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 リーダーたる王家の者からの冷たい視線と後ろからの殺気で三人の男たちは小刻みに震えていた。


「貴方達の自己擁護など嘲笑われているだけですけどね。そんなこともわからずペラペラと話す姿は滑稽であると噂になっておりますわよ」


 ヘレナたちから蔑まれ、野次馬たちから失笑されているが、これまでのように傲慢な態度は出せない。


「王女殿下。ヨネタス卿はその中には含まれませんよ」


 不意にアロンドがセイバーナを擁護した。


「あの……。私が心配するのも烏滸がましいですが、婚約破棄となるとご令嬢方の醜聞になるのではないですか?」


 セイバーナはエトリアと目が合ったタイミングで疑問を投げる。

 セイバーナはヘレナたちの醜聞を気にした。エトリアはそんな優しい質問をするセイバーナに目元を緩ませる。


「そこは王家の出番ですわ。今回の騒動と令息たちの有責理由を示した書面を全貴族家に通達することになっておりますのよ。つまり全貴族が貴方達の悪行を知ることとなるのです。事実を包み隠さず、お名前付で、ね」


 『包み隠さず』ということなら彼らの失態の中にはリリアーヌの乱交も名前付きで書かれるかもしれない。

 野次馬の数名が顔を青くする。


 女子生徒たちの歓声があがり、男子生徒三人は頭を抱えて床に臥せる。


「ヨネタス卿はわたくしの誹謗をしていらっしゃらないけど、お仲間と思われてしまう覚悟はなさってね」


「はい……」


「そっ! そんなの王家が知るわけないんだっ! 予想でそこまでするなんて酷すぎますっ!」


 テリワドが頭を振り乱して叫ぶ。レボールとサジルスも「そうだそうだ」と必死に声を上げた。


「それも王家への侮辱ですわよ。罪を重ねることがお上手ね。

貴方達ではないのだから、証拠も証人もなくそのようなことをするわけがありませんでしょう」


 エトリアは呆れをわかりやすく眉を寄せてため息をつく。


「先程から申しております。わたくしは王女。王女が通う学園では警備が強化される。

貴方達は王族であるわたくしに危害を加える可能性のある危険分子として厳しい監視下に置かれていたのです」


「い、いつから?! なぜっ!?」


 レボールは敬語も忘れている。

 レボールが敬語ではなく質問をぶつけたが、エトリアはここでは些末なことだと咎めたりはしない。


「一年前、貴方達が不貞を始めた頃からですわ。わたくしはヘレナさん、メリアンナさん、ケイトリアさんとは入学前からのお友達ですもの。わたくしのお友達を裏切ることで、わたくしに被害がおよばないともいえないと判断されたのですわ。

実際にわたくしの婚約者であったヨネタス卿をそのお仲間に誘い込み、わたくしに被害を与えているではありませんか」


「すべて知られている……??」


 サジルスの目は床に向けられているが何も見えていないようだ。


 項垂れる三人にエトリアは説明を続ける。


「ホヤタル卿」


「はい……」


「貴方のお父上が騎士団に辞職願いを出されました」


 レボールの父親は騎士団副団長である。


「はっ!??」


 レボールは驚愕して目が零れ落ちそうなほど見開く。急に父親の話となったことにレボールはついていけない。


「貴方が女性を貶めるような発言を振り撒いていることに、『息子に騎士精神を持たせられなかった自分が副団長でいる資格はない』と仰っているそうです。

騎士団団長様の強い要望で騎士養成学校の職員になられることでご納得いただきましたが、侯爵のお気持ちは大変頑なで団長様もご苦労なされておりましたわ。現役にお戻りになることはないと宣言なさったと聞きました」


「そ、そんな……」


 レボールは啞然とした。

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