表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十九章 難儀な連中が現れたよ…
659/848

第659話 いや、そんなに喜ばれても…

 ミンメイを膝の上に置いてご満悦のマリア(マロン)さん。

 アルトが、いずれ耳長族の里を保護している自分の森に連れて行こうかと提案すると。

 マリアさんは、とても乗り気になっていたよ。


 しばらくの間、マリアさんがミンメイをあやしていると。


「マロンちゃん、ミンメイがこっちに来てないかしら?

 仕事が終わったので、マロンちゃんの部屋に行ったのだけど。

 見当たらないものだから。」


 ミンミン姉ちゃんが、ミンメイを探して訪ねてきたんだ。


「あっ、母ちゃだ!

 母ちゃ、ここ、ここ!」


 ミンメイは、自分の存在を知らせるかのようにミンミン姉ちゃんに向かって手を振ってたよ。


「あら、あなたがこの子の母親なの?

 きれいな娘、随分若いのね。」


 耳長族特有の若作りで十代半ばに見えるミンミン姉ちゃんを目にして、マリアさんは少し驚いたみたい。

 マリアさん、繁殖力が弱いって理由で、耳長族を長命種としたって経緯があるからね。

 ミンミン姉ちゃんは予想外の若さだったみたい。


「まあ、お上手、これでもとっくに三十路に足を踏み入れてるんですよ。

 ミンメイの母、ミンミンです。

 ミンメイと遊んでくださり、有り難うございます。」


 若くてキレイと言われて、少し照れながら実際の年回りを口にしたミンミン姉ちゃん。

 ミンミン姉ちゃんは、マリアさんが耳長族の歳のことを知らないと思ったんだね。


「初めまして、マリアよ。

 こちらこそ、『森の民』の幼子をこうして懐に抱くことが出来て嬉しかった。

 それに、あなたにも会えて嬉しいわ。ミンミンさん。」


「あら、珍しい。

 『森の民』って呼び方をご存じとは。

 大抵の方は耳長族と呼ぶのに。

 私達のことにお詳しいのですか?」


「ええ、その辺の人よりは詳しいと思うわ。

 ミンミンさんの歳もだいたい検討は付いていたのだけど。

 それにしても、若いと思ったのよ。

 第一子出産年齢の当初想定がもっと遅くてね。

 外見年齢で二十歳過ぎ、実年齢で六十歳過ぎだったから」


「はっ? 当初想定ですか?」


 まあ、創造主だからね。耳長族については、耳長族の長老さんより詳しいと思うよ。

 ミンミン姉ちゃんの方は、言葉の意味が理解できなかったようでポカンとしてたけど。


           **********


「マリアさんは、タロウの新しいお嫁さんなんだ。

 マリアさん、若作りだけど、実はとっても永く生きていて。

 耳長族のことをとても大切に思っているの。

 耳長族が滅んだと思ってて長いこと悲しんでたんだけど。

 ミンメイのことを知って会いに来てくれたんだよ。」


 おいらが、マリアさんのことを掻い摘んで紹介すると…。


「あら、マロンちゃん、若作りとはあんまりな言い方ね。

 若作りなんじゃなくて、本当に若い肉体をしているの。

 その言い方じゃ、年寄りが無理して若い格好をしているみたいじゃない。

 確かに歳はいってるけど、この体はまだ二十代前半よ。」


 何か、『若作り』と紹介したところがお気に召さなかったようだよ。

 それこそ、年甲斐も無く頬を膨らませて、プンプンとか言っているし。


「失礼ですが、マリアさんは耳長族狩りより前のことをご存じなので?

 もしかして、マリアさんも人族以外の種族とか?

 でも、『森』や『山』の民には見えないし…。

 タロウ君のお嫁さんで長命種ということは…。

 もしかして、先日いらしたと聞く『海の民』の方ですか。」


 耳長族でも最長老の人しか知らない耳長族狩り以前のことを知っていると聞き。 

 ミンミン姉ちゃん、マリアさんを長命種と勘違いしたみたい。

 体つきの特徴が耳長族や『山の民』に当てはまらないので、『海の民』だと思ったようだね。


「違うわよ。私はマロンちゃん達と同じ人族。

 妖精族の『不思議な空間』の中で、永いこと眠っていたの。

 遠い遠い昔のマロンちゃんのご先祖様に当たるのよ。

 この国の初代王を生み出したのが私なの。」


 流石に創造主だとは明かさないまでも、初代王を『生み出した』と言うんだね。『産み落とした』じゃなくて。

 確かに言葉としては正確だけど。

 

「ああ、あのアルト様の『不思議な空間』ですね。

 あれ、便利ですよね、人を乗っけて運べるだけじゃなくて。

 時間を停めたり、進めたりも出来るのですから。

 初代王のお母さんですと、とても昔の方なのですね。」


 『妖精さんの不思議空間』に乗って旅行に行ったことのあるミンミン姉ちゃん。

 マリアさんの言葉を、何も疑問に感じる様子も無くあっさりと信じたよ。

 妖精さんが絡むと不条理な事が多いし、「そんなこともあるか」と深く考えずに納得するのが常だしね。

 マリアさんがこの大陸に住まうあらゆる人系種族の創造主だとは、きっと露ほども思ってないだろうね。


「ええ、本当に長い間眠っていたわ。

 その間、『森の民』には気の毒な目に遭わせてしまったわね。

 私、ずっと『森の民』と一緒に生活してたのに。

 肝心な時に役に立てずに、ホント、ごめんなさい。」


「いえ、マリアさんに謝って頂くものでもないかと。

 『不思議な空間』でお休みになってらしたのですし。

 マリアさんには何の責任も無いかと。」


 まあ、マリアさんにしてみれば、耳長族狩りをしでかした愚か者達も自分が創り出した人族の末裔だからね。

 申し訳ないと感じる気持ちはあるんだと思うよ。


       **********


「そうそう、あなたの家にはミンメイちゃんの他にも『森の民』の幼子が居るのでしょう。

 幼子の顔を見たいので、お宅にお邪魔してもかまわないかしら。

 ミンミンさん以外のお母さんにもお目に掛かりたいし。

 マロンちゃんを育ててくれたお父さんにも会ってみたいの。」


 マリアさんが、父ちゃんのお屋敷を訪ねたいと希望すると。


「ええ、是非お越しください。

 私も、マリアさんが耳長族と一緒に暮らしていた頃のお話を伺いたいですし。

 何なら、これからいらっしゃいますか?

 モリィシーもそろそろ帰ってくる時間ですし。

 一緒に夕食を召し上がって行ってください。」


 ミンミン姉ちゃんは快くマリアさんのお願いを聞き入れたんだ。

 もちろん、マリアさんとしてはミンミン姉ちゃんの好意に甘えることにしたのだけど。

 ミンミン姉ちゃんが、ミンメイを連れて帰ろうとすると。


「やっ! ねえちゃとおふろ入るの。

 一緒に入るって約束したの。」


 ミンメイが帰るのを拒否したんだ。

 王宮に遊びに来ると、おいらの仕事が終わるのを待って一緒にお風呂に入るのが習慣になってたから。

 お屋敷にはお風呂が無いものだから、ミンメイはとっても楽しみにしているんだ。


 ところが、このミンメイの言葉に反応した人が居て…。


「なに? マロンちゃん、この王宮ってお風呂があるの?

 ダーリン、一言も言ってなかったじゃない。

 いーなー、私も入りたいなー。」


「いや、姉さん、マロンには素性を明かさないって言ってたじゃないか。

 幾ら何でも、町人が王宮へ行って風呂を使わせろとは言えんだろうが。」


 どうやら、マリアさんは目覚めてから一度も入浴をしてないらしい。

 研究所のシャワーはとっくの昔の壊れちゃったらしく、『積載庫』に予備は無かったそうなの。

 と言うか、予備があっても、水回りの配管やボイラーの交換なんてマリアさんにはお手上げだって。


 この町に来てから、桶に入れたお湯を使って体を拭いてたそうだけど。

 それでは、サッパリしないものだから、お風呂に入りたかったそうだよ。

 ひまわり会が経営する風呂屋に押し掛けて、一部屋占拠してやろうかなんて本気で考えだしていたって。


「良いんじゃない。

 元々、ミンメイとお風呂に入る約束をしてたし。

 ミンミン姉ちゃんも、マリアさんも一緒に入ってから帰ると良いよ。」


「マロンちゃん、有り難う。

 四人も一緒に入れる大きなお風呂があるなんて素敵! 

 昔来た時も、イブが言ってたのよ。

 この街は真水が貴重だから、お風呂なんて入れないって。」


 タロウと一緒に暮らすと決めてから、お風呂なんて望むべくも無いと諦めてたらしい。

 お風呂に入れると聞いて、マリアさん、目を輝かせていたよ。  


 はい、はい、気が済むまでゆっくりお湯に浸かっていってください。

お読み頂き有り難うございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ