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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって
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第610話 新しい朝の訪れ、希望に満ちた朝の…

 ひと眠りするつもりが、アカシアさんによって長い眠りに就かされてしまったマロンさん。

 目を覚ますとなんと二十億年もの時間が経過していたの。

 そして目の前には、青く輝く水の惑星が迫っていたんだ。


「今更ジタバタしても仕方ないわね。

 ここまで辿り着けたのだって奇跡みたいなものだし。

 後はあの星と私達の双方が無事な事を祈りましょう。」


 マロンさんは、アカシアさんによって映し出された外部の映像を見ながらそう言ったの。

 そうこうする間にも、水の惑星は迫って来たよ。

 映し出された星は最初に見せてもらったこの星の姿そのものだったよ。

 きっとさっきは、この時の映像を逆回しで見せてくれたのだね。


 やがて、マロンさん達がいる「不思議な空間」を乗せた小惑星は水の惑星に落下したの。

 そこで映像は途切れたよ。


「こうして私達を乗せた流れ星は、この星に辿り着いたのよ。

 それが今から約六億年前のこと。

 私達の乗った小惑星の衝突で、この星が砕けなかったのは幸いだったわ。」


 衝突の際、落下したエネルギーが熱と衝撃波に変わったそうで。

 木々をなぎ倒し、大地を溶かし、業火が陸地を覆い尽くしたらしい。

 六億年前に生物がいたかどうか定かでないものの。

 マロンさん達が見る限り、生物が生存できる状態ではなくなっていたそうだよ。


 また、落下した付近の大地が大量に砕け散ったそうで。

 この大陸を取り巻くように存在する岩礁は、この時の衝撃で吹き飛んだ岩石の落下により形成されたらしいよ。


「なあ、その状況じゃ、この星全体が住める状況じゃなかったろう?

 俺がいた世界じゃ、同じような事が起こって恐竜って生き物が絶滅しているぞ。

 小惑星の衝突からしばらく、『隕石の冬』が起こったって。」


 タロウがアカシアさんにそんなことを尋ねたの。


「あなた、良く分かったわね。

 あなたの想像通り、私達が乗ってきた小惑星の衝突はこの星に甚大な被害を与えたの。

 衝突によって発生したガスや塵が大気中を漂って恒星の光を遮ったのよ。

 それによって気候が極度に寒冷化したわ。

 暗い極寒の地と化したこの星は、生命にとってとても苛酷な環境になってしまったの。」


 日照の皆無と寒冷な気候で、とても植物が生育できる環境では無かったし。

 そもそもこの大陸は衝突により表土が剥ぎ取られ岩が剥き出しの大地になっていたそうなの。

 なので、食糧となる植物を育てることは絶望的だったらしいよ。


「それじゃ、みんな、どうやって生き残ったの?」


 タロウとアカシアさんの会話に割って入り、おいらが尋ねると。


「マロンは躊躇なく眠ることを選択したわ。

 この星の環境が回復することに賭けてね。

 二十億年も寝てたのですもの。

 今更多少増えても大したことないと思ったみたい。」


 眠るって、要はアカシアさんに時間を止めてもらうと言うことだよね。

 アカシアさんは、マロンさんのお願いに応えて再び時間の流れを凍結したんだって。


 水が大地を潤し、緑が戻り、動物が戻るまでの長い眠りに就いたそうだよ。


        **********


 二十億年の時を過ごす中で、アカシアさんは一定期間自分の時を止める術を覚えたらしく。

 この星で眠りに就いた時はアカシアさん自身の時も止めたそうだよ。

 数百年ごとに目覚めて外部環境を確認することにしたんだって。

 その方が体に負担が少ないし、食料やエネルギーを温存できるから。


 そして再び、壁のモニターに映像が映し出されたんだ。

 それは今から約四十万年ほど前のことらしい。


「マロン、起きて。起きなさい。

 そろそろ、本格的に活動しても良いんじゃない。

 外は緑の大地になっているわよ。」


 ベッドで気持ち良さそうに眠るマロンさんをオリジンが起こしてたの。


「あっ、オリジン、おはよう。

 あれから、どのくらい、眠っていたのかしら?」


 ベッドから体を起こしたマロンさんは、真っ先に経過した時間を尋ねてたよ。


「アカシアの話ではあれから六億年ほど経ったらしいわ。

 一年程前に目覚めて、周辺を調べてくれたそうで。

 空気の成分はテルルとほとんど同じ。

 水も成分は同じで、豊富にあるらしわ。」


 どうやら、アカシアさんは一足先に目覚めてこの大陸の様子を色々調べていたらしい。

 それで、人族が住んでも害のない環境だと確信が持てたのでみんなを起こしたそうだよ。


「本当、それは素敵ね。

 のんびり寝ている訳にはいかないわ。

 子供達のコールドスリープも早く解いてあげないと。」


 オリジンの返事を聞いたマロンさんは、ベッドから飛び起きたよ。

 足早に寝室を出て研究室に向かうと、そこにはアカシアさんが待ってたの。


「おはよう、マロン。

 お目覚めの気分は如何かしら?

 よく眠れた?」


「ええ、とってもよく眠れたわ。

 それに目覚めの気分も最高よ。

 オリジンが良い知らせを教えてくれたから。」


 アカシアさんの問い掛けに、マロンさんは満面の笑顔で答えてた。


「オリジンから聞いたわ。

 アカシア、有り難うね。

 一足先に起きてこの周辺を色々調べてくれたのですって。

 とても助かるわ。」


「ママから聞いたのね。

 ええ、この星、とてもテルルに似た環境だわ。

 酸素濃度も、水の成分も人族の体に適してる。

 おまけにテルルよりも温暖で穏やかな気候なのよ。」


 既に一年を過ごしてきたアカシアさんは、この大陸には酷暑の夏も極寒の冬も無くて過ごし易いと報告してたよ。

 アカシアさんは、この一年自生している果物を食べて生きてきたそうで、野生の果物も豊富だと言ってたの。


「そう、良かったわ。

 私達が落ちてきたせいで、大変なことになってしまったものね。

 随分と時間を要したみたいだけど、居住可能な状態になって幸運だわ。

 それで、テルルの人族と競合するような進化の段階にある生物はいるかしら。

 この惑星の原住民がいるとか。」


 マロンさんの懸念は、この惑星独自に進化した人族的な生物が居て争いになることらしい。


「この一年、大陸中を隈なく回ってみたけど。

 人族と同等の生物は見かけなかったわ。

 サルが数種類見られたけど、人までは進化してないわね。」


「それは有り難いわ。

 じゃあ、テルルの人族の安住の地にしても大丈夫ね。」


「良かったわね。

 今までの努力が報われるじゃない。

 目の下に隈を作りながら研究に励んだ甲斐があったわね。」


 アカシアさんの報告に喜ぶマロンさん。

 そんなマロンさんを、オリジンが労っていたよ。


 そして、マロンさんは宣言したの。


「それじゃ、さっそく『箱舟プロジェクト』の最終段階を始めましょうか。」


 と。


 その時のマロンさんは、今まで見てきた映像の中で一番良い笑顔を見せてくれたんだ。

 初めて希望に胸を躍らせているって感じに見えたよ。

お読み頂き有り難うございます。

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