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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第56話 アルトは心配性?

 冒険者ギルドの組長にお仕置きが済んだ後、おいら達を囲んでいる人達を見回していたアルト。

 その中にギルドの職員らしき男を見つけて言ったの。


「そこのあんた、今すぐここにギルドの幹部を呼んで来なさい。

 もちろん全員よ、隠し立てしようものなら、建物ごと焼き払うからね。」


 アルトに凄まれた男は、慌てて建物に中に駆け込んで行ったよ。

 そして、少しの間、待っていると…。


 建物の中から、呼びに行った男を含めて七人の男が出てきたの。

 どれも、脛に傷を持っているように見える連中ばっかりだったよ。


「何だぁ、俺達に用があるってのは、この羽虫か?

 おめえ、こんな羽虫に何怯えているんだ、馬鹿野郎!

 今、俺は忙しいって言ってるだろが。

 くだらんことで、呼ぶんじゃねよ。

 借金のかたに引っ張ってきた娘を躾けてる最中なんだからよ。」


 空気を読まないおっちゃんが呼びに行った男を怒鳴りつけたんだ。

 おっちゃん、おっちゃん、そんなことは良く周りを見てから言った方が良いよ…。


 呼びに行った男、相当焦っていたのか今までのことを話していないみたい。

 取り敢えず、引っ張ってきたっていう感じだね。


「は…、羽虫で悪かったわね!」


 ほら、アルトの怒りを買った…。


 バリ!、バリ!、バリ!


 アルトは、自分を羽虫と呼んだおっちゃんに思いっきりビリビリを食らわせたんだ。 

 

「うぎゃーーーーーー!」


 あーあ、犠牲者が増えちゃった…。

 迂闊な事を口にしたおっちゃん、今は見るも無残な姿で地面に転がってるよ。

 それを見た、残り六人、全員が震えながらアルトの前に土下座している。


「ギルドの幹部は、本当にあんた達で全員でしょうね。

 あんた達もこうなりたくなければ、隠さない方が身のためよ。」


「ひっ!滅相もございません。

 今ここにおる五人で役付きの者は全てでございます。」

 

 残った六人に向かってアルトが凄むと、一番年食ったおっちゃんが土下座したまま答えたの。

 どうやら、呼びに行った男は下っ端らしいね。


「そう、じゃあ、今から言う事をギルドで周知徹底しておいてね。

 幹部全員揃っているのなら知らなかったとは言わせないから。

 もし、言い付けに背くようなら、今度は建物ごと潰すからね。」


「「「「「ひっ!」」」」」


 アルトがそう凄むと、土下座した六人から声にならない悲鳴が上がったよ。


「私は妖精族の長アルトローゼン。

 私の事を羽虫だなどど呼ぶ無礼者がいるから名乗っておくわ。

 隣にいるのは、私が三年前から保護しているマロンよ。

 今日は、マロンに迷惑を掛けた愚か者をお仕置きしに来たの。」


 そんな風に話し始めたアルトは、組長が手下を使ってクッころさんを手籠めにしようとしたこと話し。

 そのクッころさんが、おいらの所に身を寄せている客人だと説明していた。

 おいらの大切な客人に手を出そうとした、組長にお仕置きするのが一番の目的だって言ってたよ。


 その際、アルトは、状況を上手くはぐらかして、組長の手下の三人はあたかも自分が撃退したように話していたの。

 万が一にも、おいらが三人を倒したと思われないように気遣ってくれてるんだ。


 足元に転がっているゴロツキ共も、アルトやおいらに無礼を働いたので軽くお仕置きしたって言ってた。…軽く。


「それで、端的に言うわ。

 今後、マロンとマロンの知り合いに一切迷惑を掛けないでね。

 もし、僅かでも迷惑を掛けるようであれば、このギルド、建物ごと潰すわ。

 良く肝に銘じておくのね。」


 アルトは今までの経緯の説明を終えると、六人に向かってそう命じたんだ。


     ********


「ちょっと、待っておくんなせえ。

 そちらのお嬢様に迷惑かけるなというのは承知しましたが。

 その知りあいにとはどういう意味が…。」


「当たり前でしょう。

 そこに転がっている組長には、マロンが同居している貴族の娘に今後一切手を出すなと命じたけど。

 それだけじゃ、足りないと思ったの。

 だから、マロンの知り合い全てに一切迷惑を掛けないように命じてるのよ。」


 例えば、おいらが毎日買ってるパン屋が、ギルドへみかじめ料が払えなくて店を閉めたら、おいらが困るだろうって。

 さすがに、それは過保護では…。


 これ、無茶苦茶だよね。

 こんな小さな町だもの、ほとんどが知り合いみたいなものだから。

 カタギに一切迷惑かけるなと命じているようなもんだし。


「そいつはあんまりだ。

 そのお嬢様の知り合いの範囲なんて、俺達には分かりやしないですぜ。

 一切迷惑かけるなと言われちまったら、カタギには迂闊に手を出せねえじゃないですか。

 それじゃ、商売あがったりだ、ギルド本部に納める上納金が払えなくなっちまいます。」


 一番年食ったおっちゃんが泡をくって言って来たんだ。

 でも、アルトは突き放すように言ったの。


「そうすれば良いじゃない。

 カタギに手を出すなって当たり前のことでしょう。 

 あんたら、冒険者ギルドっていったい何のためにあるのよ。

 ロクでなしばっかりの冒険者が、カタギに迷惑かけないよう監督するためにあるんでしょうが。

 そのギルドが、カタギに迷惑かけてどうすんのよ。

 冒険者の尻をひっぱたいて地道に魔物狩りをさせて、その上がりで上納金でも何でも払えば良いじゃない。」


「そんなこと言われても、このシマには腕の立つ冒険者なんて一人もいませんぜ。

 魔物狩りの上がりだけで、上納金をおさめるなんてどだい無理な話ですぜ。」


 その上納金って何? 何でそんなに上納金が納められるかどうかに必死になってるんだろう?

 おいらが、疑問に感じていると、アルトも同じ疑問を持ったようで…。


「ねえ、あんた、そんなに必死になってるけど。

 本部へ払う上納金って、そんなに大事なモノなの?」


「そりゃ、もちろんでさあ。

 毎月の上納金を納めねえと、その度にエンコを詰めて差し出さねえとならねえんだ。

 俺達の世界じゃ、エンコ詰めは生き恥を晒すようなもんだ。

 誰だって、必死になってかき集めますわ。」


「なんだ、それだけのことなの。

 指の一本くらい、カタギに迷惑かけるくらいなら、素直に渡しときゃ良いじゃない。

 それに、幹部連中の指一本で良ければ、丁度ここに百八十本、十五年分の指があるじゃない。

 どうせ、ここに転がっているいる『ゴミ』は、もう役に立たないでしょう。

 精々死なないようにして、毎月一本切り取って本部に送れば良いわ。

 廃品利用よ、それで十五年上納金を納めずに済むなら御の字でしょう。」


 アルトが『ゴミ』と言ったのは、勿論、白目をむいて転がっている組長他十七人のギルドの幹部連中ね。

 

「いや、それは…。」


 容赦ないアルトの言葉に、ギルドの幹部もドン引きしてるよ…。


お読み頂き有り難うございます。

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