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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第59話 えっ、それはどうなの?

 アルトが冒険者ギルドで大暴れをしてから一週間ほど過ぎたよ。


 冒険者ギルドはすっかり大人しくなったみたい。


 風呂屋で、噂好きのオバチャンから聞いた話だけど。

 ビリビリを食らったギルド幹部十七人は寝たきり状態で未だに起き上がれるものはいないらしい。

 アルトがもう使い物にならないと言った通りみたい。


 ギルドの組長も、子供のようになったまま、戻ってこれないらしいよ。

 何でも、最上階の目抜き通りを見下ろす場所に組長室があるそうなんだけど…。

 今までは、「見ろ、人がゴミのようだ!」と言って道行く人を見下していたらしいの。

 それが今では、「たかいのヤー、たかいのこわいよー!」って言って階段を登れないらしい。


 もう組長としては、役立たずなんだけど、引退させてもらえないみたい。

 何でも、毎月、『エンコを詰める』という、大切なお仕事があるんだって。

 「あんなになっちゃって、大切な仕事を任せて大丈夫なの」っておいらが聞いたら。


 オバチャン、微妙な顔をして…、

 

「あんな風になっちまったから、他の仕事はさせられないのさ。

 なあに、十ヶ月もすればお役目を果たして引退させてもらえるさね。

 次の組長は、今寝たきりになっている誰かだろうね。

 まあ、寝たきりなら、『エンコ詰め』も楽だろうからね。」


 なんて言ってたよ。

 『エンコを詰める』仕事って、とても普通の神経の人にはやらせられないって。

 なに、その仕事…。


 冒険者ギルドは副組長という人が、切り盛りしているらしいけど。

 アルトの容赦ない仕打ちを目の当たりにして、相当ヤバいと思ったらしい。

 ギルドに出入りしている冒険者に、絶対にカタギに迷惑かけるなと釘をさしたみたい。


 冒険者の連中、不満たらたらだったみたい。

 町の人にイチャモン付けて金を強請取るのが主な収入源だったのに、それをダメと言われて。

 更に、若い冒険者をトレントの餌にするのも禁じられたもんだから、キレた冒険者もいたみたい。

 キレた冒険者たちは、ギルドの指示に従わずに強請を続けようしたみたいなんだけど…。

 アルトからの報復を恐れた冒険者たちに袋叩きにされたみたいだよ。

 何でも、生かしておいたら何をするか分からないってことで、若いモンの代わりにトレントの餌にされたみたい。


 オバチャン情報によると。

 アルトが暴れた日、キレた連中はギルドの酒場で飲んだくれてたりして、アルトの恐ろしさを知らなかったみたい。

 袋叩きにした方は、目の前で組長や幹部の惨劇を目の当たりにして、アルトを怒らしたらシャレにならないと思ったみたい。

 一部の跳ねっ返り者がした悪さでとばっちりを食うことを恐れて、キレた連中を粛清したらしいの。


 何はともあれ、そんな訳で、今のところ冒険者ギルドと冒険者たちは大人しくしているみたい。


 そうそう、アルトの助言通り、魔物狩りで収益を上げられるようにギルドで冒険者の育成を始めたの。

 でもねえ…。

 元々、冒険者になろうとこの町に出てくる連中ときたら、キツイ農作業が嫌で村を逃げ出してきた根性なしばっかり。

 古株の冒険者が稽古を付けてあげたら、一日で村に逃げ帰る者が続出したらしいよ。

 本気でやったら、農作業より冒険者の訓練の方がよっぽどキツイって。

 この一週間で、訓練を続けているのは三人しかいないって言ってた。なんだかなぁ…。

 

     ********


「すげえな、スキルの実の効果って。

 『野外移動速度アップ』を頑張ってレベル五まで上げたら、移動が凄く楽になったぜ。

 移動速度七十五%アップてのはダテじゃねえや。

 それに、このスキル速さが速くなるだけじゃないんだな、スタミナも増えるみたいだ。

 そりゃそうか、二倍近い速さで歩けば、その分体力も使うわな。

 スタミナが変わらなかったら、単に早く着くだけで進める距離は大して変わんねえもんな。」


 あれから、三日間日課のスライム捕りも休んでスキルの実を食べ続けたタロウ。

 三日間丸々かけて、何とか二つのスキルをレベル五まで上げたの。

 五歳の時のおいらと同じ状態で、スキルの実以外何も食べなかったみたい。


 スキルの実が腐る前になんとかレベル五まで上げたタロウは、しばらくイチゴとキウイは見たくないって言ってたよ。


「そうそう、『野外採集能力アップ』もすげえや。

 レベル五になったら、何処に一番スライムが密集しているかとかがなんとなくわかるんだ。

 その場所に、美味く布袋を被せたら本当に七十五%増しで捕れやんの。

 これ、いったいどうなってんだろうな、ホント、ゲームみたいだぜ。」


 そうだね、『野外採集能力アップ』の実って、一つが銀貨五枚もするから、普通の人が上げれるのはレベル五くらいまでだもの。

 タロウは、三日間で一気にその領域まで到達したから、レベルゼロだった時とのギャップを強く感じるはずだよ。

 やっぱり、お店で買えば銀貨四百枚以上する数のスキルの実が、タダで手に入ったのは大きいよね。


「良かったね、タロウ、これからどんどん稼げるようになるじゃない。」


「おう、ガンガン稼いで見せるぜ。

 この調子で頑張って金を貯めれば、残り一枠のスキルに何か戦闘系のスキルを買えるかも知れないからな。」


 そう言って、タロウは今日もスライム捕りに出かけて行ったよ。

 うん、真面目に稼ぐ気になったのは良いことだね。

 でも、まだ戦闘系のスキルは諦めてないみたい…、チューニ病の完治はまだのようだね…。


 そして、クッころさんだけど。

 あれから三日間、寝る間も惜しんでスキルの実を食べ続けたの。

 なんと、レベル六まで上げちゃった。

 凄い執念、タロウの三倍も食べたんだもの。


 でもね…。

 

「頑張ってスキルレベルを上げたのは良いのですが…。

 わたくし、考えてみれば歩いて移動する事がありませんわ。

 それに、今、野外で採集をする事もありませんし。

 イマイチ、スキルの効果がピンと来ませんのよね。

 『野外移動速度アップ』の実を餌に与えた愛馬はかなり早くなりましたので。

 確かに、効果はあるのでしょうけど…。」


 なんて、ぼやいていた。

 うん、今のような生活をしていたら宝の持ち腐れだよね。

 

「いや、それなら歩きましょうよ。

 歩いた方が、体を鍛えることが出来ますよ。

 クッころさん、騎士になりたいんでしょう。

 草原をあてもなく、馬に乗って彷徨うより。

 剣の練習をしたり、野外を走ったりして体を鍛えた方が良いですよ。」


「体を鍛えるのですか?

 わたくし、体を動かすのは好きではありませんわ。

 体を鍛えて筋肉が付くのも見苦しいですし。

 騎士になるのって、『生命の破片』を取り込んで、『スキルの実』を食べれば良いのでは?

 わたくし、お父様やお兄様が鍛錬している姿など見た事がありませんわ。」


 何それ…。

 この国の騎士って、レベルとスキルレベル頼りなの? 鍛錬は?

 いや、確かに、レベルもスキルレベルも十を超えれば凄い効果だけど…。

 何にも鍛えてない八歳児でも、ワイバーンが狩れちゃうくらいに。 


 でも、体を鍛えるのが嫌な騎士とか、ヒョロヒョロの騎士って…、なんかイヤ。

お読み頂き有り難うございます。

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