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ゴミスキルだって、育てりゃ、けっこうお役立ちです!  作者: アイイロモンペ
第三章 女騎士(クッころさん)奮闘記
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第48話 『いんがおーほー』って言うんだよね、こういうの

 今、おいら達の足元には、男が三人転がっている。

 冒険者ギルドをねぐらにしているゴロツキ冒険者達だ。

 おいらが気絶させた後、紐でグルグル巻きにして転がしてあるの。


「怖ええ、マジ、こいつら見た目、まんまヤ〇ザじゃねえか。

 頭なんてパンチパーマだし、この世界にもパンチがあるとは思わなかったぜ。」


 男達を見て、タロウはまた訳のわからないことを呟いてる。

 ちなみに、タロウは何を勘違いしてるのか分かんないけど、こいつら天然だよ。

 このあたりには、こんな風に癖が強い巻き毛の人、けっこういるんだ。

 短くするとこんな風になるの。


「ねえ、クッころさん、こいつらどうする?

 クッころさんが、被害者なんだからどうするか決めて。

 おいらは、人殺しはしたくないから。

 殺すんだったら、クッころさんがやってね。

 こいつら、貴族に乱暴を働いたんだし。

 他にも色々悪さしてるようだから…。

 殺されても仕方ないと思うんだ。」


 おいらは、この三人の始末をクッころさんに委ねることにしたんだ。

 この国では、王侯貴族の言う事が絶対らしいからね。


「わたくしに言われましても…。

 わたくしも人を殺すのはイヤですわ。」


 ええっと、クッころさん、騎士ってのは国を守って殺し合いをするんじゃ…。

 それが出来ないと、いつまで経っても、なんちゃんて騎士のままですよ。


「でもよ、このまま無罪放免って訳にもいかないぜ。

 こういう輩は、絶対仕返しして来るって。

 ここで消しちまうか、…。

 二度と逆らえないってくらいの恐怖を植え付けとかねえと拙いぜ。」


「うんじゃ、タロウ、消してくれる?」


「イヤだよ、日本じゃ殺人はタブーだぜ。

 この歳でそんな重い十字架背負いたくねえよ。」


 なんだ、自分から消した方が良いって提案しといて、結局タロウも殺りたくないんじゃない。

 うーん、逆らえなくなるような恐怖か…。

 あっ、こんなのは面白いかも知れない。


 おいらは、思いついたことを二人に相談したんだ。


     ********


「痛っ…、おい、何だこりゃ…。」


 おっちゃんの一人が目を覚ましたみたい。

 さすがに馬に括り付けて引き摺れば目も覚ますか…。


 今、おいら達は、ゴロツキ冒険者三人をクッころさんの馬に括り付けてある場所に向かってる。

 こいつらを馬に括り付ける前に改めて持ち物を調べさせてもらったよ。

 金目の物や凶器を没収するためにね。

 凶器は抵抗されたら面倒だし、金目の物は今回の迷惑料だね。

 こいつら、ワルだけあって懐に懐剣やら寸鉄やらを隠し持ってた。

 あと、下っ端の割にお金を持っていて、三人併せて銀貨が三百枚近くあったよ。

 有り難くちょうだいして、みんなで美味しいモノを食べることにしたんだ。


「おい、オメーら、俺達ギルドのモンにこんなことをしてタダで済むと思ってんのか!

 オメーらまとめて、トレント狩りの餌にしてやるぞ!」


 アニキと呼ばれてるおっちゃんがそんな風に凄むけど…。

 ぶっちゃけ、グルグル巻きにさせて、馬に引き摺られながら言っても、負け犬の遠吠えにしか聞こえないよね。


「うん? 何で、タダで済まないの?

 おいら達がこんなことをしたって、どうしてギルドの連中が分かるの。

 おっちゃん達は告げ口なんかできないのに。

 おっちゃん、周りをよく見た方が良いよ。

 おいら達が、何処へ向かっているのかって。」


 おいらの言葉を聞いたおっちゃんは、縛り上げられた不自由な状態で周りを確認してたんだけど…。

 やがて、それに気が付いたようで。


「おい、この道はまさか…。

 やめろ!やめるんだ!この紐をほどきやがれ!」


 大きな叫び声をあげたおっちゃんは、何とか紐から抜け出そうとジタバタし始めたよ。

 どうやら、おいら達が何処に向かっているかが分かったみたい。


「死人に口なしって言うじゃない。

 おっちゃん達が帰ってこなくても…。

 おいら達みたいな女子供にやられたとは誰も思わないよ。

 でも、おっちゃん達が幾ら悪人だとしてもね。

 女子供のおいら達には、殺しはやっぱり気が引けるんだ。

 だから、おっちゃん達が良くやる手で、消えてもらおうかと思って。

 今まで、自分達がやって来たことの報いを受ければ良いよ。」


 おいらが、そう告げるとおっちゃんはまだなんか騒いでたけど後は無視したよ。


      ********


 そして。


「おいやめろ、俺達が悪かった。

 もう金輪際、悪事は働かねえ、ギルトからも足を洗う。

 おまえらに報復しようなんてことも思わねえ。

 だから、勘弁してくれよ。」


 その場所に到着した時は、良い大人が半泣きで命乞いしてやんの。

 今まで、沢山の若い冒険者や女の人がそう言ってただろに、…。

 おっちゃん達はそれを聞かなかったんでしょう。

 なんで、自分達だけ聞いてもらえると思うかな。


 おいら達の前には、草一本生えていない地面があってその先に疎らに大木が生えている。

 そう、ここはトレントの林、目の前のなにも生えてない地面が危険地帯。

 そこに足を踏み入れると、トレントの槍のような枝が襲ってくるの。

 地面になにも生えてこないのは、獲物から養分を吸うために根っこが持ち上がってきて。

 地面を頻繁にかき回すせいなんだ。


 しかも、今回おいら達が来たのは、唯のトレントの林じゃないんだ。

 おいら、欲張りだから、オマケが欲しいと思ったの。

 ここに生えているのは、ハニートレントと呼ばれるレベル四の植物型魔物。

 ハチミツ入りのツボのような形の実を付けるんだ。

 もっぱら、ハチミツが大好きなクマを捕食してるんだって。


「勘弁してくれ、トレントの餌はいやだー!」


「何でも言う事を聞くから、命だけはお助けを!」


 ここへ着く頃には、下っ端二人も目を覚まして…。

 自分のおかれた立場に気付いたようで、命乞いを始めたの。


「残念だったね、改心するの遅すぎだよ。

 まあ、今までおっちゃん達がどんな酷いことをして来たのか。

 身をもって知れば良いと思う。

 それじゃあ、サヨナラね!」


 おいらは、転がしておいたアニキと呼ばれるおっちゃんを立ち上がらせ。

 背中の方から、包丁で紐を切っておっちゃんの拘束を解いたの。


 おっちゃんは拘束が解かれたと感じるとすぐに逃れようとしたけど…。

 おいらは、すかさず、おっちゃんをハニートレントへ向けて力いっぱい突き飛ばしたんだ。

 初期能力八十一倍の力は伊達じゃなく、おっちゃんを勢いよくハニートレントへ突進していったよ。


 そして、おっちゃんが危険地帯に入るやいなや…。

 ハニートレントの鋭い枝先がおっちゃんの太ももと上腕を狙って凄いスピードで襲って来たんだ。

 トレントの種類は、獲物を一気に殺したりしないんだって。

 獲物の自由を奪って、生きたままで根っこから養分を吸うらしいの。

 死体だと鮮度が悪いのかな?


「ギャアーーー!」


 手足を串刺しにされて、耳障りな悲鳴を上げるおっちゃん。


「「アッ、アニキー!」」 


 その様子を目の当たりにした下っ端も悲鳴を上げるように叫んだよ。

 

 やがて、左右の手足にそれぞれ数本の枝が突き刺さり、おっちゃんの抵抗が止んだの。

 すると地面から弦のような根っこがにょろにょろと蛇のような動きで出てきておっちゃんに絡みついていく。


「ウガアーーー!」


 再び、苦しそうな悲鳴を上げるおっちゃん。


 その瞬間、おいらは、素早くハニートレントの懐に飛び込むと…。

 錆びた包丁一閃、発生率百%のクリティカルが発動して、大木が大きく震えたの。


 すると、おっちゃんに絡んだ根っこは力を無くし、おっちゃんを地面に落としたんだ。

 そして、ハニートレントはゆっくりと傾いて行く。


 ハニートレントの討伐完了だよ。

お読み頂き有り難うございます。

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