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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十九章 難儀な連中が現れたよ…
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第635話 お手並み拝見といきましょうか…

 タロウが『教団』の恫喝役を一蹴した時、その隣の部屋では…。

 丁度、恫喝役の男がチランの連れ込まれた部屋に踏み込んだところだった。

 開け放たれた扉から僅かに覗くことが出来た光景はと言うと。

 半裸のお姉さん二人が、やはり半裸のチランを挟むようにベッドに横たわっていたよ。

 

 そのタイミングを窺っていたんだろうね、男二人はチラン達が居る部屋に踏み込むと。


「よお、色男、両手に花とは良いご身分だな。

 でもな、あいにくそっちの女は俺のコレなんだ。

 テメエ、人の女に手をつけやがって。

 タダで済むと思ってんのか。」


「そうだぜ、兄ちゃん。

 もう一人は俺っちのスケよ。

 きっちり、落とし前つけてもらわねえとな。」


 チランに向かってお決まりの恫喝をかましたの。

 恫喝役がベッドの前に立ち塞がったんで、チランの姿はその陰に隠れちゃったよ。


「へっ? あんたらがこの二人のカノジョだって?

 ナイ、ナイ。

 鏡で自分の顔を見たこと無いの?

 こんな可愛い娘があんたらみたいな醜男(ぶおとこ)のカノジョだなんて。

 ぶっちゃけ、チョー有り得ないんだけど。

 ぷぷっ。」


 姿は見えないけど、チランのセリフだけは聞こえてきたよ。

 その声からは臆した様子は窺えず、チャラい言葉遣いで恫喝役を挑発してた。


「ねえ、ウレシノ。 アレって大丈夫なの?

 恫喝役二人を相手に、あんな挑発してるけど…。」 


 見た目チャラ男のチランが、スジ者二人に敵うようには思えないんだけど。


「心配しなくとも平気ですよ。

 あにぃだって、腐ってもノノウの一族ですから。

 山で熊を間引いたり、夕食の猪を狩ったり。

 そんな仕事は若手男衆の仕事でしたもの。」


 子供の頃から畑仕事もしているので、チャラい見た目でもかなり鍛えられているみたい。

 ノノウ一族では男女を問わず、一人で熊を狩れて一人前なんだって。


 まあ、それなら大丈夫か。

 ウレシノの説明を聞いて、お手並み拝見と思っていると…。


「おい、色男、随分と舐めた口利いてくれるじゃねえか。

 女の前だからって、イキってるんじゃねえぜ。」


「おう、そうだぜ。

 俺っち達二人を相手に喧嘩売ったこと。

 後悔させてやる。」


 この時、チランはまだベッドに横たわっているようで、恫喝役の一人が掴みかかったんだ。

 どうやらチランの首根っこを押さえて、動きを止めようと言う算段らしい。

 横たわるチランに襲い掛かる男二人の体勢が低くなったので、チランの様子が見えたよ。


 でも、簡単に捕まるチランでは無かったようで。

 チランは襲い来る男の手首を捕まえると、そのまま力任せに引き寄せたんだ。

 男は体勢を崩してチランの方に倒れ込んじゃった。


「うがっ…。」


「顔と同じで頭まで悪いってか…。

 そんな単調な動きしてりゃ、捕まる馬鹿はいないぜ。」


 そんな言葉を漏らしたチラン。

 無防備な状態で倒れ込んできた男のあごを、思い切り掌底で打ち抜いたよ。

 男は一撃で意識を手放したようで、チランに手首を握られたまま力なくベッドに伏してたの。

 すると、チランは握った手首を更に引っ張り、倒れた男を自分の正面に持って来たんだ。

 それは、もう一人の男の動きを予知していたかの如く流れるような動作で…。


 ゴキッ!


 もう一人の恫喝役に対する盾に使ったんだ。

 突き出された拳の前に、待ち構えていたのは仲間の額だったの。

 

「痛てぇ!」


 仲間の堅い頭蓋骨を殴ってしまい、拳を押さえて蹲るもう一人の恫喝者。

 蹲った男の側頭部をチランは握った拳で打ち抜いたよ。


 結局、チランはベッドから上半身を起こしたままの姿勢で、厳つい恫喝役二人を無力化したんだ。


 大したものだと感心していると。


「おい、ウレシノ。 そこに居るんだろ?

 悪いけど粗大ゴミを二つ回収してもらえるか。」


 部屋の中のチランから声が掛かったの。


「あにぃ、片付いたんだから自分で()()しなよ。

 あにぃが騎士団の詰め所に引っ張ってけば良いでしょう。」


 部屋に足を踏み入れたウレシノは、チランに抗議したんだけど。

 チランは股間を覆うモッコリと膨らんだシーツを指差して言ったの。

 

「俺、別のモノを()()しないといけないし…。

 この二人に尋問しないといけないからな。

 これがどういう状況なのか。

 この二人の体にじっくりと聞いてみるつもりなんだ。」


 その時チランは、逃がすまじと『歓び隊』のお姉さん二人を両腕の中に抱えていたよ。

 どうやら、チランは『美人局』の件について尋問するつもりらしい。

 でもなんでこんな所で? 詰め所に戻って取調室ですれば良いのに。


「あにぃ、…。」


 ウレシノはチランに軽蔑の眼を向けていたけど。


「はあっ…、仕方ありませんね。

 一般人に対する被害を未然に防いだのですから。

 ご褒美も必要ですね。

 それは、あにぃの獲物ですし。

 好きにすれば良いでしょう。

 但し、その二人は徹底的に躾けてくださいよ。

 今後王都の民に迷惑を掛けないように。」


 ウレシノはそう告げると、気絶した恫喝役二人をズルズルと引き摺って部屋から出て来たの。


「ねえ、あの二人、チランに任せちゃって良いの?

 一応、罪人を裁く権限はおいらにあるんだけど…。」


「良いんじゃないですか。

 あにぃ、牝犬を躾けるのは得意ですから。

 あにぃに掛かれば『教団』の洗脳なんて瞬時に解けますよ。

 まあ、ある意味洗脳より質が悪いですけど…。」


 ウレシノが太鼓判を押すものだから、ここはチランに任せることにしたよ。

 そして、チランの居る部屋も扉が閉ざされ…。


        **********


 それからしばらく、宿の三階は静寂に包まれたの。

 部屋の中からは物音一つ聞こえてこなかったので、何が起こっているのか分からなかったよ。


 ところが、唐突に女の人の喘ぎ声みたいな声が聞こえたと思うと。

 そのうち、サカリのついた猫の鳴き声の大合唱になったんだ。

 悲鳴にしては艶めかしいと言うか、何とも形容し難い声が二つ部屋から三階中に響いたよ。


「何、この声うるさい。

 部屋の中は大丈夫なの?

 タロウも、チランも酷いことをしてるんじゃ?」


 余りに異常な声に、おいらが扉を開けて中の様子を確認しようとすると。


「陛下、開けちゃダメです。」


 慌てた様子のトルテに引き留められたよ。

 更にウレシノがおいらの前を塞ぐように立って。


「ああ、気にしないでも大丈夫です。

 二人とも酷いことなど何もしてませんよ。

 むしろ、女性たちは天にも昇る心地良さかと。

 陛下もあと数年すれば分かりますよ。」


 何も酷いことは起こって無いから安心しろと言ったの。

 分かっていないのは、おいらとカラツ、それにオランの年少組三人だけのようで。

 周囲を見回すと、ジェレ姉ちゃん達も頷いていたよ。

 でも何故か、トルテとタルトは恥ずかしそうに赤面してた。


 そんな時。


「マロン様、心配しないといけないのは。

 部屋の中では無く、二階の連中かと。

 連中は『美人局』で、カモから金を巻き上げることと。

 カモを『教団』の手足にする事を目論んでいたのです。

 それを考えると、連中、この声で異常に気付くはずです。

 『美人局』で、こんな声が響くことは有り得ないので。」


 ジェレ姉ちゃんが警戒しろと周囲に指示したんだ。

 おいらには、何が異常なのかは分からないけど。

 『美人局』という犯罪の性格上、こんな声が上がる前の段階で目的が達せられていないといけないらしの。

 こんな大音量で響いたら二階に控えている連中まで聞こえるし、不審に思われるって。


 それから間もなく、ジェレ姉ちゃんの指示が的確だったと判明したよ。


「おい、いったい何が起こっている。

 『歓び隊』の娘は生娘のままじゃなければ拙いんだ。

 純潔を餌に、金持ちのボンボンに嫁がせるんだからな。

 金持ちの財産を一つ残さず『教団』に貢がせるための切り札なんだぞ。

 こんなちんけな『美人局』くらいで、カモに食われたら大損だぜ。」


 そんな言葉と共に部屋から出て来た『教団』の男。

 階段に向かって歩いて来て、おいらと目があったんだ。


「おい、お前ら何者だ!

 この宿は俺達の貸し切りだぞ。

 いつの間に入り込みやがった。」


 その声を聞きつけた『教団』の連中が続々と二階の部屋から出て来たよ。

 こちらは子供とメイド、それに護衛の騎士四人だから組み易しと思ったんだろうね。

 誰も一階の階段下にいる騎士には気付かずに、こちらに向かって襲い掛かって来たの。


「馬鹿か、お前らは…。

 そんなに密集して階段を登って来るなんて。」


 連中の行動に呆れた様子の近衛隊長のジェレ姉ちゃん。

 ジェレ姉ちゃんは階段の真ん中に立ち塞がると、先頭で階段を駆け上ってきた男を思い切り蹴とばしたんだ。

 蹴とばされて後ろに仰け反った男は、後に続く『教団』の連中を巻き込んで階段を転げ落ちたの。

 密集して駆け上って来たものだから、雪崩のように後続を巻き込んで落ちて行ったよ。


「下に居る騎士のみんな。

 そいつらを一人も逃がさないで。」


 おいらが指示を飛ばすまでも無く、物陰に身を潜めていた騎士達は飛び出してきたよ。

 すぐさま、手にした縄で連中を縛り上げてた。一人残らずね。

 もちろん、全員、アルトの『積載庫』に収まったんだ。ムルティのお土産として。

お読み頂き有り難うございます。

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