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第685話 情報操作はお手の物だって…

 父親が若い娘さんと一緒に『宿泊プラン』を利用しようとした現場に出くわしたウレシノ。

 父親を問い詰めたところ、『トー横』と呼ばれる若者の溜まり場で、一緒にいた娘さんに誘われたらしい。

 どうやらその娘さんは『宿泊プラン』に含まれる『STD四十八』の公演チケットが目当てだったみたい。

 その娘さんを使って宿帳を改めたところ、この十日間の宿泊客は全員、偽親子だと分かったよ。

 公演のチケット目当ての娘さんが、『トー横』でお金を持っている『パパ』を捕まえたものだと。


 ウレシノはその事実を知り、このままではこの宿泊施設に悪い評判が立ちかねないと懸念してたの。

 公衆浴場の経営を任されてるタロウは、そんな指摘をされて困った様子だった。


「どうする? 各部屋を回って娘の方を街娼行為でしょっ引くか?」


「いえ、それは余り賢い手段とは言えませんね。

 証拠と言えるのは、その娘の証言だけですので。

 本当の父娘だとシラをきられるのがオチだし。

 よしんば、実の父娘じゃないことを認めたとしても

 街娼を買ったのではなく、愛人なのだと返答されれば罪には問えません。」


 よく理解できないけど、目の前の娘さんの証言だけでは決め手に欠くらしい。


「じゃあ、どうするんだ。

 今回はお目溢しして、今後の対策を考えるか?

 今日が公演最終日だし、明日からはこんなことないかも知れないしな。」


 仮に『トー横』の娘さん達のお目当てが公演チケットだとしたら。

 『パパ活』娘が宿泊施設を独占する状況は解消するだろうと、タロウは言ってたの。


 すると。


「それなら、私もお目溢してしてちょうだい。

 パパとここにお泊りして、ケンさんの公演を観たいもん。

 ここまで十九日毎日観に来たのよ。

 ケンさんとの一日デートは諦め切れないもん。」


 それなら自分も見逃せなんて、調子の良いことを主張する目の前の娘さん。


「まだ言いますか。

 明らかに法を犯している者をお目溢しできる訳ないでしょう。

 タロウ、それに関しては私に任せてください。

 良い案があります。

 公演は夕方からですから、時間は十分にありますし。」


 ウレシノから一喝されて、娘さんはシュンとしてたよ。

 ウレシノは自分に一任してくれと告げると、タロウから宿帳を借りて出て行ったんだ。

 

        **********

 

 暫くして戻って来たウレシノ。

 宿帳をタロウの返しながら…。


「この街のスケベ親父は結構正直者が多いですね。

 今日の宿泊客、八組中七組までが正直に住所を記入していましたよ。

 後ろ暗いことをしてるので名前も住所も偽っているかと思っていました。」


 そんなことを言っていたよ。

 一組だけは用心深いのか、名前も、住所も偽っていたって。


 それから、まもなくして…。


「会長、一号室のお客様の奥様を名乗る方が宿泊カウンターに見えられて…。

 凄い剣幕で、自分の旦那に会わせろと言っているのですが。

 お部屋にご案内してもよろしいでしょうか?」


 ひまわり会のお姉さんがタロウに伺いを立ててきたんだ。


「どうぞ、お通しください。

 ご住所を照合して、奥様だと言うことは確認してくださいね。」


 タロウが答えあぐねていると、ウレシノがそんな指示を出したの。

 ひまわり会のお姉さん、部外者のウレシノから指示が出て戸惑ってたけど。

 タロウが首を縦に振ると、「そのように取り計らいます。」と返答して出て行ったよ。


「それじゃ、様子を覗きに行きましょうか。」


 ウレシノはおいら達を誘ったんだ。

 一号室の前までやって来ると…。


「あなた、言ってましたよね。

 今晩は仕事で隣町へ行くので泊りになると。

 何故、こんなところにお泊りなのですか。

 しかも、うちの娘より若い娘さんとご一緒のようですが。

 どのようなご関係で?」


 開け放たれた扉の前から部屋の中に向かって、『パパ』の奥さんらしき人がそんなことを言ってたの。

 どうやら、奥さんの正面には(くだん)の『パパ』が対峙してるらしい。

 中にいる娘さんを隠そうとしているのか、奥さんを部屋の中に入れまいと立ちはだかっているみたい。


「お前、何でそれを…。 この宿の連中がチクったのか?」


「はぁ? 宿の人がわざわざ告げ口なんてする訳ないでしょう。

 近所の奥さんから教えてもらったのよ。

 公衆浴場のロビーで、あなたが年端のいかない娘を連れ込むのを見たってね。

 その時、私、顔から火が出るかと思ったわ。

 どれだけ恥ずかしい思いをしたか分からないかい。

 あなた、きっと明日にはご近所中の笑い者になってるわよ。」


 奥さん、烈火の如く怒っていたよ。

  

「げっ、奥さん?

 修羅場に巻き込まれるのはゴメンだわ。

 パパ、私、今日は帰るわね。

 また今度、よろしく~!」


 そんな声が聞こえたかと思うと、十代半ばくらいの娘さんが部屋を飛び出して来たよ。

 そのまま逃げ去ろうとしていたんだけど…。


「逃げようたって、そうはいきませんよ。

 あなたには少々尋ねたいことがありますので。」


 ウレシノがの行く手を塞ぐと、娘さんは逃走を諦めて素直に捕まっていたよ。

 捕まえた娘さんは、タルトがさっきウレシノ父ちゃんを尋問した部屋に連れて行ったの。


「凄くタイミング良く奥さんがやって来たけど。

 これって、やっぱりウレシノの仕込みなの?」


「はい、情報操作や情報の流布は我が一族のお家芸です。

 何ら不自然を感じさせず、特定の情報を特定の対象の耳に入れることも。

 我が一族の力をもってすればお手の物です。」


 さっき席を外した時に、ウレシノは屋敷に戻ってそこに居た一族に指示したらしい。

 宿帳に記された人物、住所は本当に存在するかを調べて。

 実在すれば、今日ここに若い娘を連れ込んだと言う情報を流せとね。

 しかも、早急に家の者、出来れば直接奥さんの耳に入るように流せと。

 今こそおいらの期待に応える時だって、ノノウ一族を総動員でウレシノの指示に当たったらしいよ。


 そして、同じような光景があと六回繰り返されたんだ。

 『パパ』達は皆が皆、仕事の都合で今日は帰らないと言って家を出て来たらしいの。

 十連泊している太っ腹の『パパ』に至っては、隣国に仕入れに行くと言って家を出たらしいよ。

 交易で栄えているこの街らしい言い訳だね。


 奥さん達、みんな烈火の如く怒っていて、中には旦那を殴り飛ばしている人も居たよ。

 もちろん、『パパ活』していた娘さんは全員、ウレシノが捕えていたよ。

 

        **********


「さて、あと一組ですか。

 偽名に、偽住所とは…。

 このスケベ親父、相当遊び慣れていますね。」


 ウレシノは一組だけ尻尾を現さない『パパ』について言ってたよ。 

『トー横』で若い娘を摘み食いしている常習者じゃないかと。


 八組の『パパ活』娘のうち、七組まで摘発して残り一組。

 その一組が宿泊している部屋の前で様子を窺っていると…。


「公演までまだ時間があるし、一っ風呂浴びてくるとしようか。」


「ここの家族風呂って、人目を気にせずパパと一緒に入れるから大好き!

 たっぷりサービスしちゃうから、楽しみにしててね。」


 若いお姉さんを腕に絡みつかせて、四十男が部屋から出て来たの。

 うん? あのおっちゃんも何処かで見覚えがあるんだけど…。

 おいらが記憶の糸を手繰っていると、ウレシノがツカツカと二人の前に進み出て言ったの。


「まさか、お父様だけではなく、叔父様まで悪い遊びをなされてたなんて…。

 その姿を見たら、スルガが嘆きますよ。」


 王宮メイドとして働いてもらってるスルガの父ちゃんだったよ。

 なるほど、ノノウ一族は諜報畑の一族だものね、偽名は普段から使い慣れている訳だ…。


 ウレシノに悪事が知られて、スルガの父ちゃんは顔面蒼白だったよ。

 ともあれ、これでその日宿泊している『パパ活』娘は全員、お縄に出来たんだ。

お読み頂き有り難うございます。

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