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 アロンドは頭を下げて話の主軸をケイトリアへ譲った。


「エトリア様は先程ご自身の血の価値だと仰っておいででしたが、決してそれだけではありませんわ。

エトリア様は大変麗しく、聡明で、お優しく、教養もあり、わたくしたちはエトリア様とご一緒させていただけることに喜びを感じておりますわ」


 メリアンナとヘレナも大きく頷く。


「ですから、エトリア様の魅力で釣書が集まっているのだと思います。だからこそ、ご婚約者様がお決まりになっても諦められない殿方が多いのだと思いますわ」


「私もそう考えておりますよ」


 メリアンナとヘレナだけでなく、アロンドまでケイトリアに賛同する。


「まあ!」


 ケイトリアたちに褒められたエトリアは頬を染めた。


「本当にそうなら、わたくしでも幸せな夫婦となれるかしら」


「「「もちろんですっ!」」」


 ケイトリアたちの勢いにエトリアは目をしばたかせ、すぐに四人で笑いあった。


 アロンドはエトリアを優しい瞳で見つめた後、セイバーナに向き直す。


「エトリア王女殿下とヨネタス殿がお気持ちで繋がっていれば、釣書の方々も諦めたでしょう。

または、ヨネタス殿が仰ったようにエトリア王女殿下がヨネタス殿に執着していれば、諦めたでしょうね。

お気持ちを揺らすことは難しいですから。

しかし、お二人は政略結婚のためのご婚約以上にはなっておられない。だから釣書が止まらないのです」


「そうなのね。わたくしはそこまでは気が付かなかったわ」


 エトリアが自嘲して苦笑する。


「恋愛感情がなくとも、ヨネタス殿が政略として、そして王女殿下の伴侶として、価値があると示さねば、国が、公爵家が、侮られることになるのです」


「ヨネタス卿。わたくしが貴方に全く執着していないことは理解なさったかしら?」


「はい……」


 セイバーナは小さな小さな声で返事をした。


「さあ。一つ目の願いは叶えました。二つ目は何かしら?」


 エトリアは先程より和らいだ瞳をセイバーナに向けた。セイバーナの脳内はパニックを起こしており、すでに嘘も誤魔化しもできなくなっている。


「あ……の……我々の総意の願いでして……」


 セイバーナは震えた声で話し始めた。


「「「お、おいっ!」」」


 一緒に来ていた男子生徒三人は慌ててセイバーナの肩を掴んだ。セイバーナは虚ろに彼らを見る。


「集団でこちらに押しかけておいてヨネタス公爵令息様だけの責任になさるおつもりでしたの?」


 ケイトリアは眉を上げてびっくり眼になった。もちろん、演技で。


「「「プッ!!!」」」


 野次馬たちから失笑が漏れる。セイバーナに声を上げた三人は失笑した者を見咎めようとしたが、人数の多さに気後れした。


 メリアンナは妖艶に微笑みケイトリアの疑問に答えた。 


「まさか。高位貴族令息であるこの方々がそんな卑劣なことをなさるわけないではありませんか。

成績で負けたことを大声で罵り不正であると訴えるようなことしかできませんわ」


 テリワドは自分のことを言われているとわかっているので歯を食いしばって元婚約者メリアンナを睨む。

 テリワドは一学年時は万年二位であったが、二学年になってメリアンナに抜かれた。最近ではさらに成績を落としている。

 二学年になる頃落ちたのは理由がある。

 ちなみに首位はいつもエトリアである。セイバーナは三位か四位。


「うふふ。剣で負けた相手に無理矢理再戦するように仕向け、忖度をさせて勝ちを拾うこともできますわよ」


 レボールの元婚約者ヘレナは本当に楽しそうにレボールを小馬鹿にした。レボールは驚きで眉を寄せる。その男子生徒と二人だけの秘密のはずだ。

 レボールもまた一年生の頃は正々堂々として勝っても負けてもそれを受け止めていた。だが、これまた二年生になる頃、不正をしても勝ちにこだわるようになった。

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