第82話 愚か者の悪足掻き
死罪を言い渡されて逆切れしたキャラメル、王様に悪態をついたけど。
王様は、そばにいるアルトばかり気にしていて、全く取り合う気配を見せなかったんだ。
そんな王様の態度は、ますますキャラメルの気に障ったみたいで。
「ああ、そうかよ。
ヤメだ、ヤメだ。
近衛騎士団のポストでも用意してもらえれば、大人しく仕えてやろうと思っていたが。
もう良いぜ。
ごちゃごちゃ抜かすなら、てめえもぶち殺してやるよ。
せっかく、この国最強のレベルを手に入れたんだし。
何もてめえなんかに媚び諂う必要なんて最初から無かったんだよ。
てめえのレベルとその玉座、俺がもらい受けてやるよ!」
そう言うとキャラメルは、跪いた姿勢から立ち上がり、腰に下げた剣を抜いたんだ。
アルトの予想通りになったね。
アルト、言ってたんだ、自分が最強だと思っている人間が死罪を言い渡されて黙って従う訳が無いって。
どうせ死ぬのであれば、一か八かの博打を打つだろうともね。
力に溺れた知恵のない者がとる行動って、なんて読み易いんだろう。
おいらが、キャラメルの浅はかな行動にある意味感心していると。
「マロン、打ち合わせ通り頼んだわよ。」
アルトから声を掛けられた。そうそう、出番、出番。
おいらは、抜き身の剣を振り被って王様に向かって行くキャラメルの前に出たんだ。
「あんちゃん、無駄な抵抗をするのは止めた方が良いよ。
余計ひどい目に遭うだけから。」
おいらは、一応、キャラメルに忠告はしたんだけど…。
「ガキ、邪魔だ!そこを退け!」
行く手を塞がれて逆上したキャラメルは、いきなり剣を振り下ろしてきたんだ。
普通邪魔なら蹴とばすと思うけど…、八歳児なら斬るより蹴とばした方が楽に排除できるよ。
まっ、その方がおいらには好都合だけど。
「「「「危ない!」」」」
幼気な子供がキャラメルの剣に無残に斬り殺される光景が目に浮かんだんだろう。
謁見の間にいた貴族たちの中から、悲鳴にも似た声が上がったんだ。だけど…。
キャラメルが振り下ろした剣がおいらを捉える直前、キッチリとスキル『回避』が仕事をしたよ。
寸でのところで剣を躱すと、丁度おいらの目の前を剣を握ったキャラメルのこぶしが通り過ぎるところだった。
おいらは、アルトに指示された通り、キャラメルのこぶしをデコピンの要領で軽く弾いたの。
本当に軽くだよ…、でも…。
グシャ!
なんか、よく熟れた果物を地面に落とした時のような、ひしゃげた音がしたよ。
「ギャーーーーー!」
耳障りな悲鳴を上げて、剣を取り落とすキャラメル。
その場で蹲るキャラメルの前に飛んで来たアルト。
「マロン、有難う、手間を掛けさせたわね。
このくらいの中途半端なレベルの奴は扱い難くて困るのよ。
ちょっと本気になるとすぐに死んじゃうし、少し手を抜くとしぶとく反抗して来るしで。
力加減が難しいのよね。
その点、マロンに頼めば、こうして活きの良いまま無力化してくれるから助かるわ。」
そんな風に、アルトはおいらにお礼を言ったんだ。
「貴様ら、いったい何モンだ!
なんで、俺の邪魔をする!」
「私は妖精の森の長、アルトローゼン。
あんたが引き起こしたスタンピードで私の森がとんでもない迷惑を被ってね。
王様に落とし前を付けてもらいに来たのよ。
王様が国が滅びると恐れていたのは、スタンピードじゃなくて、わ・た・し・。
この子は、私が保護しているマロン。
あんたを生きたまま捕らえたかったんで手伝ってもらったのよ。
私がやるとプチっと殺っちゃいそうだったからね。」
王の弑逆を邪魔されて声を荒げるキャラメルに、冷たい笑みを湛えて名乗りをあげたアルト。
「羽虫如きが、何がプチっと殺るだ、生意気なことを。」
「あら、まだ虚勢を張る元気はあるのね、良いことだわ。
あんたには、これら恐怖のフルコースを味わってもらうのだから、そのくらい元気じゃないとね。
でも、八歳児にこぶしを破砕されて、大口をたたいても笑われるだけよ。」
こぶしを潰されて剣も握ることが出来ないのに、キャラメルは反抗的な態度を崩さなかったんだ。
キャラメルって本当に『勇者』だね、アルトを『羽虫』と呼んで無事だった人を見たことないよ。
アルトは本気で怒っているようで、顔に浮かべた笑みが更に冷たくなった気がするよ。
「ああ? 貴様、俺をいったいどうするつもりだ!」
「あんたの身柄は、今回のスタンピードの代償の一つとして私がもらい受けたのよ。
楽には死なせてあげないから、覚悟しなさい。
まずは、マロンが砂糖を欲しがっているので、『シュガートレント』の餌になってもらうわ。
大丈夫よ、ちゃんと死ぬ前に助けてあげるからね。
あんたが十分に弱ったら、最期は『ハエ』の餌にしてあげる。
あんたが、『ハエの王』から奪った『生命の欠片』、新たな『ハエの王』を生み出すために使わせてもらうわ。」
あれ? 『シュガートレント』の餌にするとは聞いてなかったよ。
おいら、新たな『ハエの王』を生み出すために生きて捕えたいから手伝えって頼まれたんだけど。
アルトったら、やっぱり、『羽虫』と呼ばれたのが赦せなかったんだね。お仕置きが一つ増えたよ。
まっ、砂糖が手に入るなら、おいらは大歓迎だけど。
それで、気丈にもまだアルトに反抗的な態度を取っていたキャラメルだけど、…。
アルトが凄みを増してキャラメルに対する処分を告げると、やっとアルトのヤバさに気付いたみたい。
「ふざけるな!
トレントの餌だと、ハエの餌だと、そんなの真っ平御免だぜ!」
キャラメルはそう叫ぶと脱兎の如く逃げ出そうとしたんだ、でも…。
「あんちゃん、無駄な抵抗はよした方が身のためだよ。」
おいらはキャラメルの前に回り込み、再度忠告してあげたよ。
だって、足掻けば足掻くほど、アルトのお仕置きがきつくなるだけだもん。
「邪魔だと言ってるだろう!そこを退きやがれ!」
必至に逃げようとするキャメルは、今度こそおいらを蹴とばそうとして来たんだ。
おいらは、それを『回避』し、さっきと同じようにデコピンをかましたよ、膝に。
「ギャーーーーー!」
またまた耳障りな悲鳴を上げて、今度は床に転がるキャラメル。
やっぱり、デコピンで軽く弾いただけで『グシャ!』って音がして膝が砕けたよ…。
相変わらずいい仕事しているね、『クリティカル』。
「おかしいだろうが!
俺は、人類最強クラスのレベル五十なんだぞ!
何で、お前のようなガキんちょにこんな目に遭わされないといけねえんだよ!」
膝を砕かれて、起き上がれないキャラメルがそんな泣き言を叫んでた。
うん、おいらもそう思う、おいらのスキルって本当に理不尽だよね。
膝を砕かれては逃げる事も出来ず、キャラメルも観念したみたいだったよ。
お読み頂き有り難うございます。




