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 家族に迷惑をかけることも慮れない三人の男たちに対してエトリアはため息を隠さない。


「ご令嬢方の家は貴方達の愚行をわかった上で婚約解消という温情のある判断をした。

それは、ひとえにコニャール王国のためです。

高位貴族令息が一度に三人も愚者であると知られれば貴族の威厳にも関わりますし、王国の恥辱にもなります。涙を呑んで妥協してくださったのですよ。

それもわからず愚行を追加した貴方達に温情を取り下げるのは当然ですわね」


 アロンドがコップをエトリアに差し出す。エトリアは小さく一口飲んでアロンドに返した。


「ふぅ。令嬢方の家が国の恥辱にならないための温情を取り下げたら、貴方達の家が恥辱にならないための行動を起こさねばなりませんね。

どうなさるのかしら?」


「その点につきましては、ヨネタス公爵家を含めました五家が王城に緊急召集されているはずでございます」


 廃籍か幽閉か。とにかく彼らにいい結果にはならないことは容易に想像できた。


「うわぁ!!」


 アロンドがエトリアの質問に答えるとサジルスが逃げ出そうと動くが立ち上がることもできずに騎士に押さえられた。


「ツワトナ卿。貴方はまだ公爵家嫡男ではありませんか。恥ずかしくない行動をなされたほうがよろしいわ」


「終わりだぁ!!」


 サジルスが泣き叫ぶが誰も声をかけない。


『妹の人生を狂わせておいて何をほざくのだ』


 ひとつ下の学年の生徒たちの中からも憎しみの視線が刺さる。


「ヨネタス卿。書類の用意があったことでおわかりかと思いますが、わたくしと貴方との婚約は、貴方が言い出さずとも本日をもって解消されることになっていました。破棄となってしまうのはわたくしとしても心苦しいことではありますが」


「いえ。ご迷惑をおかけしました」


 セイバーナはエトリアに改めて頭を下げた。 


 エトリアはセイバーナの謝罪を受け入れるように二度首肯した。


「貴方の家がわたくしの王家の血を求めていたのですが、わたくしとしては貴方の子種ならそのお子を育ててもよいと思っておりましたのよ。

しかし、貴方の子種ではないかもしれないとなると話は変わります」


「えっ!?」


 セイバーナのあまりの驚き様にエトリアが驚いた。


「あら? ホヤタル卿、オキソン卿、ツワトナ卿がご存知だから、ヨネタス卿もご存知だとばかり」


 エトリアは知っていて当然だと思っていた。なにせ三人とリリアーヌの関係はすでに一年ほどになる。


 一年生の後半からリリアーヌと肉体関係を持った三人は二年生になる頃には、テリワドは成績を落とし、レボールはリリアーヌに褒められたくて不正をして勝ちを拾い、サジルスはリリアーヌによく見られたくて公爵家の威を使った。


 セイバーナの驚きは、三人がリリアーヌと肉体関係であったことだけでなく、エトリアがセイバーナとリリアーヌが肉体関係を持ってしまったこと、リリアーヌが妊娠しているかもしれないことを知っていることも含まれている。


 苦笑いしたアロンドがエトリアの話を引き継いだ。


「ヨネタス殿。テンソー男爵令嬢はそちらのお三方だけでなく他の男性とも肉体関係を持っておられます。この学園だけでも他に十人ほど」


「そんなの嘘よっ!」


 リリアーヌは顎を上げて目を剥き声を荒らげた。


「先程王女殿下が仰せになりました。『貴方方は危険分子として厳しい監視下に置かれていたのです』と。その中に貴女ももちろん含まれていますよ。テンソー男爵令嬢」


「嘘よ嘘よ嘘よ! そんなことされたら気がつくに決まっているわっ!」


 リリアーヌは暴れながら喚く。騎士たちも女性をどこまで押さえつけてよいかわからず戸惑っている。

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