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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって
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第613話 親の心、子知らずと言うけど…

 マロンさんが、アカシアさんが捕獲してきたアレの素を見ていると。


「スゲー、山盛りの肉だぜ!

 アカシア姉ちゃんが取って来てくれたのか。」


 食べ盛りの悪ガキ二人が肉の匂いに釣られて寄って来たよ。

 二人とも、取っ組み合いの喧嘩をした後なので泥だらけだった。

 しかも、目の周りに青痣をこしらえているし…。


「そうよ、アカシアに感謝なさい。

 あなた達が喧嘩しないように沢山捕って来てくれたのよ。」


 アダムの問い掛けにマロンさんが答えると。


「「アカシア姉ちゃん、ありがとう!」」


 悪ガキ二人も、一応は礼儀正しく感謝を口に出すことは出来るみたいだね。

 ただ…。


「よーし、俺、アダムよりいっぱい食べるぜ!」


「俺だった敗けないぜ。絶対にノアよりたくさん食べてやる。」


 悪ガキ二人はこんな所でも、やっぱり張り合っていたんだ。

 張り合って無理に食べたら、お腹壊すよ。

 だいたい、二人共お腹いっぱいになるだけのお肉があるんだから。

 何で、仲良く食べようとしないんだろう。


「二人共、晩ごはんは静かに食べようね。

 食事の最中に喧嘩なんかしちゃダメよ。

 お肉は沢山あるんだから、仲良く食べなさい。」


 マロンさんが悪ガキ二人を諭すと。


「えーっ、大人しくなんか食べてられないぜ。

 ゆっくり食べてると、ノアの奴、俺の分まで食おうとするんだ。

 だから、ノアより早く食っちまわないと。」


「何だよ、最初に俺のおかず盗ったのはアダムの方だろう。

 おまえが盗ったから、俺は仕返しをしただけじゃないか。」


 仲直りしたのかと思えば、二人はまた口喧嘩を始めたよ。とても低次元なことで…。

 マロンさんは二人のやり取りを聞いていて頭を抱えちゃったよ。


        **********


「ねえ、あなた達、なんで喧嘩してたの?

 さっきまで、仲良く駆けっこをしてたじゃない。」


 オリジンが言い争いを続ける二人に尋ねたの。


 すると…。


「庭で駆けっこをしてたら隅っこでみつけたんだ。

 木の下に甘い匂いがする黄色いモノ。

 食べてみたら、甘くて美味かったんだ。」


 どうやら、何か果物の実が落ちていたみたいだね。

 でも、甘い匂いがしたからって、直ぐに口にしたらダメでしょう。

 毒のある実だってあるんだから。


「あら、ここで暮らし始めて直ぐにアカシアが見つけ出した。

 柿もどきの木、実を付け始めたのね。

 あれ、ちゃんと結実するんだ。」


 どうやら、苗木を植えて今年初めて実を付けたみたい。

 興味が無かったのか、マロンさんは実が生ってることに気付いてなかった様子だよ。


「それ、俺が先に見つけたんだ。

 なのに、アダムが横取りしやがって。」


「なんだよ、落ちてたモノだから誰のモノでもないだろう。

 そんなの早い者勝ちだろうが。

 そんな事より意地悪したのはノアの方だろう。」


 どうやら、甘い匂いを最初に嗅ぎ付けたのはノアで、それをアダムが横取りしたらしい。

 でも、喧嘩の原因はまだ別にあるらしいね。


「意地悪って?」


 マロンさんが尋ねると。


「甘いモノは、木の上の方にいっぱいあったんだ。

 ノアの奴、木登りが得意だから。

 俺が木登りが苦手なのを分かってて。

 木に登って独り占めしようとしやがった。」


「独り占めなんてしてないぞ。

 アダムにも取ってやったじゃないか。」


「あんなの分けてくれうちに入んないや。

 青くて渋いモノばかりじゃないか。

 しかも、思いっ切りぶつけやがって。

 すげえ硬くて痛かったんだぞ。」


「うるさい、木にも登れない奴が文句言うな。

 分けてやったんだから、大人しく食ってれば良いだろうが。

 降りてきたらいきなり殴りかかって来やがって。」


 どうやら、木に登って実を食べていたノアは、まだ未熟な実を木の下に居るアダムにぶつけたようだね。

 それに腹を立てたアダムは、ノアが木を降りてきたところを狙って喧嘩を仕掛けたと…。

 おいらの隣で映像を見ているタロウは、「サルとカニの喧嘩じゃあるまいし。」なんて零していたよ。

 カニっていったい何処から出て来たの…。 おいらにはサル同士の喧嘩に見えるけど。

 

 どっちもどっちな二人の言い分を聞いて、マロンさんは更に頭を抱えちゃったよ。


        **********


「ねえ、二人とも、何でママの言い付けを守れないの?

 揉め事は話し合いで解決しなさい。

 物はみんなで仲良く分け合いなさい。

 他の人には思いやりを持って接しなさい。

 何時もそう言ってるでしょう。

 口喧嘩は良いけど、殴り合いの喧嘩は絶対にしちゃダメ。」


 頭を抱えていたマロンさんは気を取り直して、二人を諭したんだけど。


「だって、ノアの奴がいつも逆らうんだもん。

 俺の言うことを聞こうとしないんだ。」


「それはアダムの方だろう。

 何時でも、先に手を出すのはアダムじゃないか。

 俺の言い分を無視しやがって。」


 二人はマロンさんの言い付けに従うどころか、反省の色も見えなかったの。


「ママ、その二人に言っても無駄よ。

 何時でも、自分が上じゃないと気が済まないの。

 二人に上下は無いって、ママはいつも言ってるでしょう。

 そもそも、それが気に入らないのよ。」


 言い争いを続ける二人を見て、イブがマロンさんに説明してたよ。

 この子、何気に賢いけど、まだ五歳くらいだよね。


「ふっ…。

 そもそも、最初から相互理解と譲歩をする気が無いんじゃ。

 マロンが苦心して、どんな言語でも理解できるようにした甲斐が無いわね。

 きっと、これが人族の本性なんじゃないの。

 五歳児が二人しかいないのにこのありさまじゃ…。

 テルルを滅びへと導いた気の狂った独裁者が現れたのも頷けるわ。」


 イブの言葉を耳にしてため息を持たしたオリジンは、そんな言葉を漏らしてたよ。


「おかしいわね…。

 言葉さえ理解することが出来れば、後は躾でどうにかなると思ったのに。

 ほんの小さな時から、優しい人になるようにと刷り込んできたのよ。

 なのに何で、あんなに血の気の多いのかしら。」


 マロンさんが三人を育てるに当たり、色々気を配ってきたそうなの。

 マロンさんは、三人に出来る限り愛情を注いで育てるように心掛けたし。

 三人共分け隔てなく平等に育てるようにも注意したんだって。


 また、マロンさん自身も三人に決して手をあげることはしなかったそうなの。

 研究の手を停めて、出来る限り三人のために時間を取るようにもしたらしいよ。

 三人の子供と長い時間を過ごす中で、暴力の愚かさや寛容の精神の大切さを言い聞かせて来たんだって。


 それもこれも、今度こそ世界を滅ぼすような愚か者が出ないようにとの願いからだったのに。

 初っ端に生み出した三人のうち二人までが、血の気の多い子供で困惑している様子だよ。

 二人しかいないのに、サル山のサルよろしく上下関係を争うなって想定外だって。


「ママ、そんなに悲しまないで。

 私はママの言い付けを守るよ。

 アテナとも仲良くするし。

 ちゃんと、アテナに言い聞かせるよ。

 あの二人みたいには、なっちゃダメって。」


 気落ちするマロンさんを励ますように、イブがそんなことを言ってた。

 ホント、この子だけは、マロンさんの想いがちゃんと伝わっているみたいだね。

お読み頂き有り難うございます。

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