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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十九章 難儀な連中が現れたよ…
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第661話 そして、王都を旅立つ人達…

 それから、数日後。


「マロンちゃん、お土産沢山もらっちゃって有り難うね。

 これで、『海の民』も沢山子孫を増やすことが出来ると思うわ。

 マロンちゃんからの依頼は間違いなくこなすから安心して。

 タロウあんたにも色々と世話になったわね。

 何年かしたら迎えに来るから、ハゥフルとシレーヌをよろしくね。」


 そんな言葉を残し、霧の海にある妖精の森に帰って行ったムルティ。

 今回のこの大陸訪問で母親に当たるアカシアさんと会えたこともあり、ムルティはとても上機嫌で帰って行ったよ。

 お土産とは勿論、詐欺『教団』の男達だよ。

 シレーヌ達『歌声の民』は、妊娠中の栄養補給に人間の男を食べる習性があるので連中を有効利用することにしたの。

 おいらが定めた勅令で、『教団』絡みの犯罪は全て死罪と決めたけどその執行方法をどうするかはおいらが決められるからね。

 連中は絶海の孤島にある『人牧場』に放牧して、妊娠した『歌声の民』の餌になってもらうことにしたの。

 百人以上の餌用の男を手に入れて、『歌声の民』を庇護下に置いているムルティはすこぶる上機嫌だった。


 そして、教主をはじめとする女性犯罪者の処遇だけど…。


 当初予定した通り、『歓び隊』の若いお姉さん達は死罪を免じて、捕えた者に褒美として下賜したよ。

 タロウに、ウレシノの従兄チラン、スルガの弟、それにウレシノの父ちゃん。

 最終的には、この四人で『歓び隊』の殆どを捕らえてたんだ。


 チランは、捕えたお姉さんを働かせて優雅なヒモ生活を送る気になっているし。

 スルガの弟は、首輪と散歩紐それと尻尾を付けた沢山のお姉さんにお行儀良くお座りをさせてご満悦だったよ。

 こいつ、こんな変わり果てた姿のお姉さん達をどうするつもりなんだろう…。


 そして、…。


「父さん、知りませんよ。

 母さんから元いた場所に戻してきなさいと言われても。

 この娘達は、本来死罪に処することになっているのです。

 万が一にも世間に放つようなことがあれば、ノノウ一族の責任問題になります。

 この娘達を囲うからは、きちんと母さんを説得してくださいね。」


 若い娘さん達に囲まれて鼻の下を伸ばしている自分の父親に軽蔑の目を向けて、ウレシノは冷淡な言葉を投げ掛けてたよ。

 責任もって飼えないのなら、ここでおいらに返上しなさいって。


「いやあ、せっかく、陛下の御厚意で下賜してくださると言うのだ。

 ここは有り難く賜るのが筋じゃないか。

 父さんだって、若い愛人に囲まれてキャッキャウフフしたいのだ。

 ウレシノよ、ここは親孝行だと思って母さんの説得に協力してくれんだろうか。」


 奥さんを説得する自信が無いのか、ウレシノの父ちゃんは娘に泣きついていたよ。


 そんな情けない姿を晒すにウレシノ父ちゃんに。


「伯父さん、安心しな。

 伯母さんを説得できない時は、その可愛い娘ちゃん達も俺が貰ってやるから。」


 チランの奴、この期に及んでまだ囲うお姉さんを増やすつもりらしい。

 確かに、『歓び隊』のお姉さん達はハニートラップ要因だから美人揃いだけど。

 そんなに沢山集めていったい何を仕出かすつもりなのか…。


 諸悪の根源、『女神ルナ』の化身を自称する教主の処遇だけど。

 ムルティにお願いして、ヌル王国の王宮に届けてもらうことにしたよ。

 『幸福な家庭の光』教団の教主及び主だった信徒は、ヌル王国で重犯罪人としてお尋ね者になっているんだ。

 ウレシノの情報では、ヌル王国内部では教主たちを死罪とする方針が確定しているそうなの。

 しかも、今後模倣犯が出て来ないように、見せしめとして公開絞首刑にする予定だったらしい。

 まさか、この大陸まで逃げ延びて来るとは思いもしてなかったみたいだよ。


 なので、『歌声の民』の餌にもならない教主と占い師達女性犯罪者はヌル王国に引き渡してしまうことにしたの。

 せめて公開絞首刑にでもなって、オードゥラ大陸での模倣犯の抑制くらいに役立ってもらおうかと思ってね。

 しばらくは、ムルティの『積載庫』の中で『闇』の世界を満喫してもらって、時間のある時にでも届けてもらうことにしたんだ。

 ムルティの言ってた『依頼』というのはこのことだよ。


 そして、『幸福な家庭の光』教団に騙されて私財を巻き上げられた挙げ句、この大陸までタダ働きさせられた船乗り達。

 この大陸で、ゴミのような『壺』を使った大規模なネズミ講もどきを仕掛けたからね。

 本来なら問答無用で死罪なのだけど…。


 取り調べを進めると余りに気の毒な境遇の人達で、一律に死罪というもの如何なものかとなったんだ。 

 元々、オードゥラ大陸でのシノギが難しくなった『教団』の連中が海外への逃亡を企てたのが発端で。

 そのために船を操船する船乗りを信徒に引き入れようと、『教団』の連中はムチャクチャしたみたいだからね。

 世間知らずな娘を勧誘されて、教団施設に監禁同然で人質に取られ無理やり入信を迫られたとかね。

 世間知らずの若い娘や息子を誘い込んで、それを人質に財産を巻き上げなんて連中の常套手段だったみたい。


 『教団』の船乗確保のために、船乗りさん達にそんな悪辣な手段を大掛かりに仕掛けたみたいなの。

 全財産を搾り取られた挙句、教主一味の逃亡のためにこの大陸までタダ働きで船の操船をさせられたそうだし。

 この町に着いたら着いたらでネズミ講まがいの勧誘をさせられて…。

 あえなく捕縛されたと思ったら、待っているのが死罪ではあんまりだと思ったよ。

 幸い、酷い洗脳をされている様子も見られないし、更生の余地があるとして無期強制労働に切り替えたんだ。


 とは言え、船乗りさんだって八ヶ月以上教団の連中と一緒に行動していたからね。

 悪さを仕込まれているかも知れないから、他の囚人とは違う新しい現場で道路工事をさせることにしたよ。

 しかも、現場は一ヶ所じゃなく数か所に分けて、連中が結託して反抗できなくした。

 まあ、十年も真面目に道路工事に勤しめば、釈放しても良いかなって。

 その頃には、教団の連中から仕込まれた悪さも忘れるだろうから。


       **********


 そして、王都を出て行くのは、ムルティだけじゃなくて。


「ダーリン、直ぐに戻って来るから待っていてね。

 ダーリンの生体サンプルを急いで分析して。

 何で子供が出来ないかを突き止めてくるから。」


 そんな言葉を口にして、マリア(マロン)さんがタロウのほっぺにチューをしてた。

 タロウの屋敷にお風呂を造るのが先か、いったん森へ帰るのが先かと、マリアさんは迷っていたようだけど。

 結局、いったん森に帰ることにしたみたい。


 どうしても、タロウの赤ちゃんが欲しいので、子作り出来ない原因を調べるのが最優先になったみたい。

 研究所にある分析機器を用いれば、さほど時間を掛けずに原因を突き止められるんじゃないかと言ってた。

 もちろん、原因が判明したら、対策も用意して来るそうだよ。


「おう、気を付けてな。

 みんなで、姉さんの帰りを待ってるから。

 俺は姉さんの指示通り浴室を造る準備をしておくぜ。」


 マリアさんが凄く欲しがっていたお風呂、マリアさんの留守中にもタロウが準備を進めておくようだよ。

 タロウの言葉からすると、もうどんなお風呂を造るかは決まっているみたいだね。


「マリアさん、期待してますよ。

 私もそろそろタロウ君の赤ちゃんが欲しいと思ってたんです。」


 シフォン姉ちゃんが期待を込めた目でそう伝えると。


「私も欲しい…。」


 『水底の民』のハゥフルが蚊の鳴くような小さな声で訴えていたよ。

 気弱なハゥフルには、そのくらいしか自分の望みを口にする事が出来なかったみたいだね。


「任せておいて! じゃあ、行ってくるわ!」


 マリアさんはそんな返事をすると、『空飛ぶ車』を起動し一気に空に駆け昇ったよ。

 そして、凄い速さでトアール国の方角に向かって飛び去って行ったの。

 目立たずにひっそり余生を送るんだとか言ってたのに。

 もうバレてるからって、真昼間から『空飛ぶ車』で飛んで行くんだね。…隠そうともせずに。

 

 こうして、オードゥラ大陸からやって来た厄介な連中の対処は一段落したんだ。

 もう二度と、『教団』なんて厄介な連中が来ること無いように祈ったの。


 そしてマリアさんに諭されたことを、おいら、自分に言い聞かせたよ。

 民が『神』なんて紛い物に頼る必要が無い、平穏無事な日々を過ごせる国を作らないとねって。


お読み頂き有り難うございます。

本章はこれで終わりです。

新章に入るに当たり、少し投稿頻度を下げさせて頂きます。

具体的には、2日に1度のペースを基調に、場合により3日に1度のペースとなります。

今後ともよろしくお願い致します。

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