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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
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第587話 やっとここまで帰って来たよ

 ティーポット島に立ち寄った時点で、宰相に許可してもらった四ヶ月の期限は大分迫ってたの。

 なので、のんびりしている訳には行かず、アルトが戻って来たらすぐに出発したんだ。

 途中、ムルティの島に寄って幾つかの用事を済ましたら、早々に辞去してきたよ。

 ムルティの島で済ませた用事は二つ。

 一つは、アルトが先に送り届けていた頭領さんの商船団の回収で、収容した時はみんな少しやつれていたよ。

 全員、目の下に隈を作ってた。


 そして、二つ目は『歌声の一族』のお姉さん方に対する差し入れの追加なんだ。

 オードゥラ大陸を海沿いに周回する間に、何隻もの武装商船に遭遇したの。

 商船と銘打っているものの、その実は海賊船で未開の地を襲っては略奪を繰り返しているんだって。

 略奪で手に入れた物品をオードゥラ大陸で商うので商人と呼称しているらしい。


 アルトは、そんな連中に遭遇すると手当たり次第に『積載庫』へ放り込んだの。

 武装商船に乗っている海賊共も一緒にね。


 今回捕えた海賊も『歌声の一族』の餌として、ならず者達を放牧している無人島へ追加で置いてくことにしたんだ。

 捕らえた海賊たちは結構な人数で、『歌声の一族』のシレーヌお姉さんに伝えたらとても喜んでいたよ。

 お腹の中で子供を育むための栄養に事欠くことが無くなるので有り難いってね。 


 そして、ポルトゥスの街を旅立っておよそ三ヶ月半、おいら達はサニアール国の王都ハムンに帰り着いたの。


 お土産を渡しにサニアール国の王宮を訪ねると。


「マロン様、アルト様、お帰りなさい。

 無事にお戻りになられて何よりです。

 お元気そうで安心しました。」


 出迎えてくれた第一王女のシナモン姉ちゃんが、おいら達の無事を喜んでくれたよ。

 おいら達が遥か海の彼方にあるオードゥラ大陸へ向かったものだから、ずっと心配してたみたい。


「今帰ったよ。心配かけちゃったみたいだね。

 でも、安心して。みんな無事だし、目的もしっかり果たしてきたから。」


 それから、おいら達はシナモン姉ちゃんに案内されてローレル王の部屋に通されたの。

 ローレル王は、宰相の指導のもと政務の勉強に励んでいるとのこと。

 その時も、執務机に座って宰相から何やら説明を受けていたよ。


 ローレル王の後ろには元工作メイドのサヤマがちょこんと控えてた。

 こいつ、意地でもローレル王から離れないつもりだな…。


 ローレル王もおいら達が無事に帰還してことを喜んでくれたよ。

 挨拶が済むと、おいら達は腰を落ち着けてオードゥラ大陸での出来事を説明したの。

 

「てな訳で、ヌル王国には今後一切この大陸に手出ししないように誓約させたから安心して良いよ。

 それに、ヌル王国は王を始め海賊の血を引く武闘派は大分粛清されちゃったから。

 この大陸に侵攻しようって気を起こす血の気の多い連中はもういないと思うよ。」


 ついでに、他の国からも沢山の武装船を奪ったことも言っておいた。

 なので当面この大陸にちょっかい出そうと考える国は無いだろうってね。


「まあ、アルト達が途中の海域にある結界を強化してくれたし。

 そもそも、この大陸まで辿り着ける船はまず無いと思うけどね。」


 併せて今回の騒動の引き金となったムルティの結界の件も説明しておいたよ。


「では、もうオードゥラ大陸からの襲撃に怯える必要は無いのですね。

 正直なところ、破壊された街の復興に手を焼いておりまして。

 また、襲撃されたら大変なことになると心配していたのです。

 お話を伺ってホッとしました。」


 そう言って胸をなでおろすような仕種をするシナモン姉ちゃん。

 本当に安心したって表情だったよ。


「街の復興に手を焼いているって、やっぱり資金が足りないの?」


「ええ、まあ…。

 資金ばかりでなく、人手も足りないところではありますが。

 想像以上に街が破壊されておりまして…。

 恥ずかしながら、資金が圧倒的に不足している状況なのです。」


 そんな返答をしたシナモン姉ちゃんは心底恥じ入っている様子だった。

 他国の女王の前で口にしたい言葉じゃないものね。


「やっぱりね、大分街を壊されちゃったものね。

 そうだと思って、ヌル王国から復興資金を巻き上げて来たよ。

 これ、サニアール国の分け前だから取っておいて。」


 おいらは部屋の中に、ヌル王国の王宮の宝物庫から奪った金銀財宝を積み上げたんだ。

 王宮の宝物庫にあった金銀財宝の半分くらいだから、一番取り分は多いと思うよ。

 四分一くらいティーポット島に置いて来たから、おいらの取り分は四分一くらいかな。

 もっとも、おいらには他にも収穫が有ったから損はしてないよ。

 ノノウ一族の宝物庫と遭遇した海賊船から奪った金品が結構沢山あるんだもの。


「こっ、こんなに頂いてしまってよろしいのですか?」


 目の前に山のように積まれた金銀財宝を目にしてシナモン姉ちゃんは目を丸くしてたよ。


「もちろんだよ、この国が一番被害が大きかったんだもの。

 このくらい貰わないと割が合わないでしょう。

 あれだけの建物が壊されると住む家を失った民も沢山いるでしょう。

 このお金を使って一刻も早く困っている民を助けてあげて。」


「本当に何から、何までお世話になってしまって…。

 今回の件では本当に感謝しております。

 有り難うございました。」


 これを原資に一刻も早く街を復興して欲しいと伝えたら、シナモン姉ちゃんは快く受け取ってくれたよ。

 

       **********


 財宝のお裾分けを済ますと、おいらは別件に移ることにしたの。


「で、話しは変わるけど。

 ローレル陛下の後ろに控えているサヤマの働き振りはどう?

 真面目にお勤めしているかな?」


 唐突のサヤマの話を振られて、シナモン姉ちゃんは戸惑っていたけど。


「はあ、サヤマですか…。

 とても良く働いてくれていますわ。

 まるで世話女房のように甲斐甲斐しく動いています。

 ローレルもサヤマに心を開いているようですし。

 こんなに優秀なメイドが他にもいるのなら。

 マロン様に勧められた時に、もっと沢山召し抱えれば良かったと。

 今は反省しているのです。」


 そんな、シナモン姉ちゃんの言葉に続けるように。


「サヤマは良く尽くしてくれるし。 

 とても物知りで、政務の面でも助けてくれます。

 ボクもサヤマを疑ったことを反省しているんです。」


 ローレル王もサヤマのことをべた褒めだったよ。

 まあ、ローレル王と添い寝することにあれだけ執着してたんだから。

 きっと、溺愛しているんだろうね。


「まあ、そんなに褒められると照れちゃいます。

 ローレル陛下のお褒めに与かり嬉しいので。

 これから、ますます頑張っちゃいますね。」


 ローレル王に褒められたのが余程嬉しかったのか、それまで沈黙していたサヤマも口を開いたよ。


「そう、それじゃあ、一つお願いとお勧めがあるんだ。」


 おいらがそう言うと、事前に打ち合わせていた通りアルトが数人の人をその場に出したの。


「えっ、お母さん? お父さんまで…。」


 そう、まず最初はサヤマの両親ね。

 親子一緒の方が良いだろうから、サヤマに引き取ってもらおうと思って。


「あはは、サヤマ、久し振りね。

 あのね、ノノウ一族、アルト様とマロン様に滅ぼされちゃって。

 マロン様に寝返ったのだけど…。

 できれば、サヤマと一緒に暮らせたらと思って。」


 サヤマのお母さんがバツが悪そうに言ったんだ。


「あっ、やっぱり。

 ノノウ一族ってえげつないことしてたものね。

 絶対にマロン様の怒りを買うと思ってたんだ。」


 サヤマはノノウ一族が滅ぼされることは想定していたみたいだよ。


「それで、サヤマって、そこそこ良い給金貰っているんでしょう。

 ご両親を引き取ってもらえないかな?」


 おいらが率直にサヤマに提案すると。


「ええっ、困ります。

 私、王宮に住み込みで働いていますので。

 今更、両親のもとから通いで働けなんて…。

 ローレル陛下と一緒に過ごす時間が減っちゃうじゃ無いですか。」


 こいつ、ブレないな…。何の迷いも無く、両親よりもローレル王と一緒に居る時間を取るか。


 すると、シナモン姉ちゃんが。


「サヤマのご母堂。

 そなた、サヤマと同じようんメイドの心得はあるのですか?」


「勿論です、若い頃は王宮にメイドとして勤め。

 国王陛下やノノウ伯爵に歯向かう者がいないか、密かに探りを入れていました。

 もちろん、メイドとしての技能も他者に引けを取らないと自負しています。

 こう見えても、工作メイド育成の指導主任は私で御座いますから。」


 シナモン姉ちゃんの問い掛けに胸を張って答えたよ、サヤマの母ちゃん。

 この母ちゃん、王宮で不穏分子がいないか見張る役割をしてたんだ…。

 おっとりした雰囲気でみんな気を許しそうだものね、この人も侮れないな。


「そう、じゃあ、国と王族に忠誠を誓うのであれば。

 私付きのメイドとして召し抱えますが、如何ですか?」


 シナモン姉ちゃん、さっき言ってたもんね。

 サヤマの働き振りを見て、もっと召し抱えておくべきだったと。


「お願いします。

 姫様のために誠心誠意尽くさせて頂きます。

 この歳で、娘に養ってもらうのは気が引けてたのです。

 通常のメイド業務から、潜入、暗殺までなんでもこなして見せましょう。」


 喰い付き気味に自己アピールする母ちゃんに、シナモン姉ちゃんは少し引いてたよ。

 だって、潜入とか暗殺とか、およそメイドとは無関係なことを言うんだもの。


「それじゃ、シナモン姉ちゃん、あと三人召し抱えない。

 この三人はノノウ一族のメイド養成所の最後の卒業生だよ。

 おいらがノノウ一族の本拠を襲撃した時に修了試験の最中だったの。

 全員、メイドとしての技能は申し分ないみたい。」


 サバイバル術とか、暗殺術とか余計な技術も身に着けているようだけどね。


「宰相とも、サヤマの同僚がもっと欲しいと話をしていたのです。

 マロン様が譲って下さると言うのであれば。

 喜んで召し抱えようと思います。」


 うん、サヤマが点数を稼いでくれていて助かったよ。

 ノノウ一族からメイド見習いを含めて沢山連れて来ちゃったからね。

 流石に宰相から叱られそうだから、少しでも他で召し抱えてくれるなら助かるんだ。


 そんな訳で、無事サヤマの両親とメイド見習い三人を引き取ってもらい、おいらはサニアール国を発ったんだ。

 立ち去る前に、シナモン姉ちゃんを連れて港に行ってお土産を渡したらびっくりしてたよ。

 お土産は勿論、純白の大型帆船、ヌル王国の王族専用船の一隻なんだ。 

お読み頂き有り難うございます。

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