突撃し、鋼鉄製の大盾に弾き飛ばされた。徹さんは一ミリも後ずさっていない。
「咲夜先輩、遥! 弱点は下の胴体だ!」
「任された!」
「一番槍は俺だ!」
遥が先にオムライスバードに近づき、下の胴体目掛け、残像が見えるほどの速さでトンファーを叩きこむ。
右、左、フック、下からのアッパー!
オムライスバードの胴体が紫色になるほどの連撃を叩きこむ。
「遥ちゃん、どいて!」
「おうよ!」
遥がスイッチするように飛びのき、桜の花弁が霞み、分身のような残像を生み出しながら咲夜先輩が迫る。
その一撃は儚くてきれいだと思った。
「桜霞ノ太刀!」
オムライスバードのギリギリまで鞘に刀身を納めて走り、極限の一太刀を生みだす!
遥が攻撃していた箇所に寸分の狂いもなく、鮮やかな一太刀を浴びせた。
ギシャアアアアアア!
オムライスバードの胴体は内出血していた箇所から血が噴き出る。
後ろに倒れ、じたばたと地面を転げまわる。
「仁! 蝶の方が来るぞ!」
スパイスバタフライは素早くサポートに回ろうと僕たちの頭上を飛びながら催涙飛翔をしようと優雅にホバリングしている。
だがそれは僕の手の内だ。見ていたよ、お前の未来。
「攻撃弾! 打ち抜け!」
「ピイイイイイイイイ!!」
クロノグラスの照準スコープで未来断面を併用して二秒先の未来の場所を予測して、左の翼の根元を貫いた。
スパイスバタフライは、地面に力なく落ちてくる。遥の近くに落ちてきたので遥が武装切替して大剣で頭にとどめを刺そうとする。
「自分、意外とやるやん! 少しはあたしにも出番回してや!」
竹田さんの声がするので振り返る。
後ろで竹田さんが神に祈るように目をつぶり両手をそれに掲げる。
すると両手に白金色の光が集まり、遥にそれを向ける。
「ブレスフォース! 遥はん、あたしの愛を受け取ってや!」
スキル解析で見たところ、味方一人の攻撃力と防御力を1.5倍させるバフ魔法らしい。
「愛はともかく、バフは歓迎、だ、ぜ!」
遥は叫びながら大剣を振りかぶり、腰溜めを作り有名な狩りゲーのハンターのように振り下ろす!
大剣は空気を押しつぶしながらスパイスバタフライの頭に食い込み、その脳天ごと断ち切った。
後ろで咲夜先輩が舞い散る桜を背景にオムライスバードを一刀に切り伏せ、徹さんの重い大斧の一撃でとどめを刺していた。
「よっしゃあ! 快勝だぜ!」
遥の元気な声で、戦闘は締めくくられた。
オムライスバ―ドからは卵と旨そうな鶏肉が取れたよ。
スパイスバタフライからは三種類の芳醇な香りのスパイスが取れた。
僕がバックパックにしまうふりをして、アイテムボックスに収納してどんなアイテム化メモ帳で見ておこう。
僕達が快勝に沸いていると後ろから気配がしたので振り向くと……。
「土地神様!」
そこには黒いゴスロリの服を着た少女が立っていた。
「最初にここに来るとはお目が高いのう。解析者とその仲間たち、そして匠屋の娘よ」
「土地神様やん! なんであんた命を懸ける真似をしたんや!」
「それは妾の記憶を見たお主たちならわかるであろう。この商店街を救うにはそれしかなかったのじゃ」
「でも!」
「くどいぞ。妾のためを思うならダンジョンの奥まで来るのじゃ。わかったな、解析者よ」
「はい。わかりました」
「では、奥で待っておるぞ」
黒いゴスロリ姿の少女は消えてしまった。
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