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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第十七章 所変わればと言うみたいだけど・・・
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第529話 ヤダ、なにこの物騒なメイドさん達…

 おいらは、サニアール国の王女シナモンお姉さんから助力を求められたんだ。

 どうやらサニアール国は、大砲と鉄砲の前に手も足も出ず、ヌル王国の水軍に蹂躙されてしまったらしい。

 アルトは要請に応じた方が良いと言い、宰相も乗り気になっているんだ。


 とは言え、おいらも安請け合いをする訳にはいかないよ。

 ヌル王国の連中がどの程度の軍勢をサニアール国に残しているかも分からないんだもの。

 シナモンお姉さんも、その辺りのことに関しては全然見当が付かないようだし。


 すると、アルトは「当事者に聞いてみれば」なんて言ったんだ。


 そして…。


「あら、あら、ここは明るくて良いですね。

 船の中はただでさえ薄暗くて心細いのに…。

 先程など、突然真っ暗になったのですよ。

 暗い所は苦手で、とても怖かったのです。」


 このお姉さん、口ではそう言ってるけど…。

 おっとりとした雰囲気で、全然怖がっていたようには見えなかったよ。


 アルトが『積載庫』の中から降ろしたのは、ヌル王国の人らしき女性十六人。

 おっとりしたお姉さんがお姫さまって雰囲気で、後の十五人がお世話係って印象を受けたよ。


「怖い思いをさせてしまったならゴメンね。

 ここは、ウエニアール国の王宮だよ。

 おいらは、マロン・ド・ポルトゥス。この国の女王なの。

 お姉さん達はどんな立場の人達かな?」


 おいらが名乗ると、ぽわーっと春の陽だまりのような笑みを浮かべたお姉さん。


「まあ、マロンちゃんってお名前なの、可愛いらしいお嬢さんね。

 私、ヌル王国の第十八、あれ、十九だったかしら…。

 とにかく、泡沫王女のジャスミンと申します。

 ジャスミンお姉ちゃんと呼んでもらえれば嬉しいわ。」


 えらいお姫様の沢山いる王家だな…。

 おいらがそんなところに感心していると。


「それで、後に並ぶ十五人がヌル王国が誇る工作メイド隊です。

 ぶっちゃけ、暗殺部隊ですね。

 取り押えて頂けると、お姉ちゃん、とっても嬉しいかな。」


 ホント、とんでもないことをぶっちゃけたよ…。


「貴様、妾腹の名ばかり王女の分際で我が王を裏切ると言うのか!」


 そんな怒声を上げて、メイドさんの一人が懐から何かを取り出したかと思うと。


 次の瞬間…。


 パーン!


「きゃっ!」


 耳をつんざくような大きな音を上げて、何かを持っていたメイドさんの手首が吹き飛んだよ。

 いや、それだけじゃなく、服のあちこちから破裂音が上がり煙が上がったんだ。

 メイドさん、手首をはじめ、体のあちこちから血飛沫が上がってた。


 血塗れになって、その場に倒れ伏すメイドさん。

 悲鳴を上げたジャスミン姉ちゃんは、青褪めた顔で目を倒れたメイドさんから背けていたよ。


 でも、スプラッタはそれだけじゃ収まらず…。


 パーン!


 再び炸裂音がしたかと思えば、手首や体のあちこちから血飛沫を上げて別のメイドさんが倒れたの。


「全く、油断も隙もありはしないわ。

 なんて物騒なものを懐に忍ばせているの、この娘たち。」


 どうやら、アルトが二人のメイドの凶行を未然に防いでくれたらしい。

 ジャスミン姉ちゃんを害しようとしていることに気付いて、とっさにビリビリを放ったみたい。

 きっと、アルトのビリビリで火薬に引火したんだね。

 おそらく手にしていたのが鉄砲で、予備の火薬は色々なところに忍ばせているんだ、怖っ…。


「ジェレ姉ちゃん、残りのメイドさんを捕縛して。

 捕縛したら、鉄砲と火薬を取り上げてちょうだい。」


 工作メイドさん達は、アルトの攻撃だと知らないからね。

 身に着けた火薬が突然暴発したかように、目に映ったのだと思う。

 暴発を用心したため、とっさに鉄砲を使うことが出来なかったみたい。


 残り十三人、然したる抵抗も無く捕縛することが出来たよ。


        **********


「マロンちゃん、有り難う。

 お姉ちゃん、嬉しいわ。

 怖い監視役が居なくなって清々したよ。」


 ぽわーんとして笑顔で喜びを表す、ジャスミン姉ちゃん。


「その工作メイド隊って物騒な人達はいったい何なの?」


「何って、呼び名の通りよ。

 敵地に潜入して、暗殺とか、色々と工作をするの。

 そのための駒が私達、妾腹の王女。

 妾腹の王女を征服したい国の王か皇太子に嫁がせるでしょう。

 そして、側仕えの名目で工作メイド隊を送り込むの。

 最優先事項は嫁がせた王女が産んだ御子を王位に就けること。

 そのために、競合する王子や反対派の貴族を消して回るのですって。」


 ジャスミン姉ちゃんは、おいらの問い掛けにそう答えて、ヌル王国の手口を教えてくれたの。

 ヌル王国は他国を征服する際に、直接統治をする訳じゃないんだって。

 そもそも、自国から遠い国に目を光らせることが大変なことらしいよ。

 ましてや、土着の王家を滅ぼして成り代わろうものなら、貴族や民の反発が大きいって。

 なので、国そのものの体制は残したままで属国とするそうなんだけど。

 でも属国にしたからって安心はしないようなの、何時反旗を翻すか分からないものね。


 そこで、属国を支配する手口として、度々用いられる手口が幾つかあるそうで。

 その一つが、属国の国王又は王太子に、ヌル王国の王女を嫁がせるんだって。

 嫁がせた王女の産む子を次代の国王に据えることにより、実質的に王家を乗っ取ってしまうそうだよ。

 

 そのために裏でコソコソ画策するのが、工作メイド隊なんだって。

 先ずは、ヌル王国から嫁いだ妃の子よりも王位継承権が上の王子が居れば消してしまうそうなの。

 手っ取り早く暗殺してしまうこともあれば、弑逆を企てた等との冤罪をでっち上げて処刑することもあるって。

 更に、ヌル王国から嫁いだ妃を快く思わない貴族が居れば、やはり暗殺するとか。

 中には、工作メイドが寝技(?)を使って反対派貴族の嫁に収まり、反対派から離反させるなんてことも。


 尚も、ジャスミン姉ちゃんの暴露話は続き…。


「他には…、国王や王太子を殺処分しちゃって。

 御しやすい幼少の王子を玉座に据えるなんてこともやってますね。

 その場合、総督を置いて幼い国王を傀儡にしてます。

 今回、サニアール国でしたみたいに。

 その場合、そちらのお二人みたいに王女を人質とることが多いのですが。」


「へっ、何で?

 小さな王子を王位に就けて、総督が操ってれば良いんでしょう。

 別に人質なんて要らないじゃない。」


「だって、その幼王、何時までも幼少な訳では無いですよ。

 分別の付く歳になれば、反発することもあるし。

 反ヌル王国派の貴族と結託して反旗を翻すことだってあるでしょう。

 スペアを用意しておかないと。」


「スペア?」


「そうなの、スペア。

 ヌル王国の現国王、私の父だけど…。

 見下げ果てたド変態でしてね。

 困ったことに、若い娘を孕ませるのが趣味ですの。

 それこそ、自分の孫娘くらいの歳の娘をね。

 そちら二人は人質であると共に、国王の妾として連れて来られたのですよ。

 そして子供を産ませて、その子供を属国の次代の王として育てるのです。」


「こら、あんた、おっとりとした顔で何てことを子供に聞かせるの。

 少しは遠回しな話し方が出来ないの!」


「あら、ゴメンなさい。

 マロンちゃんの歳では、少し早いお話だったわね。」


 自分の父親の嗜好を話し始めたジャスミン姉ちゃんに、アルトからのストップが入ったよ。

 ジャスミン姉ちゃん、テヘッとか言いながら、少しぼやかして話を続けたの。


 要約すると、属国から人質として取った姫にヌル国王の子を産ませ。

 その子供に洗脳教育を施すらしい、属国の王としてヌル王国に絶対服従になるように。

 そして、その子供が十分に洗脳され、王位を継げる歳になると…。


 傀儡の王が世継ぎを成さぬまま、何故か病死するらしいの。不慮の事故に遭うなんてことも。

 やっぱり、その辺でも工作メイドが暗躍するらしいよ。

 その場合は、総督付きの女官として王宮に潜り込んでいるんだって。

 傀儡の王やその妃に一服盛って、子供を出来なくするとか、流産させるとか。

 更には、王が原因不明の病気で徐々に衰弱していくとかね。

 普段とても大人しい馬が王の騎乗中に突然暴走したなんてことも、過去にはあったらしい。


 そこで、ヌル王国に絶対服従するよう洗脳された子供が登板するんだって。

 ヌル王国からその子供を国王にしろと命じられたら、属国としては拒否できないらしいよ。

 属国にとって正統な王女の子供だし、宗主国の国王の血を引く子供だものね。


 ジャスミン姉ちゃん、自分の父親を蛇蝎の如く嫌悪した様子で言ってた。

 父王にとっては趣味と実益を兼ねた行いなんだって。


 そんな感じで、今の国王は服従させた国々からお姫さまを召し上げて来るものだから。

 王子も、王女も沢山いるそうで、ジャスミン姉ちゃんは自分の兄弟姉妹の数すら把握できないって。

 そう言えば、自己紹介で自分が何番目の王女か、自信無さげだったね…。


 ジャスミン姉ちゃんの話を聞いていたサニアール国の二人がわなわなと震えていたよ。

 あのままヌル王国に送られていたら、自分達がどんな目に遭ったかを想像したんだろうね。

 きっと、怒りと悍ましさで体を震わせているんだと思う。


       **********


「ジャスミン、貴様、我が国の手の内を一々晒しおって。

 我が王への裏切り行為、決して赦さぬぞ!」 


 縛り上げられて床に座らされている工作メイド隊の一人がジャスミン姉ちゃんを非難すると。


「あら、あら、誰が赦さないのかしら?

 みなさん、お気付きでは無いのかしら…。

 私達がここに居ると言うことは、全軍が捕らえられて。

 我が国の水軍は敗北したのですよ、手も足も出ずに。

 あれだけ、砲撃しておいて、タダで済むとお思いですか?」


 相変わらずおっとりとした表情で工作メイド隊に問い掛けていたよ。

 工作メイド隊の連中、悔しそうな顔をして黙り込んじゃった。 

お読み頂き有り難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「我が国の手を晒しおって」って 敵の前で簡単にぶち切れていて、説明されたような工作できるのだろうか? メイドさんの能力に不安を覚えました。 あとなんかいろいろ裏工作プランがあるくせに、しょっ…
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