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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十八章【間章】おいらが生まれるよりずっと前のことだって
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第609話 気が遠くなるほど長い漂泊の果てに…

 そして、また壁のモニタにーに映し出された映像は切り替わり。


「マロン、起きてちょうだい。

 もう十分に眠ったでしょう。」


 画面の中ではオリジンが就寝中のマロンさんを起こしていたよ。


「う、うん…。もう、朝…。

 やっぱり疲れていたのかしら、あまり眠った気がしないわ。」


 そんな言葉を漏らしながら、マロンさんはむくりと起き上がったの。

 ベッドの上で体を起こし、眠そうに目を擦ってた。


「あら、やっぱり…。そんな事があるかもとは思ってたけど…。」


 オリジンの隣に浮かんでいたアカシアさんから、そんな意味有り気な呟きが聞こえたけど。

 マロンさんの耳に、その呟きは届かなかったみたい。


「アカシア、アレをマロンに見せてあげて。」


 マロンさんがベッドの上で寝惚けていると、オリジンがそんな指示を出したの。


「はい、ママ。」


 アカシアさんは指示に頷くと、寝室の白い壁に何かを投影したの。

 どうやらそれは、『不思議な空間』の外部の様子みたいだった。


 そこに映し出されたのは…。


 青く輝く一つの星だったの。


「マロン、見て、水の惑星よ。

 私の達の乗った小惑星、あの惑星の重力に引き寄せられてるわ。

 おそらく、あと数日で衝突すると思う。」


 アカシアさんの言葉を聞いて、マロンさんは飛び起きたよ。

 そして…。


「いったい、何の冗談なの。

 テルルから観測できる範囲内に生物の生存可能な星は存在しなかったのよ。

 一眠りしている間に到着する位置にそんな星がある訳ないじゃない。

 小惑星の移動速度なんてたかが知れているし。」


 到底信じられないって表情でマロンさんは言ってたよ。

 そんなマロンさんに、オリジンが告げた言葉は…。


「そうね、たった一晩で着く訳が無いわね。

 マロン、落ち着いて聞いて。

 テルルから弾き出された後、ひと眠りしたつもりだろうけど。

 マロンはあれから約二十億年眠っていたのよ。

 マロンだけではなく、私もだけど。」


 いや、二十億年って…、桁違いも一つ、二つじゃないじゃん。


「私がこの空間の時間を止めたのよ。

 管理人としての私が存在する場所以外の時間をね。

 この空間を一種のタイムカプセルにしたの。」


 そう言えば、おいらの『積載庫』の中は時間が停まっているんだっけ。

 ナマモノを入れておいても腐らないの。


「あの日、マロンが眠りに就いた後、アカシアから相談されたの。

 僅かな可能性かも知れないけど、生き残るにはこうするしか無いのではと。」


 訳が分からないって表情のマロンさんにオリジンが説明をし始めたんだ。


        **********


「あの日、マロンが部屋を出て直ぐのことよ。

 アカシアが重大なことに気付いたのよ。

 電気が無ければコールドスリープが維持できないと。」


 元々、『箱舟』の完成に懐疑的だったマロンさんは、コールドスリープによる種の保存の一縷の望みを託そうとしたの。

 そのためにコッソリと発電や蓄電に必要な資材を蓄えてたらしいけど。

 それはあくまで、テルルそのものは無事で発電できることが前提だからね。


 そもそも、ソーラーパネルすら設置できなければ意味も無いって。

 非常用電源に貯め込んでた電気が尽きたら、コールドスリープ中の子供達が大変なことになるとアカシアが指摘したらしいの。

 

「今、マロンが指摘した通り、近隣数光年程度に生存可能な惑星は無いのよね。

 どう足搔いたって、そんな長い旅路にコールドスリープを維持できそうもないから。

 あの子達を生き残らせるためにイチかバチかでアカシアの提案に乗ったのよ。」


 アカシアさんは、「不思議な空間」のことを調べようと色々試していたそうなの。

 あれこれ試しているうちに、空間内の時間を止めるられることに気付いたんだって。


 それで、マロンさん達が乗る小惑星が何処かの星に辿り着くまで、時間を停めちゃうことにしたそうだよ。

 とは言え、アカシア自身の時間まで停めてしまうと、再度時間の流れを取り戻すことが出来ないかも知れない。

 そう考えたアカシアは、自分だけ別の部屋で、気の遠くなるような長い年月を一人過ごして来たらしいの。

 ちなみにオリジンもマロンさんと共に眠っていたらしい。

 オリジンはアカシアさんと違って寿命を延ばす処置が施されていないから。


「アカシアの提案には不安要素もあったのよ。

 この漂泊がいつまで続くか分からないでしょう。

 その間にアカシアが寿命を迎えてしまえばそれまでですもの。

 これは博打以外の何ものでも無かったわ。」


 二人は思ったそうだよ。

 マロンさんに相談すれば、きっとマロンさんもアカシアと共に過ごすと主張するだろうと。

 アカシア一人に孤独な時間を過ごさせる訳にはいかないってね。


 そんな事になれば、短命な人族のマロンさんが先に寿命が尽きるのは明らかだからね。

 敢えて、マロンさんに無断で実行することにしたらしいよ。

 マロンさんが寝入ったのを確認するとすぐさま実行に移したんだって。

 

 さっき映像にあったアカシアさんの意味有り気な呟きの意味が分かったよ。

 アカシアさんが眠りに就いてすぐに時間が停められちゃったから。

 きっと、アカシアさん自身はほんのわずかな眠りとしか自覚してないんだ。

 だから、連日の睡眠不足の倦怠感が払拭されていないんだね。


 さて、二人が無断で実行したこの博打だけど、成算は無茶苦茶低かったらしいよ。

 アカシアさんの寿命もそうだけど、辿り着く先が生存可能な星とは限らないからね。

 それに関しては、「不思議な空間」が小惑星にくっついた以上は抗いようもないのだけど…。


「まあ、色々と不安はあったけど…。

 私達は賭けに勝ったわよ。

 見なさい目の前の水の惑星を。

 ちゃんと大気だってあるわ。

 生存可能な惑星である確率が高いわよ。」


 オリジンは青く輝く星を指差しながら、誇らし気に言ったんだ。

 アカシアさんの寿命が尽きる前に生存可能な惑星に辿り着いたと。


 でも、マロンさんはと言うと…。


「事情はだいたい呑み込めたわ。

 アカシア、随分と長い時間寂しい思いをさせちゃったみたいね。

 有り難う。これでみんなが助かればアカシアのおかげよ。

 ただね…。

 この小惑星が衝突して、あの惑星は無事かしら?」


 目の前に映し出された星を見ながら、とても不安そうな顔をしていたよ。

 テルルが破局を迎えた時と同じ事態になるのではと懸念しているみたい。

お読み頂き有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] どうやって恒星間航行速度を得たのかな? 大事なことなのでもう一度おたずねします。 どうやって恒星間航行速度を得たのかな? 異世界ファンタジーからSFになったのでこれとっても大事なことなのです…
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