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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記
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第74話 王国騎士団事情、ってそれでいいの?

 広場に甲冑を剥ぎ取られて転がされた十人の騎士達。

 自称クッころさんの結婚相手のカイエンは、ピクピクと痙攣したままだよ。

 残りの九人は、ノイエが手加減してくれたようで、かろうじて意識は取り戻している。


「ねえ、クッころさん、こいつら正式な騎士じゃないの?

 このカイエンといか言う奴が、正騎士団員になるとか、ならないとか言ってたけど。」


 こいつらも、クッころさんと同じ自称騎士なのかと思って尋ねると。


「いいえ、この方達も、一応は王により騎士の位を授けられた正式な騎士ではあるのです。

 ただ…、素行不良や能力不足、それにレベル不足を理由に正規の騎士団に所属できなかった者達なのです。

 正規の騎士団は精鋭を選りすぐった近衛騎士団の他、第一騎士団から第四騎士団まで四つあります。

 それぞれ、甲冑の胸のところに数字と騎士団のシンボルとなる紋章が描かれているのですが。

 この方達の甲冑には何も描かれていないでしょう。

 実は王国にはもう一つ番外騎士団と呼ばれる落ちこぼれの吹き溜まりみたいな騎士団がありますの。

 素行不良や能力不足の騎士がそこに集められているのですわ。」


 そんな風に説明を始めたクッころさん。


「素行や能力に問題があるんだったら、騎士にしなければ良いじゃん。」


 おいらが、クッころさんにツッコミを入れると…。


「そうですわね、わたくしもそう思います。

 ですが、貴族というのは面子にこだわるモノで…。」


 クッころさんは、苦々しそうな顔で言葉を濁したよ。

 それから、ポツリポツリと話してくれた事によると。 

 貴族の家から騎士になれない者が出るのは途轍もなく恥ずかしいことなんだって。

 一族の中に無能な者がいる事を晒すようなものだから。


 まあ、そう思うのなら、躾なり、教育なり、訓練なりをして恥を晒さないように子弟を育てれば良いだけの話なんだけど。

 そう言う手間は惜しむようで、コネを使って子弟を騎士にすることが半ば公然と行われてるんだって。


 騎士の叙任をするのは王様だけど、王様が一々騎士候補から騎士を選ぶはずがなく。

 実際に騎士を選抜する作業には別に担当者がいる訳で、王様は選抜された騎士を形式的に叙任するだけらしいの。

 コネを使ってその選抜担当者に自分の子弟を選ばせるのはまだ良い方で…。

 選抜担当者を脅して自分の一族の者を騎士にねじ込む高位貴族の人もいれば。

 逆に選抜担当者の方から高額の袖の下を要求して、騎士の位を売りつける不届き者もいる始末なんだって。


 なに、その末期症状…。


「だから、そんな者達を一ヶ所に集めて王都郊外の駐屯地に押し込めてあるのです。

 野放しにすると、何をしでかすか分からない連中ばかりですので。

 騎士の叙任して、駐屯地の兵舎に押し込めておいた方が何かと安心だとの判断のようですわ。

 普段は、厳しい監視の目があって、こんな風に王都の外に出られることは無いはずですが…。」


 うん、その話を聞いて納得したよ。

 どうりで最初から、この町にいる冒険者と同じ臭いがするような気がしたんだ。

 騎士と冒険者、名札を付け替えただけで、根は同じものだったんだね。

 

     ********


「で、このカイエンというのは何者なの?

 クッころさんの結婚相手を名乗ってるけど…。」


 おいらが尋ねると、クッころさんはますます苦々しそうな表情なったんだ。


「カイエンは、わたくしの長兄の腰巾着ですの。

 社交界でも断トツと言って良いほどの鼻つまみ者なのですが。

 おべっか使いで、人に取り入るのだけは巧くて。

 長兄を通して、わたくしに結婚を申し込んできましたの。

 父上は、とんでもないと言って突っぱねたのですが。

 類は友を呼ぶと言うのでしょうか、長兄がカイエンを殊の外お気に入りで。

 父上が幾らダメだと言っても、何度もわたくしとカイエンの縁談を蒸し返して来るのです。」 


 クッころさんは、身内の恥を晒すようであまり言いたくはないと言いつつ、上のお兄さんについて話し出したの。

 クッころさんにはお兄さんが二人いて、上のお兄さんが絵に描いたような愚物なんだって。

 家柄を鼻にかけた横柄な人物で、女性関係にだらしないこともあって、社交界の鼻つまみ者だと言ってるよ。

 自分の身内をそこまで悪し様に言うんだから、よっぽどの人なんだろうね。


 お約束のように番外騎士団に配属されたみたいだけど…。

 番外騎士団の中では家柄が一番良いことと、クッころさんのお父さんが近衛騎士団長だと言うことが災い(?)したみたい。

 なんと、社交界でも評判の悪い上のお兄さんが、番外騎士団の団長に任命されちゃったんだって。

 クッころさんのお父さんは、上のお兄さんが何をしでかすか分からないと、反対したらしいんだ。

 でも、そこが貴族の世界の面倒くさいところで…、

 家柄の序列の関係があって、上のお兄さんを差し置いて騎士団長になろうと言う人は誰もいなかったみたい。


 それで、足元に転がっているカイエンなんだけど。

 上のお兄さんに輪をかけて愚物みたいで、ハッキリ言って人間の屑みたいな人だとクッころさんはいってたよ。


 カイエンは、無類の女好きのようで…。

 何でも、十代中頃から町をふらついては、気に入った町娘を無理やり拉致して来るんだって。

 人目をはばからず白昼堂々とね。

 この国じゃあ、平民は王侯貴族に逆らえないので、町の人は誰も文句言えないみたい。

 最近では、カイエンが町を歩いているのを見かけると、若い娘はサッと建物の中に隠れるらしいよ。


 女の人を拉致して何が楽しいのって、クッころさんに聞いたら。

 あと十年したら教えてあげるって…、クッころさん、十年もおいらの所に居座るつもりなの?


 まあ、誰も文句言えないとはいえ、そんなことをしていると貴族同士でも警戒されるもので。

 貴族の社交の場でも、カイエンが姿を現すと若い女性はみんな帰っちゃうんだって。


 でも、類は友を呼ぶで、そんなカイエンを上のお兄さんはとってもお気に入りなんだって。

 どうやら、上のお兄さんとカイエンは趣味があうらしくて、…。

 女性禁制の騎士団の宿舎に、カイエンが町娘を拉致監禁して上のお兄さんに献上しているとの噂があるらしいの。

 噂が立つ度に騎士団の上層部の監査が入るそうだけど、カイエンは尻尾を掴ませないんだって。

 そんな、悪事に関して抜かりがないところが、上のお兄さんのお気に入りのようだって。


 なんか、こいつらとんでもない悪党だな、冒険者ギルドも真っ青だよ…。

お読み頂き有り難うございます。

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