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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
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第551話 悪い子にはお仕置きだよ!

 ムルティの島を出発したおいら達は、途中、結界を抜けた先にあった島で小休止を取ることにしたの。

 島の中央部にある高台から見下ろすと、小さな港には厳つい軍船が何隻も停泊していたんだ。

 頭領さんの話によると、ここはヌル王国の海洋支配の拠点になっている島らしい。

 この島、ティーポット島を拠点に周囲の島々を征服し、略奪を行っているそうだよ。


 おいらは、アルトと相談してこの島からヌル王国の連中を排除することにしたんだ。

 これ以上、弱い者イジメをさせないようにね。


 で、港町に降りて来て…。


「もしもし、お嬢ちゃん。

 一体何処から入り込んだのだい?

 ここは水軍の関係者以外は立ち入り禁止だよ。

 怖いおじさんに叱られないうちに立ち去った方が良いよ。」


 埠頭でおいらがヌル王国の軍船を眺めていたら、人の良さそうなおじさんが注意してくれたの。

 

「ゴメンなさい。

 立派な船があったものだから近くで見たかったの。

 おじさんは水軍の人なの?」


「いや、いや、私はしがない商人だよ。

 今日は港の水軍本部に酒を配達に来たんだ。

 水軍の軍人さん達は吞兵衛が多いからね。

 今も、仕事そっちのけで酒盛りをしてたよ。」


 それから、おじさんはキョロキョロと左右を見回し、周囲に人気が無いのを確認すると。


「水軍とか言ってるが、その実、海賊崩れの荒くれ者ばかりだ。

 酔っ払ってると、子供でも年寄りでも見境無しに絡んで来やがる。

 そんな連中だから、見つかったら厄介だよ。

 見つかる前に早く帰りなさいな。」


 おいらの耳元に顔を寄せて、再度早く立ち去るようにと、こっそり注意してくれたよ。


「そうだね。じゃあ、用事を済ませたら早々に立ち去ることにするよ。」


 おいらはそう返答すると同時に、目の前に停泊している軍船を『積載庫』に仕舞ったの。


 すると、当直なのか、船の点検でもしていたのか、数名の男が海面に投げ出されたよ。


「何だ、何だ、一体何があったんだ!」


「船は何処に行っちまった!」


 そんな慌てふためいた声を上げながら、バシャバシャと必死に手足を動かし溺れまいとしてた。

 まあ、冷静に動けば溺れて死ぬ心配は無いと思うよ。

 沖合いと違ってそんなに水深がある訳では無いし、何より手を伸ばせばすぐ届く位置に埠頭が在るからね。


 おいらが溺れている連中を眺めていたら、急に腕を引っ張られたよ。


「お嬢ちゃん、さっさとここから立ち去ることにしよう。

 何だか知らないが、急に船が消えてしまったんだ。

 こんな所に居たら犯人だと疑われてしまうよ。」


 おいらの腕を引いたのは、今まで会話をしていたおじさんだったよ。

 冷静に考えれば、自分達に大きな船を消すなんて芸当が出来る訳ないと分かるはずだけど。

 連中は酔っ払いの集まりだから、どんな言い掛かりを付けられるか分かったもんじゃないって。

 ここに居るだけで犯人扱いされるかもと、心配してるみたいだった。

 当たり前かもしれないけど、おじさんはおいらが犯人だとは思いも寄らないみたいだ。


「おじさん、親切に有り難う。

 でも、大丈夫だから、先に立ち去ってちょうだい。

 おいら、もう少しここでやることがあるの。」


 おいらが、一緒に行くのを断っておじさんの手を解くと。


「何か用事があるなら、無理に一緒に来いとは言わないが。

 なるべく早く立ち去るんだよ。

 面倒なことに巻き込まれる前にね。」


 おじさんはおいらのことを案じながらも立ち去っていったよ。

 おじさんが立ち去ったのを確認すると、おいらは停泊している残りの軍船四隻も『積載庫』に仕舞ったよ。

 その度に、船に残っていた人が水面に投げ出されて、バシャバシャと慌てふためいてた。


        **********


 その内、無事に埠頭へ上がって来た軍人が本部の建物に駆けこんで行き…。


「何だと! 俺達の船が無くなっちまっただと!」


 そんな叫び声を上げながら、建物の中からぞろぞろと男達が出て来たんだ。

 偉そうなオッチャンが、海から上がってずぶ濡れの男達に問い掛けたの。

  

「おい、これはどういうことだ。

 船に乗ってた者、誰でも良いから状況を説明しろ。

 一体、何者に乗っ取られたんだ。」


「提督、それが全く訳が分からないんです。

 突然、足元の甲板が抜けたような感覚に襲われたと思ったら。

 次の瞬間には海に投げ出されていて。

 気付くと跡形も無く船が消え去っていたんでさぁ。」


 偉そうなオッチャンは提督と呼ばれる身分らしい。

 提督の問い掛けに、海から上がった男の一人がありのままを答えたのだけど。


「馬鹿言え、船が消える訳ねえだろう。

 誰かに襲われて奪い去られたんじゃねえのか。」


 ずぶ濡れの男の言葉を、提督は全く信用してない様子だったよ。


「ですが、提督。ここから見る限り海原に俺達の船はありませんぜ。

 船はそんなに早く航行できる訳じゃないですから。

 船を奪われたのなら、一隻もここから見えないのは辻褄が合いませんぜ。」


 取り巻きの一人が海原を指差してそんな言葉を口にすると、提督も海を眺めて怪訝な顔をしたんだ。


「うむ、確かに、見渡す限り一隻の船も見当たらんな…。

 水軍に入って長いがこんな奇怪な現象は初めてだ。

 取り敢えず、原住民の反乱分子にこのことが知られると拙い。

 この機に乗じて反乱を起こそうとする愚か者が居るやも知れん。

 全員、武装を整えるのだ。」


 提督はその場の軍人達に、武装して臨戦態勢で待機するように命じたの。

 提督の命に従って、周りの男達は急いで建物に駆けこんで行ったよ。

 この島にあった小国を滅ぼして、ヌル王国の支配下に置いたと聞いたけど。

 どうやら元々この島に住んでいた人の中に、今でも反抗している人達がいるみたいだね。


 おいらが、その様子を眺めていると…。


「おい、そこの小娘、何処から入って来たんだ。

 この埠頭は、軍の関係者以外立ち入り禁止だ。

 親からここへ入ったらダメだと聞いていないのか。

 邪魔だから、サッサと出て行け。」


 提督がおいらに気付いて怒声を浴びせて来たよ。


「ゴメンね、勝手に入って。

 でも、おいら、ここに用事があって来たんだ。

 オッチャン達、海賊連中に少しお仕置きしようと思ってね。

 この海域に住む人達に、迷惑ばっかり掛けているらしいから。」


「このクソガキ!

 誇り高きヌル王国の水軍を海賊呼ばわりするか。

 我々を侮辱するとガキと言えども赦してはおかぬぞ。」


 いや、誇り高い人なら、『クソガキ』なんて汚い言葉は使わないで欲しいな。…お里が知れるよ。


「提督、そのガキがどうかしましたか?」


 鉄砲を手にして建物から出て来た軍人が、提督に尋ねると。


「そのガキが、俺達を海賊呼ばわりしやがった。

 それはともかく、そのガキ、何かおかしいぞ。

 船の消失事件と何か絡んでいるかも知れねぇ。

 とっ捕まえて、尋問してみろや。

 何か知ってるのなら、指の一本も落としてやれば吐くだろうぜ。」


「へい、分かりやした。

 んじゃ、そのガキの体に聞いてみることにしますぜ。」


 提督達の会話がまんま海賊の会話だね、すっかり地が出ているよ。

 命じられた男はその場に鉄砲を置くと、ならず者が所持しているようなナイフを手にしたんだ。


 そして、おいらに近付いて来て。


「おう、ガキ、生意気な口を利いてくれたそうじゃねえか。

 少しお灸を据えてやるよ。」


 男はナイフを振りかざしておいらに襲い掛かって来たの。

 殺すつもりは無いようで、腕を狙ってナイフを振り下ろしたよ。

 幼気な子供に刃物を向けるなんて、こいつこそどんな躾を受けて来たんだろう。

 ホント、ここに居る連中のお里が知れるね。


「駄目だよ、子供に向かってそんな危ないモノを振り回したら。

 怪我をしたらどうするつもりなの。」


 おいらは攻撃を躱すと、ナイフを持つ手に軽く手刀を撃ち込んだよ。


 ポキッと小気味良い音と共に、地面の石畳にナイフが落ちる金属音が響き…。


「ギャーーーー!」


 男が耳障りな悲鳴を上げて、おいらの前に蹲ったよ。


「何だ、このガキ。

 刃物を持った大の大人を瞬殺だって。

 おい、誰か、このガキを何とかしろ!

 殺しちまってもかまわねえ。」


 提督は建物に向かって大きな声で命じると、武装した男達が慌てて出て来たんだ。


「提督、このちんまいガキを始末すれば良いんですかい。」


「ああ、とっとと始末しろ。

 甚振って遊ぼうなんて気を起こすんじゃねえぞ。

 このガキ、少し変だ。舐めて掛かるとヤバいぞ。」


 おいらを侮ってかニヤついた顔で尋ねた男に、提督が注意をすると。


「へい、へい、せっかく退屈しのぎのオモチャが手に入るかと思ったのに。

 提督がそうお命じになるなら、一思いに()っちまいますよ。

 おい、野郎ども、一斉射撃だ!

 あのガキをハチの巣にしちまおうぜ。」


 どうやら提督に図星を指されたようで、男はつまらなそうに返答してたよ。

 じわじわと甚振りながら、おいらを殺そうと考えていたみたい。

 残忍な性癖を持ち合わせているようで、今度は過剰な攻撃を加えて殺すつもりだった。


 その号令で、銃口を一斉においらへ向ける男達、その数二十以上。ホント、オーバーキルだよ。

 もちろん、おいらがそんなのを許す訳も無く…。


「どわっ!

 何だ、何だ、どこからこんなモンが降って来た!」


「ぺっ、ぺっ、これ海水だぜ。」


「おっ、おい、鉄砲がびしょ濡れだぜ。

 銃口からも水が溢れ出してるじゃねえか。」


 突然、雲一つない空から滝のように降り注ぐ海水。

 不意打ちをくらって対処できる訳も無く、その場にいた全員がずぶ濡れになったよ。

 おいらに銃口を向けていた連中だけでなく、提督も含めて埠頭にいた全員ね。

 当然、火縄銃もびしょ濡れで、唯の鉄の筒と化していたよ。


「ほら、今よ。みんな、やっちゃって!」


 軍人達が突如降って来た海水に惚けている隙を突いて、アルトはおいらの護衛騎士達をその場に降ろしたの。

 四人の護衛騎士とオランにタロウ。敵が呆然としていたこともあって、あっと言う間に二百人以上いた駐留部隊を制圧したんだ。

お読み頂き有り難うございます。

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