青い小鳥の紙飛行機
よろしくお願いします。
子供の頃、初めて折り紙で作った紙飛行機に魅了されて以来、高校生になった今も神木朔は、紙飛行機を飛ばすことが大好きだった。
毎日一つ、その日折った渾身の出来の紙飛行機を校舎の屋上から空に向かって放つ。
教師にゴミを撒くなと怒られそうなものだが、来年の春には廃校が決まった学校ではいろんな物が緩くなっていた。
三年生の朔に、後輩となる一年や二年は居ない。朔たちが最後の卒業生となって、この学校は歴史を閉じる。
家から歩いて通える距離だからと廃校になることを分かっていて受験した高校に思い入れがあるわけではない。三分の一が中学からの顔見知りな同級生にもだ。
だが、寂しさを感じないわけではない。
思ったより、この学校が好きだったらしい。
◇
ある日、鮮やかな青の折り紙で折った紙飛行機が風に乗って、隣のクラスの美月望という少女の元に降り立った。金曜夜にやっている映画に出てきた小鳥の形に折られた手紙が気になった朔が折り方を研究して作った小鳥型の紙飛行機だ。
その紙飛行機の翼には、『幸せの青い鳥です。いいことあるよ』という文字が朔の下手な似顔絵とともに書かれていた。
一周回って味があるヘタウマな文字と絵に思わずくすりと笑みが漏れる。
どこから飛んできたのだろうと周囲を見渡し、校舎の屋上からではないかと思った美月は、誰が紙飛行機を飛ばしたのか探すために屋上へ向かった。
そうして、そこで朔と出会う。
顔は良いのに目が死んでると言われてる男子生徒とギャル寄りでギャルじゃない女子生徒。
お互い顔は見たことあるが名前は知らない相手に、なんだかくすぐったい気持ちになりながら名乗り合う所から関係が始まった。
「なんで屋上から紙飛行機飛ばそうと思ったの?」
あの日以来、二人はその日あった出来事や愚痴など、取り留めない話をしながら放課後の屋上で紙飛行機を作って飛ばす。
「別に理由はないけど……」
そこで朔は、なぜそうしようとしたのかを改めて考えた。
「どこまで飛んでいけるのか、見たかったのかもな」
高校生活の終わりと母校といえる学校の消失。思わぬ感傷に、鳥のように滑空する紙飛行機に希望を見出したかったのかもしれない。
「ロマンチック〜」
「ンだよ」
「すきだよ」
「?!」
「青春ぽくて」
「謀ったな」
「ニホンゴムズカシイデス」
あの日、美月は疲れていた。
いいことあるよ。
足元に降りた青い鳥に折れかけの心は励まされたのだ。
だから、明日も二人は紙飛行機を飛ばす。
お時間いただき、有難うございました。