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第十九話 護るための刃

 僕達は長い間抱きしめあった後離れた。


「あ……」


 遥が何故か名残惜しそうだったけど、こんなに乙女だったかな?

 それを見て咲夜先輩が何かを考え込んでいた。

 遥はもじもじしながら、恥ずかしそうに言った。


「じゃあ、次は仁と二人で……」

「ダメ」

「良いじゃねえか。減るもんじゃないし!」

「仁君成分が減るんだよ」

「なんだよそれ!」


 二人が言い争い始めるのをぽかんと眺める僕。

 この二人は昔から家の付き合いがあって仲良かったはずだけど、なんで二人ともつんつんしてるんだ? だめだ。よくわからん。考えることを放棄した僕は二人の間に入る。


「はいはい、そこまで。お寺の奥に報酬があるからそこに行こう」

「よし、じゃあ行こう」

「ったく、橘先輩のケチ。二人で抱き合ってたのによう……」


 二人は返事をするが、遥は最後は小声でぶつぶつ言っていた。


 改めて、解析をすると、緑色の光が三つと水色の光が一つある。

 おそらく、五体のモンスターを倒した報酬だろう。

 三人でお寺の襖をあけて中に入ると、三つの宝箱と一つの台座があった。


「解析! 罠は……なさそうだね。この三つの宝箱はアナリスト専用の報酬みたいだ」

「こっちの台座の方は誰のだい?」

「そっちは咲夜先輩の報酬ですね」

「仁君、こっちの台座の物が……私を呼んでる」


 その台座には水色と桜色の光に包まれたベールがかかっていて中身が見えなかった。

 でも何だか、美しさと優しさが感じられる。まるで咲夜先輩みたいだ。


「ちぇ、俺のは無しかよ」

「うーん、そうなんだよね。助けに来てくれたのにごめん」

「良いんだよ。そうだな、貸し一つってことで!」


 遥は穏やかな笑みを見せながらも鋭い両目で僕を見つめる。その表情には昔の遥にはなかったしなやかな強さが見え隠れしていた。ここに来るまでに何かを乗り越えたのかもしれない。

 

 咲夜先輩がその間に台座に近づくと、光のベールに変化が起きる。

 水色の光が和装の袴姿の女性の姿に変わっていく。背景の空間には咲き誇る春の桜が風に散りながら美しい光景を見せている。


「きれい……」

「すごいですね」

「すげえな」


 袴姿の女性は僕と咲夜先輩と遥に目線を向けるとニコッと笑った。

 ちりん! 

 風鈴が一斉に揺れる音がした後、僕たちの周りの空間は咲き誇る桜並木の中に飲み込まれる。


「すごいよ! この桜、触れるよ!」

「春らしいいい匂いだな」

「花見してえな。まあ俺は花より団子派だけどな!」


 何故か、遥が照れて強がっていた。


『解析者と封印をつかさどる姫巫女、その二人の矛であり盾でもある勇敢な戦乙女』

『よく聞きなさい。貴方たちはまだ戦力が足りない。癒しの力を持つ者を救いなさい。この先を進む光となるでしょう』


 和装の袴姿の女性は儚げな笑みを浮かべて、忠告をくれた。


「まさか⁉ 魔力災害を鎮めるために犠牲となった橘家のご先祖様ですか?」

『そうですよ、今代の姫巫女。ですが貴方の力はまだ眠ったままのようですね』

「そうなんです。私は橘家の歴史にふさわしくない……」

『まだ眠っているだけです。貴方はとても素敵。良き殿方もいらっしゃるようですね』

「うみゅっ!」


 咲夜先輩が悶絶してる。殿方って誰? そんなにお似合いの思い人がいるのか。むむむ、気になるぞ。


 僕が考え込んでいると何故か僕以外の三人がため息をつく。


『(今代の解析者は馬鹿なのでしょうか? 封印された道の前でしていた行為を忘れるとは)』

「(仁君を無償に殴りたい)」

「(ったく、俺も後でイチャイチャするからな。橘先輩の前で)」


 え? 今、何もしてないのに、三人の心情が声になって聞こえた。でも何故か言葉はわかるのにその感情が伝わらない。美味い例えができないけどこんな感じ。でもこのスキルは“心情解析”と呼ぶべきものだ。あまり人には言いたくないから伝えるのはやめておこう。


『はあ。まあいいでしょう。今代の姫巫女にはこれを授けましょう』


 和装の袴姿の女性がとりなして先に進めてくれる。


 桜並木の桜の花びらが風に吹かれながら舞い落ちていく。鼻をいい香りがくすぐる中、その勢いは激しさを増し、桜色の竜巻の中に飲み込まれる。やがて花びらが光となってふわりと咲夜先輩の前で形となった。


 それは一本の美しい長刀であった。桜色の可憐な光を帯びていて、すごく咲夜先輩に合ってるって感じた。


『この刀は護桜(ごおう)。大切なものを護るための刃です』

 僕達は息を吞んだ。


小説をいつも読んで頂きありがとうございます。面白かった、また読みたいという方は高評価やブックマークをお願いします。作者の励みになります\( 'ω')/


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