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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第五章 王都でもこいつらは・・・
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第95話 ホント、薄っぺらい奴らだね…

 タロウとアルトの二人にとっ捕まった『スイーツ団』の下っ端三人、その後どうしたかというと。


「てめえら、俺らをこんな目にあわせてどうなるのか分かってるんだろうな。」


 そんな風に恫喝して来るけど、周りにいるお客さんはクスクスと笑っているよ。

 三人とも縄でグルグル巻きにされて、地べたに座らせられてるんだもの。

 しかも、繁華街で買って来た板を首から下げているんだ。


 アルトが看板屋で看板と一緒に買って来た板は二枚、それぞれに文字を書いてもらったんだ。


『俺達はスイーツ団だ!』


『甘味の値段を吊り上げているのは俺達だ!』


 こんな看板を首からぶら下げて息巻いても、滑稽なだけだよね。ちっとも怖くないよ。


「こうやって地べたに正座されられてるとパンチも怖くねえな。

 どうも、『パンチ=凶悪な人間』って先入観があって、ビビっちまうけど。

 何とか、パンチ恐怖症を克服できそうだぜ。」


 タロウが座らされた下っ端を見てそんなことを呟いてたよ。

 そんなタロウにアルトが言ってた。


「こいつ等みたいなゴロツキは強いのが大事なんじゃなくて、強そうに見えることが大事なのよ。

 腕っ節が強いより、人相が悪い方がメシのタネになるという薄っぺらい奴らよ。

 大概が見掛け倒しであんたより弱いから自信を持ちなさい。

 ただ、自陣過剰はダメよ、冒険者だって強い奴は本当に強いからね。」


 まあ、その辺でゴロをまいてる冒険者の大半は見掛け倒しなんだろうね。


 なんで、三人を晒し者にしているかというと。


「ねえ、アルト、こいつら三人、色々と聞き出さなくて良いの?」


 地面に転がっている三人を縛り上げながら、アルトに聞いたんだ。


 そしたら。


「まずは、並んでいるお客さんに『砂糖』と『ハチミツ』を売る方が先よ。

 お客さんをあまり待たせたらダメよ。お客さん第一が商売の基本だわ。

 それに、晒し者にしておけば、こいつらの悪事が王都に広まるでしょう。」


 アルトは、そう答えながら『積載庫』の中から首に掛けている板を取り出したの。

 あんな看板、何に使うのかと思ってたら、最初からこうなると予想してたんだね。


    ********


 あらかたお客さんもはけた頃、一人のお客さんが尋ねてきたんだ。


「ねえ、ねえ、あんた達は『メイプルシロップ』は扱ってないの。

 うちの娘が、メイプルシロップをたっぷりかけたパンケーキが大好きでね。

 メイプルシロップが高くなっちまって、このところ作ってやれないのさ。」


 すると、アルトはニンマリと笑って。


「ごめんなさいね。

 私達が住む町から王都までの間に『メイプルトレント』は見当たらなかったのよ。

 今は手持ちにないの。

 お客さんも途切れたし、広げた『砂糖』と『ハチミツ』も全部はけたところだからちょうど良いわ。

 今から、ちょっと行って『メイプルトレント』を狩って来ることにする。

 明日の朝には店に並べてあげるから、楽しみにして待ってなさい。」


「あら、そう、悪いわね。

 じゃあ、楽しみにして待っているわ。

 そうだ、近所の奥さん方にも広めておくわね。」


 アルトの返事を聞いたお客さん、そう言うと嬉しそうに帰って行ったよ。

 きっと、ご近所中に広めてくれるね。

 明日はメイプルシロップを買いに来るお客さんで繁盛しそうだね。


「おい、おめえら、いったい何のつもりだ。

 なんの恨みがあって、俺達のシノギの邪魔をしやがる。

 俺達、『スイーツ団』を敵に回してタダで済むと思うなよ!」


 縄でグルグル巻きにされても、そんな風に息巻く美人局の兄ちゃん。

 タロウに一撃でのされたのによくそんな大口を叩けるもんだと感心しちゃうよ。

 

 露店の後片付けを終えたアルトは、地べたに座らせた三人を見ながら言ったんだ。


「ここにこうやって晒し者にしとけば、もう少し大物が釣れると思ったけど。

 こんな小物で終わりだなんて、とんだ期待外れだったわ。

 こいつ等じゃ、大した内部事情も聞けそうもないわね。

 『メイプルトレント』の餌にするくらいしか、役立たないじゃない。」


 すると、


「おい、羽虫、てめえ、今なんて言った。

 俺達を『メイプルトレント』の餌にするだぁ?

 そんなことをして赦されると思ってのか。

 『スイーツ団』が黙っちゃいねぞ。」


 美人局の兄ちゃんが血相を変えて叫んでたよ。


「別にあなた達に赦して欲しいなんて思っていないわ。

 『スイーツ団』ってのがどう黙っていないのかは知らないけど。

 あんまり、おイタが過ぎるようだから、ちょっと遊んであげるわ。

 あんた達はもう用済みなんで、『メイプルトレント』の餌になってね。」


 でも、アルトは兄ちゃんを軽くあしらって、『積載庫』に三人を放り込んだの。


     ********


 そして、王都郊外、『メイプルトレント』の林にやって来たよ。

 一見、何の変哲もないカエデの林なんだけど、全部メイプルトレントなんだって。


 メイプルトレントは『ハチミツ壺』そっくりな実を付けるんだ。

 その実は『メイプルポット』と呼ばれてるんだけど。

 中に入っているのは、ハチミツじゃなくなくてメイプルシロップなんだよ。


 メイプルシロップもクマの大好物で、メイプルトレントの主な餌もクマなの。


 今も目の前で、大きなヒグマがメイプルトレントと戦っているよ。

 人の何倍もあるような大きなヒグマが立ち上がって、『メイプルポット』に触れた途端。

 やっぱり、八本の枝が目にもとまらぬ速さで動いて、ヒグマの手足を串刺しにしてた。

 そして、根っこがニュルニュルと地面から這い出してきて…。


「ひぃぃぃ! おめえら、悪魔か!

 俺達をあんな目にあわせようってのか!」


「勘弁してくれ! もうおめえらの邪魔はしねえ!」


 逃げ出そうとしてアルトにビリビリを食らった下っ端二人はもうガクブルだったよ。


 一方で、美人局の兄ちゃんはと言うと。


「てめえら、『スイーツ団』の怖さが分かってねえな。

 『スイーツ団』を敵に回したら、この国に居場所は無くなるぜ。

 今だったら、見逃してやるから俺達を解放するんだ。」


 虎の威を借るナンタラじゃないけど、兄ちゃんは『スイーツ団』がバックについてることで気が大きくなってるみたい。

 寄らば大樹で、まさかその『スイーツ団』ってのが、簡単に折れちゃう枯れ木だとは思いもしないんだろうね。


 すると、アルトは息巻く美人局の兄ちゃんを無視して、おいらに話を振って来たの。


「ねえ、マロン、『スイーツ団』って怖いと思う?

 『スイーツ団』って何者か分かるかしら?」


 なんて、わかり切ったことを聞いてくるんだもん。何かと思ったよ。


「うん? 王都にある三つの『冒険者ギルド』が結託して甘味の値段を吊り上げてるんでしょう。

 冒険者ギルドが相手なら、怖くはないかな。

 でも、良いの?

 冒険者ギルドが無くなったら、ロクでなしの冒険者たちが野放しになっちゃうよ。」


 おいらがそう答えると、美人局の兄ちゃんがビックリしてたよ。


「おい、ガキ、てめえ、何で『スイーツ団』が冒険者ギルドのフロントだって知ってるんだ。

 そのことは、構成員、全員に難く口止めしてあったはずだぞ。」


 うん、今自分で白状したよね、口止めされているんじゃないの。

 でも、兄ちゃんの口から聞くまでもないよ。


 今まで、仲が悪かった三つのギルドが、抜け駆けしないなんて有り得ないじゃない。

 三つとも足並みを揃えて『甘味からは手を引いた』って言うんだもの、結託してるとしか思えないよ。


 町の奥様方はそれを知らないから、新しいゴロツキ集団が出来たと思ってるけど。

 実際は、冒険者ギルドから看板を付け替えただけだよ。


「まったく、呆れたおバカさん達ね。

 八歳児でも分かるような手口がバレない訳ないでしょう。

 最初に『スイーツ団』の話を聞いた時からわかっていたわ。」


 アルトが呆れた顔で美人局の兄ちゃんに告げると。


「この羽虫、相手が冒険者ギルトだと知ってて喧嘩を売ろうってのか。

 てめら、正気か!」


 怒鳴り散らす兄ちゃんに向かって、アルトはケラケラと笑いながら言ったよ。


「おかしなことを言うのね。

 私、喧嘩なんか売らないわ。

 喧嘩って言うのは、似たような力の者の間に成り立つのよ。

 これから始まるのは一方的な、じ・ゅ・う・り・ん・よ。」


 だから、冒険者ギルド、潰しちゃったら拙いでしょう…。


お読み頂き有り難うございます。

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