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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第四章 魔物暴走(スタンピード)顛末記
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第73話 結婚相手だと言ってますけど…

 スタンピードが終結した日に、やって来た十人の騎士達。

 王国騎士団の団員を名乗っているけど、なんか胡散臭いんだ。

 この町に、巣くっているゴロツキ冒険者と似た臭いがするんだけど…。


「隊長、どうします?

 折角、十日も掛けてこんな辺境くんだりまでやって来たと言うのに。

 俺はまだ、十枚も手に入れてませんぜ。

 これじゃ、レベルを上げるのに全然足りませんよ。」


「そうだな、俺もここでレベルを上げて正騎士団入りを目指してたんだが。

 これじゃあ、全然足りやしないぜ。

 監視の目を盗んで、騎士団を抜けだして来たって言うのに。

 一つもレベルを上げられないんじゃ、言い訳も出来やしないぜ。」


 隊長と呼ばれた騎士と横に並んでいる騎士の間で、そんな話し声が漏れ聞こえたんだ。

 そこには、聞き流すことが出来ない言葉が…。


「ねえ、騎士のお兄ちゃん。

 お兄ちゃん達って、十日も掛けて何処から来たの?」


 おいらが、素知らぬ顔で尋ねると。


「ああ? 王国騎士団と言えば王都にいるに決まってるだろう。

 俺達は、王都からこの辺境までわざわざ、魔物退治に出向いてやったんだ。

 有り難いと思えよ、子供。」


 隊長さんの横に並ぶ騎士がそんな風に偉そうに答えたんだ。

 どうやら、諸悪の根源は王都にいるみたいだね。


「でもね、スタンピードが起こったのって、五日前だよ。

 何で、十日も前にこの辺境がスタンピードに襲われるって分かったの?

 それって、変じゃない?」


「うっ…。」


 おいらの指摘に声を詰まらす騎士さん。

 すると、


「そんなことは、子供のおまえが知らなくても良いことだ。」


 横から、隊長さんがそう言っておいらを威圧したんだ。


「では、わたくしに聞かせて頂けますこと?

 その子の言ったことは、わたくしも興味がございますわ。

 どうして、五日前に発生したスタンピードの情報を十日も前に知っていたのかしら?

 もしかして、あなた方は今回のスタンピードを引き起こした犯人を知っているのでなくて。

 『ハエの王』を倒した愚か者を。」


 その時、おいらの後ろにいたクッころさんが、隊長の前に進み出て問い掛けたの。


    ********


「何だ、うちの騎士団長を愚か者という無礼な輩は…。」


 あっ、隊長さん、いきなり犯人をゲロったよ。

 どうやら、この騎士さん達が所属する騎士団の騎士団長が『ハエの王』を倒した愚か者みたいだね。

 隊長さんは、クッころさんの言葉に腹立たし気な声を出して、クッころさんに顔を向けたの。

 フルフェイスの兜のせいで、隊長さんの表情は伺えないけど。

 どうやら、クッころさんを凝視しているようで言葉を途切れさせていたんだ。


 やがて、隊長さんは兜のバイザーを上げて顔を露わにすると…。


「これは、エクレア姫ではないですか。

 困りますな、勝手王都を抜けだして、こんな辺境まで来ているなんて。

 姫が、我との結婚が嫌で逃げ出したという噂が立って、我の面目は丸潰れですぞ。

 近衛団長様も心配なさっておられます。

 この我と共に王都に戻りましょうぞ。」


 そう言った隊長の顔は、潰れた団子のような低い鼻に、タラコのような唇で、絵に描いたような不細工だったよ。

 おまけにアゴヒゲが濃いみたいでヒゲを剃ったアゴが青っぽくて、しかも割れてんの。


「へっ? わたくしをご存じですか? あなたはいったい?」


 うん? 結婚が嫌で逃げ出したと言う噂があるのに誰だか分からないって?


「我ですよ、我、カイエン・ポワーヴル・ド・ピマン。

 ピマン子爵家のカイエンですよ。

 困りますな、自分の結婚相手をお忘れになるとは。」


 クッころさんは、目の前の醜男をジッと見つめてましたが、ハッとした表情を見せて言いました。 


「ああ、あなたが有名なピマン子爵家のバカ息子ですの。

 誰が結婚が嫌で逃げ出したですか。

 言葉は正確に使って欲しいですわ。

 婚約させられそうなのが嫌で逃げ出したのですわ。

 そもそも、あなたからの結婚の申し出は父上が正式にお断りしているはずです。

 にもかかわず、兄上を通してしつこく婚姻を迫ってくるので鬱陶しくて逃げ出したのですわ。

 でも、お顔は初めて拝見しましたが、噂に違わぬ不細工ですのね。

 わたくし、そのお顔を拝見する以前に、とても素行の悪い方だとお聞きしてお断りましたので。」


 容赦ない言葉の暴力を浴びせる、クッころさん。

 周囲のやじ馬が爆笑がしてるよ。

 最初に話しかけたオバチャンもしっかり聞いてるし、明日には街中の笑い者だね。


「笑うでない、この無礼者ども!

 騎士である我を笑い者にするとはけしからん。

 おまえらのような平民風情、まとめて斬り捨ててやっても良いのだぞ。」


 やじ馬に笑い者にされたカイエンは烈火のごとく怒ってるよ。


    ********


 そして、馬を降りてクッころさんに近づいて来たカイエンは、いきなりこぶしを振り上げたんだ。


「女の癖に何をなめた口を利きやがる。

 そんな口を利く女は少しきつく躾けねえといけねえな。

 てめえが、大人しく俺の嫁になれば。

 てめえの持参金の『生命の欠片』で、俺も正騎士団に入れんだよ。」


 カイエンは、今までと打って変わって粗野な言葉遣いになったよ。

 きっとこれが、本性なんだね。

 凄く身勝手な事を言いながら、そのこぶしをクッころさんめがけて力任せに振り下ろしたけど…。


 と、その時。


「女子供に、暴力振るってんるんじゃないわよ!」


 バリ!バリ!バリッ!


「アガガガガ!」


 こぶしがクッころさんを捉えるよりも早く、ノイエのビリビリがカイエンを直撃したよ。

 なんか、カイエンが変な悲鳴を上げてる。 

 ノイエのビリビリが止んだ時には、カイエンの騎士甲冑の中から白煙が上がってた。


「やっべえ、ありゃ妖精じゃないか!

 妖精の怒りをかったなら、隊長はもうダメだ!

 おい、巻き添えを食う前にずらかるぞ!」


 カイエンと馬を並べていた騎士がそう言うと、残りの騎士が一斉に踵を返したんだ。


「逃がす訳ないでしょう!」

 

 バリ!バリ!バリッ!


「「「「「「「「「アガガガガ!」」」」」」」」」


 逃げ去ろうとする騎士たちに素早くビリビリを見舞うノイエ、逃げること叶わず悲鳴を上げる騎士達。

 騎士達がビリビリに痺れて落馬すると、ビリビリに驚いた馬たちは逃げていっちゃったよ。


 そして、おいら達は倒れている騎士の甲冑を剥ぎ取って、逃げられないように縛り上げたんだ。

 町のみんなも面白がって手伝ってくれたよ。


 そうそう、自称クッころさんの結婚相手のカイエンだけど…。

 兜を剥ぎ取ったら、額が広くて脂ぎってたよ。テカテカしてとってもキモい…。

 しかも天然のソリ込みが入ってるし、全体的に髪の毛が寂しかった。


 これで、二十歳そこそこだって、女の人にモテそうもないね。


 それはともかく、洗い浚い話を聞かせてもらおうかな。

お読み頂き有り難うございます。

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