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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十九章 難儀な連中が現れたよ…
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第657話 頭を抱えちゃったらしいよ…

 「他人と争うな。」、「他人の物を奪うな。」、そう口を酸っぱくして躾けたにも関わらず。

 最初にマリア(マロン)さんが創り出した人工生命体のアダムは、他の集団を侵略したそうだよ。

 衝突防止のために緩衝地帯として設けた魔物の領域を越えて、近隣の集団に攻め入ったらしいの。


 幾度か血の惨劇を招いた末、アダムは三つの集団を併呑しこの大陸で最初の国を建国したんだって。


「でも、マロンさんはアダムを叱りに行かなかったの?」


「もちろん、行ったわよ。

 だって、単なる喧嘩じゃなくて、殺人まで犯しているのよ。

 絶対にダメだとちゃんと教えてあったのに…。」


 一つ目の集団を侵略した時に、そこのリーダーを惨殺したと知りマリアさんは激怒したらしい。

 アカシアさんと一緒にアダムの所に乗り込んだそうなんなんだけど。


「アダムは私の言葉に耳を貸さなかったの。

 『煩い、ババア、黙ってろ!』ですって…。」


 アダムは取り巻き達にマリアさんの排除を命じたそうで、渋々その場を退席したしたそうだよ。

 いったい何処で育て方を間違えたのかしらって、マリアさんはため息交じりに呟いてた。


「アダムがそんなんじゃ、もう一人の問題児も暴れたんじゃないの?

 ノアはどうなったの?」


「それね、私も心配してたのよ。

 でもノアの場合、一緒に入植したメンバーが良かったの。

 とても親分肌の女の子が居てね。

 その子がノアを上手く操縦してくれたのよ。

 一応、ノアがリーダーと言うことになっていたんだけど。

 ノアは夫婦になったその娘の尻に敷かれて逆らえなかったの。」


 リーダーなのだから率先して働けと、その娘はノアの尻を叩いたんだって。

 リーダーのノアが先頭にたって農作業に勤しむものだから、他の男の子も真面目に取り組まざるを得ず。

 その町は、とてもスムーズに発展したそうだよ。


 マリアさん、言ってたよ、アダムにも良い伴侶が居たらよかったのにって。

 因みに、最初の集団では『俺様』気質のアダムは、女の子に疎まれていたそうで。

 アダムが飛び出したのは、自分の集団からお嫁さんが見つからなかったって理由もあるらしい。

 冒険心からだけでは無く、何処か他の集団から嫁さんを手に入れようって下心もあっての行動だったって。


 アダムは他の集団を併吞する度に気に入った娘を召し上げて、最終的には五人もお嫁さんが居たらしい。

 「ホント、サル山のボスザルみたいな子だったわ。」と言って、マリアさんはまた溜息を吐いてたよ。


       **********


「もっとも、私がリアルタイムで把握しているのは最初の侵攻だけなの。

 アダムが二つの目の魔物の領域を討伐し始める前に、私は最初の眠りに就いたから。」


 アダムは最初の町を征服した後、その町で一番可愛い娘を強引に嫁に召し上げたそうで。

 しばらくは、その娘にご執心で大人しくなったらしいの。

 これで、落ち着いてくれるのではとマリアさんは期待したそうだよ。


 その頃、既に六十歳を超えていたマリアさん。

 嫁さんを貰うと言う望みを叶えたアダムが、もう他の町を襲うことは無いだろうと思うことにしたそうで。

 素敵な恋をするって自らの野望を叶えるべく、アカシアさんの『積載庫』の中で眠りに就いたんだって。


 何時までも人族のことに関わっていたら、自分の人生が終わってしまうと言うことで。

 アダムのことはもう心配いらないと、自分に言い聞かせることにしたらしいよ。


「それから、約百年後に目覚めた時、驚いたわ。

 アダムがあの後二つも、別の集団を飲み込んだと聞いたから。

 あのサルったら、お嫁さんが一人じゃ満足しなかったみたい。

 でもね、もっと驚いたのは、あと数回眠りに就いた後に起こったことなのよ。」


 アダムとノアを最初に入植させてから、四百年程過ぎた頃の出来事らしいよ。

 各地に入植した集団が順調に成長した結果、中央に広がる大平原には小国が沢山出来ていたそうなの。

 そして、その小国の幾つかがアダムの国同様、魔物の領域に到達していたらしい。

 その国々はアダムのような冒険心からではなく、開拓が進んだ結果、魔物の領域に行き当たったらしいけど。


「まあ、自分達に与えられた領域を開拓し終えた訳でも無いのよね。

 町がある程度大きくなると、そこから独立して新たな町を作ろうとする人々が出て来たの。

 新たな集団は、元の町との軋轢を避けるためある程度距離を取って開墾を始めるようでね。

 それを何世代も繰り返した結果、四百年経ったら魔物の領域まで到達したって訳よ。」


 その結果、個々の集団に与えた領域は、虫食い状態に点々と開拓が進んだそうなの。

 マリアさんは言うんだ、人には根源的に所有欲があるので自分の土地を手に入れたいって欲求は理解できると。

 とは言え、アダムみたいに意図的に探検した訳でも無いのに、たった四百年で魔物の領域まで達したのは想定外だったらしい。


「じゃあ、自分の土地を手に入れたいと望んで。

 元居た町から分離した人達が、魔物の領域に足を踏み入れたんだね。」


「そう言うこと。

 魔物の領域に到達した集団は、チャレンジャーにも魔物を討伐しながら開墾を続けたのよ。

 そして、私が目覚めた時には幾つかの集団は、魔物の領域を越えていたの。」


「それで、魔物の領域を越えたところで、別の集団と鉢合わせした訳だ。」


「そう、お互い土地を求めている集団同士だから…。

 新たな土地があると思っているところに。

 突如として競合者が現れて、心穏やかなはずは無いわね。」


 片や新たな土地を求めて魔物の領域を越えた来た人達で、新たな土地が欲しい訳だけど。

 魔物の領域を越えた先には、既にそこまで開墾してきた人達が居た。

 そこで生活を営んでいる人達が余所者を受け入れる義理は無いし、ましてや土地を分ける義理など当然ない訳で…。


 結局、魔物の領域を越えて来た集団は引き返すことを良しとはせずに、略奪者となった訳だ。


「目覚めてみれば、大陸中央に広がる大平原で争いが多発していたの。

 仲介に入ろうにも、既に修復不可能なくらい両者の関係が悪化していて。

 私の力では如何ともし難かったわ。」


 マリアさんが知った時には既に流血沙汰を起こした後で、お互いに憎しみを持っているケースが多かったらしい。

 あれほど争いの無い世の中を創ろうと努力していたのに、惑星テルルの二の舞いになるかと思うと気が遠くなったそうだよ。


「テルルの民の末裔が飢えないようにと。

 育てやすく多収穫な作物を与え。

 衣服にも不自由しないように。

 多収穫で環境耐性の強い綿花や亜麻なんかも与えたのよ。

 巨大な繭玉を作るカイコだって。

 製糸や織布についても、動力発明前としては最大限効率化した機械を与えたの。

 衣食住が満たされれば、人は争いをしないと思ったのに…。」


 巨大なカイコって…、まさか、あのイモムシもマリアさんが生み出したの?

 それはともかく。

 争いを止めようとしない人族に、マリアさんは愛想が尽きたとのことで。

 妖精族に指示を出したそうだよ。

 争いを始めた集団には、今後一切『妖精の泉』の水を与える必要がないと。

 この時点で、過保護な事は全て止めることにしたんだって。


「もう、私、失望したわ。

 人族のことは放置で、ふて寝することにしたの。

 また、百年ほどね。」


 いや、ふて寝って…、本当に争いを制止しないで良かったの? 

お読み頂き有り難うございます。

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